148話 優也のせいだよ
カメリアが転校してきた日から一夜が明けて。
「結局、昨日の夜、カメリアがひなこに送ったメッセージって、どんな内容だったんだろうな……」
一度は考えないようにしたつもりであったが、やはり気になる。
入学の目的など、ひなこが色々と知っていたあたり、カメリアが通学を始めたことを教えたのは間違いないだろう。けれども、ひなこのあの様子を思い返す限り、それだけではないようにも思える。むしろ、カメリアがそんな内容だけでメッセージするとも思えないし。
とはいえ、ひなこに聞いても、カメリアのプライベートに関わるとかなんとかで教えてもらえなかったし。
「カメリア本人に聞きゃ、教えてくれっかな?」
なんてことを考えながら、珠音と分かれた優也は自身の教室へと入った。
「おはよう」
「おはよ、優也君」
いつものように、冬野が笑顔であいさつを返してくる。
「今日も今日とて女の子みたいだな」
「今日二言目がそれってひどくない⁉︎」
「そうだよな、ごめん」
「もう、優也君ったら」
「女の子に女の子みたいは失礼だよな」
「違うからねっ⁉︎」
何が違うと言うのだろうか。今世紀最大の謎といっても過言ではない。
さて、いかなる叡智をもってしても解くことのできない謎は置いておいて。
優也が少し視線を動かすと、座席の後ろ側に座る少女と目が合う。昨日転校してきたカメリアだ。
「——っ⁉︎」
途端目をそらした彼女は、窓の外を眺めはじめた。
「カメリアも、おはよう」
「…………」
「?」
カメリアからの返事がないまま、優也は自分の席に座る。
「どした? 元気なさそうだけど」
「別に?」
と言いながら、カメリアは、さらに首を回して、どういうわけか優也の顔を見ようとしなかった。
しかし耳がこっちを向いていて。それを見た優也はあることに気がつく。
「耳、ずいぶん赤いが熱でもあんのか?」
「ないわよ」
「じゃあなんで?」
「……ユウヤのせいだから」
小さく、けど確実にそう呟いた彼女は、控えめに優也を見る。その頬は、見てわかるほど熱を帯びていた。
「俺の……?」
今来たばっかなんですけど?
「そうだねぇ、それは、優也君のせいだねぇ」
「え? 冬野まで?」
それは、って、どれは?
今来たばっかなんですけど?
「俺が何したって——」
「はい! みんな席について。ホームルーム始めますよ」
ちょうどそのタイミングで、教室に入ってくるは、このクラスの担任。
「ほら、ホームルーム始まるわよ。早く前向きなさいよ」
「…………」
なんか色々と納得いかないが、これ以上話していたら、あの担任が豹変しかねない。
その光景を、前に優也は目の当たりにしている。それはそれは、もうこの世のものとは思えないほど末恐ろしいものであ
「石崎くん」
「はいぃっ⁉︎」
「何か、失礼なことを考えていませんでしたか?」
「い、いえっ⁉︎なにも⁉︎」
「そう」
読心術でも会得してんのか、あいつは。
だとしたら今すぐ教えてくれ。それで、カメリアの心を読み取って、さっきの罪を解明するから。
(つっても、解き明かしたところで、冤罪に決まってるんだけどな)
なんせ、優也は何もしてないのだから。