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迷宮へ

 「ここが迷宮かあ……」


 紅達は早速、迷宮までやってきていた。もちろん、事前に常葉達には、ちゃんと話は伝えてある。そうでないと何かあった時に大変困った事態になるからだ。

 山に登る際に登山計画書を出す事を推奨されているが、それと同じだ。

 登山計画書があれば何人で、どういうコースを辿り、何時頃下山予定なのかを知る事が出来る。そうであれば、「下山予定からこれだけ過ぎてるのに連絡がないのはおかしい」という事が分かり、そこから「行方不明なのは何人」「このコースを辿ったはずなので目撃情報がないか」「迷ったとしたらどこが可能性高いか」といった事が分かる。

 常葉達が知っていれば、最悪、迷宮内部で何とか生き残っていればその内助けが来ると思える。

 しかし、知らなければ、「そもそもどこへ行ったのか」から調べなければならなくなり、最終的に来てくれるにしても相当な時間がかかるだろう。

 実は最初は紅などは……。


 「こっそり行って強くなって、驚かせちゃおうよ!」


 などと言っていたのだが、マリアが……。


 「万が一の事があったらどうするんですか!こっちの世界の迷宮がどれだけ危険なのか私達何も知らないんですよ!?」


 と怒られて、ちゃんと説明してから向かう事になった、という訳だった。

 実はユウナや咲夜も、紅の意見に当初は賛成だった。

 発言前にマリアが怒ったから口にしなかったものの、そうでなければ「いいね!」とか「いいですね」なんて声が上がっていてもおかしくなかった。ただ単に、その前にマリアの怒声が響いただけの話だ。

 もっとも、これは紅もだが冷静になれば、マリアの言っている事が正しいと理解出来た。

 圧倒的な強さがあるなら、紅の言った通り、こっそり行くというのもいいだろう。

 けど、そもそも圧倒的な強さがあるなら、今回迷宮に行ってみようなどと言い出してはいなかった。自分達には力が足りない、そう思ったからこそ迷宮とやらに行って、今より強くなれないか試してみようと思ったはずだ。

 そして、力が足りない、というなら当然危ない目に遭う可能性も高くなる。

 危険な状況に陥った時、迎えが来るまでどこかで耐える事になるが、その時に助けが来るまでの時間が大きく違ってくるだろう、そして、それは助かる確率に直結する。自分から万一の時に助かる確率を下げるのは馬鹿のする事だ。


 「さて、それじゃあ準備はいいですね?」

 「「「はーい」」」


 そして、もう一つ明らかにした事で良い点があった。

 これまた非常に当り前の事だったのだが、こっそり行こうとするという事は誰かに「迷宮に行く」という事を話さない、という事でもある。

 止められるかもしれないし、そうでなくても誰かに話せば当然、常葉やカノンらにバレる可能性は高まる。

 もし、相談した相手がちょっと心配して「そういや、お前さんとこのが迷宮に行くとか行ってたが大丈夫なのか?」とでも聞いたら、その瞬間にバレる。それを避ける為には黙っておくしかない訳だが、黙っていれば準備するのも隠れて行う事になる上、何が必要かも手探りだ。

 何せ、彼女達はいずれも迷宮に潜った事などない。

 ゲームでなら何度も潜った事があるが、ゲームのそれと現実のそれは違う。

 ゲームでなら食料にしたって満腹度が設定されているかどうかだけ考えれば良かったし、大体は探索セットみたいなものが用意されていた。

 

 では現実ではどうだろうか?

 まず明かりだ。

 彼女達は魔法の明かりがあればいいだろう、と思っていたが、迷宮では魔法の明かりは期待しない方がいいといきなり言われてしまった。

 何でも、迷宮内部では継続的な魔法の使用は難しいらしい。

 じょじょに迷宮自体が魔力を吸い取ってしまう為、瞬間的な魔法の行使、いわゆる攻撃魔法や治癒魔法に関しては問題ないものの、明かりの魔法や寝床を作る魔法みたいな本来長時間効果のあるものは通常より遥かに早く効果時間が切れてしまう。

 これが無尽蔵に近い魔力があるというなら話は別だが、そうでないなら普通の明かりや寝袋を用意しておいた方がいいと言われてしまった。

 次が水だ。

 ゲームでは精々、満腹度の為に携帯食だのパンだの齧って冒険するという事もあった。

 しかし、現実では生存には水が不可欠だ。これまた言われて初めて気づいた事だが、水というものは重く、嵩張る。しかも、この世界ではプラスチックのボトルなどというものはない。

 幸い、というか彼女達もアイテムボックスはあったのでそこに入れておく事は出来たが、手持ちのアイテムボックスは無制限に入るものではなく、十個だけだ。特に重くて嵩張る水を大きめの甕に入れるなどして入れて、寝泊まりする為のテントを誰かが代表で持って……とやっていると着替えなどは結局、自分で運ばないといけなくなったりしている。

 それでも、聞けたからこそ準備出来たものであり、聞いていなければ悲惨な事になっていただろう。


 「さあ、それじゃ潜ろうか」

 「今回はとりあえず、だからね?」

 「最長三日!無理はしない!」

 「そうね、洞窟の中だと時間が分からなくなりそうだから、注意しないと」


 そう言って、迷宮へと彼女達は潜っていったのだった。

迷宮探査の開始です

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― 新着の感想 ―
[一言]  空気だった4人のことを書くにはこれぐらいしか方法はなさそうです。だから、よほどダラダラと続けない限りはいいのではないかと思います。  召喚について、そろそろ察知する陣営が表れてもおかしくな…
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