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異世界では経験値が必要です。  作者: きうろ
第一章 -幼少ー
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友と書いて、やっぱり友と読む。

 

 目を覚ますと、俺は毛布(ノウ)に抱きついていた。

 暖かかったのだろう。無意識だ。


 起きていた数人に変な目で見られていた。

 これでもまだ2歳児なのだ。別にいいじゃないか。

 ライトに「あかちゃんみたい!」と言われた。

 いや、指を咥えて寝る奴に言われたくないし、そもそもお前赤ちゃん見た事ないだろ。と、頭の中でツッコミを入れる。

 誰かが言っていたのを真似たのだろう。周りの奴を睨みながら、「すごい暖かいよぉ、いいだろー」と言い放つ。

 すると、ライトが狭い布団に入ってきて背中からノウに抱きつく。

「ほんとだー!」という大きな声で、ノウが目を覚ます。


「え・・・なにこれー・・・」


 と言い、俺達を引き剥がす。そのまま起き上がり、寝ぼけ眼で監視役に何かを言うと、部屋から出て行った。トイレだろうか。


 昨日風呂に入らずに寝てしまった事を思い出す。

 ライトを誘い、監視役にお風呂に入りたいと言うと、連れて行ってくれた。



「つめたいー!!」


 ライトが裸で水を浴びている。

 お湯もあるのだが、先に水を浴びなくてはならない。理由は分からないが、そう決められている。

 俺も水を浴び、体を洗ってから湯船に浸かる。


 しかし、このお風呂はどうなっているのだろうか。

 いつ見ても綺麗だし、どこからか湧いてきたわけでもなさそうだ。

 鑑定しても『お湯』と出てきて温度が載っているだけだ。


(もしかしたら、奴隷商人の誰かが魔法を使えるのかもしれないな。でも・・・)


 なんとなく前から予想はしていた。しかし、全員ではないが、魔力感知に引っかかった奴隷商人のほとんどに鑑定をしているのだが、魔力が高い人は見つかっておらず、決定打にかけるのだ。

 そういう魔道具があるのでは、とも考えたが、どういう物なのかがわからない。


(そもそも魔力を感じないんだよなぁ。)


 首に付いてある首輪に手を当てる。この首輪からも魔力を感じない。魔道具の魔力は感知しないの()()()()()()


 色々考えていると、頭に冷たい水が掛かった。

 バッと後ろを振り向くと、ライトが驚いた表情でこちらを見ていた。ライトの体勢を見て、ライトが水を掛けたのに間違いはないのだが・・・


「なんで掛けた本人が驚いてんだ!」


 と、お湯を掌で掬うように、ライトに向かって飛ばした。

 ライトはきゃっきゃと喜び、また水を俺に向かって掛けた。

 冷たいからやめて欲しい。のだが、ライトを見ていると安らぐ。と同時に、これが本来の2歳児なんだよなぁ。と、自分の異常性を再認識してしまう。

 ライトは俺の見本なのだ。



 風呂から上がり、部屋に戻る。

 ノウはもうすでに帰ってきており、リリアとルードとナールと話をしていた。


 俺達はそっちのグループには行かず、マイムとリヴと合流する。

 リヴに変な目で見られたが、ノウに抱きついていたのが原因なのを理解している為、気にしない。

 するとリヴから


「大丈夫だった?」


 と声を潜め体をジロジロ見ながら質問された。が、なんの事か分からなかった。


「え?なにが?」

「いや、ノウにどこか食べられたりしなかった?」


 吹いた。リヴはそんな事考えていたのか。


「み、見ての通りだけど・・・。え、もしかしてリヴさん・・・ノウが人間を食べると思ってるの?」


 と、ニヤニヤしてリヴをつつく。


「食べられちゃうの?!」

「いや食べない食べない!!食べないから静かに!!声大きい!!」


 ライトが本気で驚いたように飛び跳ね大声をあげた。

 あっちのグループの視線が気になる。ノウをみると、何も聞いてなさそうだった。正確には、聞こえているだろうが・・・。


 声を潜め、しっかりと説明する。


「リヴ。亜人を見るのは初めてで怖いのは分かる。でも、そういう偏見はいけないよ。」

「でも、どう見ても猫じゃない。あんなに大きい猫がいたら、不安になるじゃない。」


こいつ猫を見た事あるのか?と疑問に思ったが、その疑問を胸にしまう。


「うーん。でもさ、ノウはみんなの事友達だと思ってるよ。」

「知らないよ、そんなの。」


 まぁ、気持ちは分かるが・・・あまりにもノウが可哀相なので、必死に説得する。


「じゃあさ、俺や・・・ナールが亜人だったとしたら、リヴを食べると思う?」

「亜人じゃないじゃない。」


 まぁそうなのだが・・・と心の中で肯定するが引くに引けないので、話を続ける。


「人間そっくりな亜人だとしたら? 満月の夜になると、とっても怖い狼の亜人になるとしたら、どう?」

「なるの?」


 リヴが驚いた顔で俺を見ていた。狼男の話で例えたのだが、少し刺激が強かったみたいだ。


「いや、ならないけどさ、例えだよ。 もしそうなった場合、リヴは俺やナールと絶交する?」

「・・・・。」

「もし絶交するというなら、俺はリヴと友達にはなれない。ノウはさ、ただ、見た目が人と違うだけだよ。同じようにご飯食べて、お風呂入って、寝て、起きて、生きている。」

「・・・。」

「俺とナールの見た目が変わっただけで、人を食べる化物だと言うのな「わかったわよ!」」


 リヴが顔を真っ赤にして立ち上がった。

 そしてドンドンと足音が聞こえてきそうなほど力強くノウの方に歩きだした。

 ノウの真後ろに立つ。ノウはビクビクしながらゆっくりと後ろを振り向き、リヴと目が合った。


「許してあげる!友達になってあげるわよ!!」


 全員キョトンとしていた。

 特にノウが驚いただろう。身に覚えが無い事をいきなり許す宣言されたのだ。近くにいたナールは「へ?」というノウの間抜けた声を聞けたかもしれない。


「許すって・・・なにを?」

「知らないわよ! で?なるの?!ならないの!?」


(知らんのかぃ!!)

 と思ったのは俺だけではないはずだ。


 ノウも訳が分からずキョロキョロと周りを見ていた。

 俺と目が合い、ゆっくりと俺が頷くと


「う、うん・・・。ありがと。友達になろー!」



 こうして素晴らしい?友情が芽生えた・・・のか??




 最初は本当に仲良くなれるのか不安でいっぱいだった。

 お互いぎこちないし、会話もすぐに終わる。何度かリヴが俺とナールとルードに助けを求める様にチラチラ見てきたが、ノウはそれを自分たちだけで仲良くなる!とジェスチャーで拒み続けた。



 そして数ヶ月経った頃には、もう普通の友達にしか見えないくらい仲良くなった。

 いや、それを通り越してリヴは毎日ノウと一緒の布団で寝ている。



 暖かいから気持ちは分かるのだが、ノウは少し寝辛そうだった。




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