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美少女はじめました  作者: 針山田
20/154

20話 ひなこVS門番


 バックステップからの、


「てやぁッ!」


 地を蹴って、刀を一振り。

 ひなこは、襲いかかってきたゴーレムを真っ二つに分断する。

 その先では、門番が一人、こちらを見て立っている。

 今のワンシーンだけを垣間見れば、戦況は、ひなこ側が有利であるように感じられるだろう。しかし、実際はその逆。ひなこが門番に追い詰められていた。

 理由は簡単。異能力によって作り出されるゴーレムは倒せても、その本体、門番自身を、ひなこは攻撃できないからだ。なぜなら、門番は、ひなこが救いたいと願う『美少女』の一人なのだから。


「…………」


 優也を逃してから今まで、ひなこがゴーレムを倒し、門番が新たなゴーレムを生み出し、ひなこが、またそれを倒す、という繰り返し。

 正直、あと何体のゴーレムを倒せるだけの余力が残されているか分からない。

 力尽きるまでには、この状況を打開する策を講じなければならないのだが。


「ひなこちゃん、そろそろ諦めたほうがいいんじゃないかな。私も、ひなこちゃんとは戦いたくない」

「だったら! ここでわたしを見逃してくれれば……」

「それはできない。研究所からの命令だから」

「どうして⁉︎ 研究所に利用されているんだよ⁉︎ 門番さんだけじゃない。ここにいる『美少女』みんな!」

「そうだとしても、私は研究所に救われたから。恩を返しているだけなの」


 そういえば、研究所の『美少女』は、皆、研究所に助けられた、救われたと言う。ひなこの知る友人も、昔にそう言っていたのを思い出す。

 救われたから恩返し。そういう点で言えば、門番の行動は、むしろ正しいものといえよう。


「ひなこちゃんは昔の記憶がないからわからないだろうけど、きっと研究所に助けられているんだよ。そんな恩人を裏切るの?」

「わたしは……、たとえ助けてもらったとしても、恩返しのために世界を壊したくなんてない!」


 彼女が、こういうことを平気でする性格でないことは、ひなこがよく知っている。おそらくは、研究所に操られているのだろう。

 しかし、威勢が良いのは口だけで、いぜんとして戦況は門番が有利だ。

 むしろ、先のひなこの宣言で、完全にひなこと門番は決裂してしまった。もともと望みなど薄かったが、これ以降説得の余地は完璧にないといえよう。


「そろそろ、本気でいくよ、ひなこちゃん」

「…………」


 ひなこは身構える。攻撃態勢ではなく、あくまでも、攻撃に対処する態勢で。

 門番は、右手で廊下の壁に触れた。途端、そこから次々と石柱が出現し、ひなこへと向かってくる。


「てやッ!」


 壁から突き出てくる石の柱を、ひなこは七星で一刀両断。

 砕け散る石の陰から、現れる門番。振り下ろされる拳。


「っ⁉︎ ぐっーー、ぐぁッ‼︎」


 とっさの判断で防御するも、続くストレートに、防ぐ両腕を貫かれ、ひなこは後方へ大きく吹き飛ばされてしまう。

 数メートルは宙を舞い、地に何度もバウンドしてから、ひなこは廊下に寝そべる形で静止した。


「…………」


 門番の拳が、ただの拳だったら、ここまでではなかっただろう。だが、今の彼女の両腕には、まるで手甲のような石でできたものが装備されていた。


「ここまで傷つけたくなかった……」


 地に横たわるひなこを、心配そうに見下ろす門番。


「研究所を敵に回したら、命がいくつあっても足らない。これはひなこちゃんのためでもあるんだよ?」


 そう言って、ひなこへ手を伸ばす門番。


「はあーーっ‼︎」


 最後の力を振り絞る勢いで、ひなこは門番へ向けて刀を振った。

 しかし、その刀は、門番に届くことなく、その動きを止めてしまう。もちろん、ひなこの無意識が働いたのである。

 その様子を見た門番が、呆れるように言う。


「……もう諦めて、ひなこちゃん。ひなこちゃんじゃあ、世界を救うことはできないよ」

「そんな……」

「ーーそんなことはないぜ、門番さんよぉ!」


 突如現れた声に、ひなこと門番は、同時にその声がした方を見やった。


「優也くん⁉︎」


 なんと、そこにいたのは、石崎優也だった。


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