少女達の悩み
お、おかしい、投稿したはずなのに…!?
投稿し直しです
「私達の役割って何なんだろう?」
それはポツリと呟いた紅の言葉から始まった。
「どういう事でしょう?」
「あ、マリアちゃん。あのね?うちの兄貴とかカノンさんとかは分かるの。ティグレさんもまだ分かるよね。あれだけ強いんだし」
「……ええっと、そうですね。確かにこちらの世界で活躍出来るだけの力はお持ちかと」
そう、常葉とカノンは圧倒的な力を持っている。
ティグレはゲームと異なり、かなり能力に差がついているように見えるだろうが、実際にはあれで常葉やカノンに痛打を与えるぐらいの力は持っている、多分。実際に試した事はないので断言出来ないのが困った所ではあるが、能力差を装備の差で多少なりとも埋める事が出来ている、はずだ。
ただし、幾ら強力な武器防具を持っていても、本体の性能が低ければ意味がない。
猛獣をも打ち倒すライフル銃があったとしても、それを的確に操り、猛獣に命中させるのは撃ち手の能力次第だ、という事でもある。
つまり……。
「私達じゃ装備の底上げもそこまで期待出来ないし」
「「「………」」」
ユウナ、咲夜、マリアの三人共反論出来ない。
現在作成可能な装備はティグレのそれに比べて圧倒的に性能が低い。
これは作成者がティグレはゲーム世界最高クラスのネームド鍛冶師による傑作なのに対し、ユウナはまだまだゲームの世界で言えば駆け出しもいい所、というだけではない。素材にしてもゲームの中で手に入るそれと比べれば雲泥の差があるし、その装備を使う自分達の能力がティグレと大きな差がある、というのもまた事実だからだ。
「心を支える、というのも手ではありますけれど」
「それだけでいいのかなあ……」
マリアの呟きに紅が答える。
それを見るユウナと咲夜の視線はそれぞれ異なる。
ユウナはどこか「いいなあ…」という視線だし、咲夜は「いいわねえ……」という視線だ。一見似ているようだが、前者が「私も恋人欲しい」というものであるのに対し、後者は「ああ、愛する人を支えたいと苦悩する二人も可愛いですわ!」という意味合いの視線と、中身はまるで異なる。
こんなんだから咲夜には彼氏が元の世界でもいなかったのだが、当人が気にしていないのだからとりあえずはおいといて。
「鍛錬にしても限界があるしなー」
「ゲームみたいに数をこなせる訳ではありませんからねえ……」
ゲームなら失敗してやられても実際に死ぬ訳ではないし、経験値も一定の方法で稼げる方法がある。
戦争だって、誰かが死ぬ訳でもないし、定期的に行われる。素材などもある程度以上まとまった入手方法が設定されている。
そうした現実では不可能な事があってこその常葉であり、カノンであり、ティグレだ。
現実でなら獣一体狩るにしても足跡や痕跡を探り、専門的な技術を駆使して追跡して獲物を発見し、仕留める。ゲームみたいに、ただ歩いていれば向こうから際限なく出てくるなんて事はまずない。
「あれだけ上空から探しても全然見つかんないとは思わなかったよね……」
「それは同感」
空を飛べる二人、紅の言葉にユウナが賛意を示した。
素材探しに赴いた際、「空からなら見つけやすいんじゃない?」という事でやってみた訳だが、現実には人の手が入っていない密林などとても上空から下が見通せるようなものではなかった。
結局、地面に降りて、歩いて探す羽目になっている。
全員悩んでいたが、この数日後。
ユウナが連合軍に新たに加わったドワーフ達からこの世界の「迷宮」の存在を教えてもらい、その一つが山脈にある事を知る。
素材と経験双方を得る為に常葉やカノン、ティグレ達に頼んで潜る許可をもぎ取り、挑むまであともう少しの時間が必要だった。
……ちなみにこの世界の迷宮だが。
この世界においては実に奇妙な存在である事をまだ彼女達は知らない。