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異世界では経験値が必要です。  作者: きうろ
第一章 -幼少ー
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必殺技

 

「思ったよりきついねー」

「だな・・・やめるか?」

「いや、がんばろう。」


 あれから俺とマイム、ノウはご飯前の奴隷予備軍しか居ない時間を使い、魔法で穴を掘っていた。

 ライトはリリアに任せ、みんな黙認してくれている。


『簡単な事だよ。穴を掘って逃げればいい。』

 マイムの提案をすぐに快諾したのだが、意外と地味な作業になってしまった。

 風魔法で壁をえぐり、土を掘る。その土は俺の『練成』で地面に一体化させ、何もなかったように見せかける。掘った部分も同様、薄い壁を『練成』で作りばれないようにする。


 初めは、かなり強い魔法で思いっきり穴を開けようかと思ったのだが、音がするから気付かれるのでは?という事で、地味な作業になった。「消音魔法は?」とノウに言われたが、「ただの風魔法だから、空気の振動(会話)は消せても、物体の振動は消せない。」と説明した。 分かってなさそうだったが、「ウエンチが言うなら・・・」と諦めた様子だった。


「ちょっとここで必殺技を試してみようかな。」


 3メートルほど進んだところで、俺がボソッと呟いた。

 2人はそれに反応して「必殺技とかあるの?!」と声を揃えて驚いた。


「まぁ、色々考え中だけど。ここでは大したの出来ないけどね。」

「すごいー!やってやって!見せてよ!!」

「僕も見たい!!」


 その声が聞こえたのか、リリアとライトが覗いてくる。


「じゃあ、とりあえず1個な。これが出来たら、かなり魔法の幅が広がる。」


 そう言い、2人を部屋まで戻した。

 4人が見守る中、息を整える。目を瞑り集中する。




 右手に『火を圧縮した』魔法。

 左手に『風を圧縮した』魔法。


 それを融合させ、壁に向かって放つ。


「必殺!爆裂魔法!!」



 ドパンッ!



 少しかっこつけた。

 正直息を整えなくても、目を瞑らなくても、集中しなくても出来る。てか、みんなからは背中しか見えないからかっこつけても意味ないのだが、雰囲気は大事だ。


 正面を見てみると、30cmほどの穴が開いていた。

 もう少し威力を上げても大丈夫そうだ。


「す、すげぇええええ!!!」

「グレンかっこいぃーーー!!」


 ライトとリリアが駆け寄ってくる。

 俺は得意気に「こんなの余裕だよ!」と天狗になる。


 ライトとリリアの後ろで口を開けている2人が居た。


「ねぇマイム…あんた、あれ出来る…?」

「無茶言わないでよ…2つ同時、しかも混ぜ合わせるとか…意味が分からない…。」


(やばい、本気で天狗になりそうだ。子供の前だ。抑えろ、自重しろ。)


 優越感を抑えこむ。

 マイムが俺に近づいてきた。


「僕にも…僕も出来るようになるかな?」

「マイムなら…すぐ出来るようになると思う。」


 俺は素直に答えた。マイムのジョブは『賢者』だ。この魔法は普通なら『魔導師』しか出来ない。

 しかし、才能があり、善紳の加護もある。こいつなら出来そうだな。と本気で思った。

 マイムを壁の前に立たせた。


「やってみ。」


 ヒントは与えない。マイム自身の考えで発動できなければ意味が無い。

 変にヒントを与えても、余計に分からなくなる可能性があるからだ。



 マイムは集中していた。

 右手に魔力が集まり圧縮された火魔法が発動した。

 次に左手に魔力を集中させる、が、同時に右手の魔法が消える。



「ダメだな…停滞するイメージ…」




 マイムが小声で独り言を呟く。


 右手に『圧縮された火魔法』が発動する。

 左手に『圧縮された風魔法』が発動する。


「練り合わさるイメージ…」


(あ…これやばい。)


「みんな下がれ!!!」


 マイムは集中力を切らさず魔法を融合するイメージをする。


「行け!!爆裂魔法!!!」

(この魔力量はやばいだろ!!)


 俺は急いでマイムに駆け寄る。





 プスン……。


「あ…失敗しちゃった。いけると思ったんだけどなぁ…。」


「残念だねぇー。ウエンチみたいにはいかなかったねー。」

「よくがんばった!」

「練習あるのみ、だねー。」


 俺以外の3人はマイムに慰めの言葉を掛けていた。

 俺は冷や汗が止まらなかった。


「いや…成功してた…てかなんだよあの魔力量…マイム…ここでは絶対にもうやるなよ!」


 4人は「へ?」と俺を見ていた。

 俺はマイムがあのまま発動していたらこの部屋は跡形も無く消え去っていただろう、それを俺は『吸収』して防いだ。と説明した。


 マイムは実感が湧かないのか、「ほんとに?」と首を傾げていた。

 他の3人も納得がいかないのか、「もう一度やって!」とマイムにせがんだが、俺が必死に止めた。


「とにかく、マイムは魔力の調整がもう少し上手くなってから、な!」

「わかったよ。まぁ、あれで成功したなら感覚は掴んだから、外に出てからやってみるよ!」


 ごねる4人をなんとか説得できた。

 俺はみんなを部屋に戻し、穴を塞ぐ。


 それから数分後、ご飯に呼ばれた。


(さて、情報収集するか。)





 マイムの異常さを垣間見た一日だった。





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