134話 幼女は正義
「ねえねえ優也くん! 女の子がいっぱいいるよ!ここは天国かな⁉︎」
「なわけねぇだろ」
少女館で暮らす様になった元『迷い子』たちに囲まれて、今にも天に召されてしまいそうなひなこ。もはや、暴走状態である。
そんな興奮マックスの彼女を見て、優也はある過ちに気が付いた。
(そういや、ひなこの脳内に、もう一つの漢字があったか)
【ひなこの脳内】
食幼食
食食幼食食
幼食
真ん中に一本の筋を貫く『幼』の字。言うまでもなく、幼女の意。
ひなこを含め、チームM.Mのメンバー、遥、寺都とこころの各々が、元『迷い子』の少女たちと話をしている。
まあ、寺都にいたっては、どちらかといえば半ばこころに強制されている感は否めないが。
そんな面々から少し離れた位置でカメリアが彼女らの光景を眺めていた。それに気が付いた優也は、幼女に鼻息荒くするひなこを一人にする心配を抱えながらも、彼女の元を離れ、カメリアに歩み寄った。
「カメリアは混ざらないのか?」
「そういうユウヤこそ、あたしのとこに来てるじゃない」
「それはカメリアが寂しそうにしてたからな」
「寂っ——⁉︎」
瞬間、カメリアの顔が真っ赤に染まる。
「そ、そんなわけないでしょ!」
「わかってるっての」
そんな必死になられたら、むしろ疑ってしまう。
「ちと休憩の意味も込めてな。こういうのは元気のいいやつが遊んだ方が、あいつらも楽しいんじゃないかと思うし」
「その意見には同意するわ。その点、ひなこは適任よね」
「ちょっと不安もあるけどな」
変質者の顔が時折垣間見える点とかな。
「そういや、ここの飾り付けはカメリアがやってくれたのか?」
「全部じゃないけど。あの子たちにも手伝ってもらったわ」
「そうなのか?」
「ユウヤたちのとこに行く前に、少し打ち合わせをしてね。さっきのサプライズもその一つよ」
クラッカーのやつのことか。
確かに不意をつかれたものだから驚きを隠せなかった。
「お菓子とかは? やっぱカメリアが作ったのか?」
「残念だけど、全部買い揃えたものよ。お菓子作りはあまり得意じゃないのよ」
「これを全部持ち運んだのか?」
「そこに関してはあの子たちを頼るわけにもいかないしね。幸いにも、少女館の近くにはお店もたくさんあることだし。それほど苦労することでもなかったわ」
「サプライズなのも嬉しいが、言ってくれりゃ手伝ったのに」
カメリアにとって、優也の何気ないその一言は、隙を突かれた不意打ちでしかなかった。
だから、とっさに返す言葉が見つからず、口から漏れ出たのは素直な本音であった。
「あ、ありがと……」
「顔赤いぞ? やっぱ疲れてんじゃないのか?」
「うう、ううっさい! 見るな——っ!」
張り手こそ飛んで来たが、そう言った彼女の顔は決して怒ってはいなかった。
むしろ————。