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異世界では経験値が必要です。  作者: きうろ
第0章 -女神?ー
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女神との遭遇?




    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



『ただ俺は…みんなが幸せならそれで良かった…。だけどこれは…あんまりだ。』 R・L・M



 

    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄







 主人公、田中栄太(28) 大福を喉に詰まらせ、死亡



「目が覚めましたか?」


 初めて聞くとても澄み切った声が耳に届いた。

 訳が分からなく辺りを見渡す。

 なぜかは分からないが、動くのは首から上だけ。今居る場所には見覚えはない。

 一生懸命脳を働かせ、何が起こったのかを整理する。いや、正確には自分に何が起きているのか、をだ。

 なぜ俺は変な体勢なのか、を思い出しながら。



 数刻前、暗い一室の片隅、PCを前に大きなため息がもれる。

 モニターの薄明かりが眩しいと感じる。別に今の現状に不満があるわけではないのだが、自分のため息だけが聞こえてくる。

 俺は自室の椅子にもたれ掛りながら、PCで次なる就職先を探していた。

 今の就職先に不満があるわけではない。そう、不満はないのだが、満たされるわけでもない。

 給料は割りと良く、会社の同僚や上司ともこれといって問題も無いのだが…


「合わないんだよなぁ…。もっとやりがいっつうか…俺にあった職業ないのかね、神様よ。」


 そう独り言を呟き、キーボードの横に置いてあった大福に手を伸ばし、口に咥える。

 そのまま飲み込もうとして、意識が無くなった。



 そう、意識が無くなったのだ。

 そして今、身動きが出来ないでいた。

 椅子に座っていた、いやもたれ掛っていたはずなのに椅子は無く、空気椅子のようにそのままの格好で宙を浮いていた。


「あ、あの…?」

「ふぁい?!」


 時間にしては数秒だったと思う。

 一体なにがあったのかを脳をフル回転させ集中していたため最初に聞こえた声を無視してしまっていた。首が動く範囲で周りを見渡しても誰も居ない。


「ついさっきまで自分にあった職を探してましたよね?」


不安を余所に声の主は話を続けるがやはり透き通った声の主の姿は見えず、ますます不安になっていく。


「え、えっと…探してました…けど…ここどこなんですか?」


 明らかに自分の部屋ではなく、薄暗いのに周りには小さなライトが星のように輝いていた。と言うより、本物の星に見え昔デートで行ったプラネタリウムのような空間だった。


「ここは私の部屋です。やっぱ探してたんですね!よかった! いい仕事、というより職…ジョブ?紹介します!!異世界に行って、やって欲し事あるんですが…どうでしょう?」

「え…?どうって…。ちょっと意味が分からないんですけど…。あなたどなたですか? てか、あなたどこに居るんですか?俺どうなってるんですか?ちょっと説明してくれませんか?」


 まるで喜んでいるかのように声のトーンが変わり、強弱を付け質問を投げつけてきたが混乱の有無に関わらず頭を掻き毟りたいほど訳が分からなかった。


「私は女神と呼ばれる存在です。名前は秘密です。と言いますか、今は教える事ができません。 私が統治してる世界を救って欲しくて、やる気あるけど死ぬ運命にある田中栄太さんを召喚しました。」

「死…死ぬんですか…俺…。」

「正確にはころ…ごほんっ…死にました。」


 咳き込み誤魔化そうとしていたが、聞き逃せない言葉が耳に留まり、自然と眉を寄せ口角がピクピクと動き出す。


「え…殺したの?」

「い、いえ、ちょっと確率を操作してそうなるよう仕組んだ程度です。」

「こっ殺したんじゃねぇか! てめぇ何やっ……えぇぇ?!!っつか姿現せ!」


 怒鳴ると同時に電気が付いたようにパッと辺りが眩しくなり、自称女神が姿を現した。見た目は誰もが見惚れてしまうほどの白い肌が似合う美人で、薄いピンクの唇と髪が印象的だった。口元をきゅっと尖らせ、ウルウルと涙が今にも出そうな目で見つめてきた。『女神』としか言いようがない神々しいオーラを纏ったその姿を現した数秒も経たぬうちに膝をつき、土下座の体勢になり「ごめんなさい!」と泣きだした。


「あんた…人殺して、ごめんなさいで済むと思ってんの?」

「思っでまぜん…。」


 本気で泣いているのか、グスグス言って聞き取りづらい。

 一方こちらは怒りに任せるも、低く低く、ゆっくりと喋る。


「なんで殺したの?どうやって殺したの?確率ってなに?てか、殺したって…なに?本当に死んじゃったの、俺?」

「あ、あなたの…田中さんの力を借りたくて…。大福を食べていたので…喉に詰まらせて死ぬ確率を操作して…3%から97%に引き上げました…。」

「…97%て…おま、えぇ…。なにそれ…。それ、俺じゃないとダメだったの?」

「はい…。おそらく田中さんの力は、私が統治する世界でかなり強くなる素質があり、どうしても欲しくて…。」


 と上目遣いでチラッと見てくるその姿と薄い服から見える胸の谷間にとても興奮した。ハァハァと荒く息を立て音声だけを聞くとヤバイ輩のように思えるが決してそういう如何わしい事を考えている訳ではなく、自分の局部が変化していないかの確認をしつつ、口調を変えずに平静を装い自称女神を上から眺めながら口を開く。


「そうなんだ…。でも人殺しはダメだと思う。だから家に帰して。生き返らせて。女神だからそれくらいできるでしょ?」

「申し訳ないですが…それは出来ません。」

「はぁ?! なんで?! 人を大福でぶっ殺すことは出来ても生き返らせること出来ないって…なに?!」


 頭の中で何かが弾けたような音がしたと同時に、胸の谷間の存在など忘れたように声を荒げた。


「も、元々統治している世界が違うので…! 異世界の…地球の住人であるあなたの魂には干渉できないのです…。」

「大福には干渉出来るのに!?」

「大福に、といいますか…物事の確率を操作をする程度しか異世界には干渉できません…。」

「その程度ってやつに俺は殺されたんだけど…!!」


 どんどんと怒りが込み上げてくる。いや、もう限界と言ってもいいくらいだろう。

 だが怒りは収まるどころか限界を超えてどんどん増していく感じがした。楽しい人生とは言わないが、それなりだったのだ。過去色々あったが今は彼女もいる、貯金も28歳ながらに結構貯まっていた。デート代や生活費以外にほとんど使い道がなかったといえばそれまでだが、未来の為にコツコツと貯めていたのだ。


「お詫びとして、私の世界では、なに不自由なく過ごせるようにしますので…。」

「なに俺がそっちの世界に行く前提で話ししてんの?行かないからね。このまま閻魔(えんま)さま?んとこ連れてって。地球で生まれ直すから。」

「…できません。」

「はぁ!!?」

「この私の部屋は…地球とは切り離されていまして…こっちから地球に魂を循環させることが出来ないのです。」

「…どゆこと?なんて?!」

「ち、地球での魂は地球でしか循環できません。私の世界の魂は私の世界の魂でしか循環されません。私があなたの…田中さんの魂をこの部屋に連れてくることが出来たのは、私の力が約90%あなたの魂に干渉したからです。地球には神と呼ばれる存在がいないため、地球からここにいる田中さんの魂に干渉させる手段はありません。」

「あんたがやりたい放題できるってこと?いつもしてんの?人殺しを!!」

「い、いえ!そんな!! 私は田中さんが始めてなのです!!信じてください!!」


 人を殺したのが自分が始めてだと言われて信じるも信じないもないと思うのだが…もう地球には戻れないのだけは分かった。正確には、戻れたとしてもこの女神は帰す気が無いのだと思う。女神なのに人である存在に下手に出る時点で手放したくないというのが目に見えてわかる。「少し頭を整理させてくれ」と言い、大福を詰まらせた?体勢で考え込む。端から見たら滑稽な姿だが、動かせないのだから仕方が無い。と、思ったのだが…


「なぁ、この体勢解除できないの?辛くは無いんだけど恥ずかしいんだけど…。」

「あ、出来ます。」

「最初からしろや!!!」


 すみません!と言いながら土下座から正座に直り女神が目を瞑ると、体が動かせるようになった。



 と、同時にいきなり床が抜けたように重力に逆らう事無くこの果てしなく続く宇宙のような空間を落下していった。




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