悩み
近々、設定集として名前一覧などを上げようと思っています
『ハリー!ハリー!ハリー!』
「ねえ、あれ何言ってるの?」
「急げ、って連呼してるんだって」
エルフの人達を鍛えるティグレさんの訓練が物凄く厳しいと聞いて、お試し参加してみた。
『助けてえええええ!!!』
『許してくださいいいい!!!』
あのエルフの人達の悲鳴を聞く限りでは確かにそうなのかもしれない。
けど、同時に。
『へっ、ここが地獄の一丁目って奴かよ!!』
『手前ら、泣き言言ってんじゃねえ!!叫ぶぐらいなら死にやがれ!!』
なんて声も聞こえる。
どうやらエルフの長の息子を中心とする一派にも適応組と適応出来てない組とがあるみたいだ。
で、私達なんだけど思い切り手加減されてるのが分かる。
何故なら、私達の場合は隠密訓練時に発見されてもタッチだけで、見逃されるからだ。これがエルフの人達になると見つかった側も戦闘で抵抗する。場合によっては激しい戦闘になり、隠れていた側もチャンスがあれば逆襲撃で追っ手を撃退する。
この訓練は隠密側も襲撃側も共にエルフの人達。
時間内に半数以上が発見されれば襲撃側の勝利、見つからなければ隠密側の勝利。
ただし、見つかっても撃退に成功し、逃亡されれば発見にはカウントされない……。ちなみに私達はボーナスポイント扱いだって。見つかった場合でも隠密側が発見された時のカウントにはならないけど、見つけた場合は記録はされて、襲撃側が敗北した時のペナルティが軽減される、と。
隠密側も終わったら、立場を変えて襲撃側に回るので文句はなし。
でも、それは……。
「私達って最初から見つかるものとして扱われてるんだよねえ」
「実際見つかってるし……文句は言えない」
私、紅とユウナ、二人共毎回あっさり見つかっている。
一応、事前に教育は受けたんだけど、本物の隠蔽は凄くって、逆に言えばそれを見つける側も凄い。
初めて、『今、目の前に隠れてる連中がいるんだけど、分かるかー?』って言われてもごく普通の森にしか見えなかった。合図した途端に十人以上のエルフの人が立ち上がったのには本当に驚いた。
「でも分かった気がするなあ……」
「何が?」
ユウナの独り言に首を傾げる。
「きっとこれ、ティグレさんの『お前らのやる事は別にある』って理解させる為のものなんだと思う」
「え?」
「エルフの人達は長年森で狩りをしてきた。それに軍人としての訓練を重ねて受けて、あんな隠蔽や発見の技術に繋がってるんだと思う……」
私達じゃ狩りで動物の発見なんて無理だし。
そう言われて納得した。
確かに、私達に森の知識はない。
常葉兄さんは別だけど、あれは種族的な特性みたいなものらしいし。
ティグレさんは……どうなんだろう?何をしてる人なのかな?こういう事が出来る以上、もしかして軍人さんとかそういう人なんだろうか?それとも単なるサバイバルゲームとかのマニアな人なんだろうか?昔と違って、VRMMOが発達したからそうしたサバイバルゲームも本物そっくりな環境を再現して遊ぶ事が出来る。
本当にそれだけかは私達には分からないけど。
「これ終わったら、別の成長のやり方教えてもらおっか」
「そうだねー……」
開始早々に見つかってしまった私達。
ただいま、周囲で壮絶な戦闘込みの鬼ごっこを見ながら話しをしています。
「あとどれぐらいかな?」
「始まってまだちょっとしか経ってないからまだまだ時間あるよー……」
ああ、鍛冶を本格的に始めた咲夜と、魔法研究をやってるマリアと違ってヒマだなあ……。
とりあえず、戦闘訓練だよね。
幸いというか私は射撃関連はスキルの恩恵でろくに訓練もしていないのにある程度の腕がある事は分かってる。ユウナも接近戦では一定以上の技術がある。
うん、一定以上、なんだよね。
正にゲームのスキルが元というべきなんだろうか。ゲームもスキル任せな人と、スキルを元に独自に鍛錬を積んだ人、きちんとした技術を学んだ人では大きな差があった。そして、それはティグレさんやカノンさん、常葉兄さんも同じ。『ワールドネイション』ってゲームはそうした独自性の部分に大きな自由度を組み込んでいたから余計に差がある。
咲夜とマリアは前のゲームと似通った部分があるからある程度活かせるだろう。
けど、私は……。
ちらりと一瞬だけユウナに視線を向ける。
私とユウナは前のゲームと職が逆。前衛の戦士職だった私、前衛と後衛を必要に応じて使い分けるけど基本は支援役の盗賊だったユウナ。それに対して、今、私は後衛から中衛、前衛もやれるようになるにはまだ時間がかるし、そもそも戦い方が剣と魔法から銃へと変わっている。
ユウナも前衛となる戦士職へと変わった事で、一から学ばないといけない。
……私が我がままを言って、別職を選ばなかったら、そうしたらユウナも苦労しなくてすんだんだろうか……。
という訳で
本日は翡翠こと紅と、香香ことユウナの現状でした
と共に、前回逃げ出そうとした連中はこうなっております