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異世界では経験値が必要です。  作者: きうろ
第一章 -幼少ー
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『商品』

 

 奴隷市


 それは奴隷商人が奴隷を売りさばく場所。

 なのだと思うのだが…俺たちは捕虜として捕まったんじゃなかったのか?と疑問を抱く。

 周囲を見渡すと、どうやら岩石地帯のようで岩がそこらに転がっており、巨大な洞窟の周りに『ようこそ!人材派遣市へ!』と看板が掲げられていた。いや、嘘だろ。と分かったのは、馬車の中からでも見える、その周囲にある百数個もあるテントで生活している人達を見たからだ。

 首に、鎖につながれた首輪をしたボロボロの服を着せられた老若男女たちが馬車から降りてきた俺たちをもの珍しく見ていた。


 洞窟入り口付近で兵士と商人のような男が何か話している。何を話しているかは分からないが、兵士が商人から5つの膨れ上がった袋を手に取ったことから、やっぱり売られたのだな、と確信する。



 別の商人が俺たち全員に首輪をつける。その首輪は鎖が全員の首輪と連結されていた。

 もちろん、俺も付けられた。

 全員を1列(正確には2列だが)に並ばし、ゆっくりと洞窟内へ歩かせる。

 それと同時に、俺たちを運んだ馬車が何も言わず奴隷市から出ていった。


 洞窟の中は割りと涼しかった。中は広く、いくつもの扉があり、かなり整備されていた。

 なぜか扉には1~12までの数字が書かれていた。


 中では、面接、というよりかは職務質問に近いものが行われていた。

 それが終わった者は指定された場所へ行け、と首輪の鎖を外された。

 逃げ出す人は誰もいなかった。

 入り口から洞窟奥にかけて、複数のマッチョな男が警備していたからだ。もし逃げ出したらボコボコにされるのだろう。

 俺を抱えていたトルさんの番がきた。

 面倒臭そうにして座っている細身の男が質問員のようだ。貧乏ゆすりが16ビートを奏でていた。


「名前と年齢は?」

「トルリオ、37歳です。」


「フルネームで。」

「トルリオ・リースです」


「職はなにしてたの?」

「商人です。」


「ほう、算術や文字は書ける?」

「はい。」


 いや、そりゃ書けるでしょ。47歳にも成って書けない人とかいるの?


「OK、じゃああっちの『2』って書かれた扉にに行って。また同じ質問させると思うけど…と、その前に、その子は?あんたの子供?」

「いえ、行きずりで。名前も分かりません。」


「ふぅん…まぁそんな小さいと商品にもならないからなぁ。」

「っ!!!! この子はとても運に恵まれた子なのです!生かしていると必ずお役に立てると思いますので、どうか命だけはお助けください!!!」


 兵士に斬られそうになったのを2度も回避した、高いところから落ちても()()()無傷だった。と、周りの質問員も俺も引くくらい熱弁していた。

「どうか、どうか!」と深く頭を下げているトルさんに、「いや」と苦笑いを見せながら質問員が言う。


「どう思ってるのか知らないけど…俺たちは一応商人なんだ。まぁ、普通の商人からしたら変な目で見るかも知れないけど、役に立たない赤ちゃんだからって殺したりはしないよ。うちの稼業はそこまで人の道に外れたりはしない。」


 と、トルさんの肩を掴み頭を上げさせる。


「それに、ここには教育施設もある。ある程度学ばせて高く売れるようにね。だから安心してくれ。」


(どう安心すればいいんだ。結局奴隷になるんじゃねぇか。)と俺はツッコミを入れるが、トルさんは安心したようで、また頭を下げた。


 しかし、トルさんにはほんと世話になっている。馬車の中でも、「赤ん坊の分まで食料は出せない。」という兵士に食って掛かったりした。結局もらえなかったが、トルさんが貰った分のパサパサのパンを水に漬けふやけさせてから俺に食べさせてくれていた。 今のは早とちりだったが、命を助けようと頭を下げてくれた。俺はこの人には頭を上げれない。いつか、恩返しをしようと、心に決めた。


 そうして俺とトルさんはここで別れた。

 俺は奴隷商人に抱っこされ、洞窟の枝分かれした比較的広めの部屋に連れて行かれた。




 そこには俺の他に2人の赤子と、6歳未満の子供たち数人が3名の大人の女性と戯れていた。





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