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相談

今回は三人による議論的な回です

 【血染め桜】がゲーム時代とはかなり異なる仕様になっているのに気づいたのはすぐの事だ。

 ゲーム時代は一戦で一体しかスキル取得をさせられなかった。だが、ゲームと異なり、どうやら今回は芽生えた時に呑み込んだ大量の遺体、それらが宿していたスキルを全て取得していた。


 「……考えてみりゃあ、あれはゲームだからこその仕様だった訳だからなあ」

 「そうですね……」


 ゲームだからこそ、一気に大量のスキルを得ての育成は出来なかった。

 けれど、現実となった世界にはそんな仕様は関係ない、そういう事なんだろう。けど、これはもう一つ重要な事を意味している。


 「けど、それって、ゲームでの常識が通用しない、って事でもあるよね……」

 「だよなあ……」


 カノンの言葉にティグレさんが溜息をついた。

 

 「俺もそういやあったな。あの騎士、【轟剣一閃】を使ってた」

 「「え?」」


 【轟剣一閃】は騎士のクラスのスキルとは何の関係もない。というよりは縁の無い狂戦士のスキルだ。

 攻撃力や攻撃速度は大幅上昇する代わりに、一定時間防御力をゼロにするというスキル。


 「だからこそ、あの時は俺は【震脚】でバランス崩して、【轟断】で斬るって選択が出来た訳だが」


 リスクが大きいので、ああした真正面からの一騎打ちに使うなら相手の態勢を崩してからでないと使うような技じゃない。そうティグレさんは言った。

 【轟断】は名前は威力重視に見えるが、実際は速度重視の剣で通常の防御なら弾かれかねない基本技の一つ。騎士の鎧を切り裂いたのは【轟剣一閃】で防御力がゼロになっていたからだろうと推測される。


 「そうなると、スキル効果はそのままだけど、習得方法は違う?」

 「いや、待てって。今回だけそうで、スキルの名前は同じでも違うって可能性も」

 「いずれにせよ」

 「「「相手のクラスや、スキル名で判断するのは危険(だ/だな)」」」


 何しろ、命に関わる事だから三人とも必死だ。

 四人娘はまだ『ワールドネイション』のスキルに関する知識が少ない事もあって、むしろ安全かもしれない。スキル名を聞いても「このスキルはこういう効果だからこうなるはず」という前提知識がない上、クラスなどから「この人のクラスならこういうスキルを持っている可能性が」と考えたりもしないからだ。

 もちろん、念の為に言っておく必要はあるだろうが、今回のような場合は熟練者であるこの三人の方が危ない。


 「どちらにせよ、これに関しては気を付けるしかないね」

 「そうだな。……さて、んじゃあ話を戻すけどよ」


 ティグレさんが鋭く二人を睨むように言った。


 「次はどうする?」


 その言葉にカノンと二人して沈黙する。 


 「……次はもっと派手になるでしょうね」

 「だろうな」

 「ある程度支配領域を抑えて、生存可能な地域を抑えないといけないけど……」

 「部族ごとにバラバラじゃあ論外だろうな」


 今回は一部部族だけで戦ったが、そんな状況で安心して自分達を元の世界に帰せるはずがない。

 相手は今回だけで数千、けれど今回参加した部族は戦える者達だけ選ぶなら数十人が精々だろう。それでは到底持ち堪えられるはずがない。

 

 「最低でも相手が諦めて、条約を結ぶ、ってとこまでいかなきゃ無理だろうな」


 それにしたって、相手が約束を守ってくれるかは分からない。

 史実を見れば、国家同士が結んだ約束でさえ守られなかったものは山ほどある。古代から、そして現代に至るまで無数に。ましてや、現状では結ぶのは小規模な部族と国。一時的な約束になる可能性の方が圧倒的に高い。最低でも、相手が攻め込むのを躊躇するだけの力がいる。

 その為には何が必要か、と言われれば力だ。


 「ま、数だろうな、やっぱり」

 

 圧倒的な個による戦力なんて自分達しかいない。

 大体、そんなもの、圧倒的なカリスマ性を誇る王がいなくなって即座に、あるいは跡を継いだ無能のせいで崩壊した国もまた多い。だからこそ。


 「最終的に議会制民主主義型の国家に持って行きたいが、そこまで付き合う必要もねえだろ。……部族ごとの代表による合議制にして、半数以上の賛成をもって決定、ってとこかね?」

 「部族の規模によって代表の数を増やさないと不満でそうだね。百人の部族と、千人の部族が同じ票数じゃ不満出るでしょう」

 「後はまあ、仕事放棄した場合だよね?何かしら理由つけてのボイコットって名のサボりは認めないとするか、或いはその後の決定に対して不満を述べてはならないとするか」

 「いずれにせよ、明確な罰則つけるべきだろうな。サボった事に対してか、不満を述べた場合に対してか」

   

 大体の方針を決めると三人は立ち上がった。


 「さてと、それじゃ俺は近場、カノンが遠いとこの連中を担当して制圧してくっかね」

 「常葉は数と、後は……浸食を頼むよ」

 「了解、嫌な所任せるけど……お願いするよ」


 そして、三人は再び動き出す。

 ……そんな闇を引き受ける三人の事を気にする四つの視線に気づいてはいたけれど。

次回は他のエルフ部族達への協力要請……という名の制圧開始予定です

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