133話 これからよろしくおねがいします
「これから、みんな時間あるかしら?」
湊率いる新たなる部隊の名前が決まり、しばらくした頃、カメリアがそんな質問をその場にいた全員に投げかけた。
「わたしと優也くんは、とくに用事はないよ。ね、優也くん」
「ああ」
なぜひなこが率先にして答えたのか。優也にそれは分からなかったが、本当に何もないのは事実。
彼ら二人に続いて、皆が言葉を返した。
「姉御。アタシたちもヒマっす」
「暇かどうかは置いておいて。ここの護衛が任務である以上、今やるべきことはありません」
「チームM.Mの皆さんと同じく、私の任務も少女館の護衛ですので。空いています」
「寺都たちは?」
「私とこころも用事はない」
ここだけ切り抜いて聞けば、なんて暇人な連中なのだろうか。これだけ人がいながら、全員が用事なく暇を持て余しているなんて。
しかし実際、ここにいる優也らの目的が、研究所が企む『世界美少女化計画』の阻止及び『美少女』を人間に戻すと言っても、何をすればいいのかわからないのである。
本部を壊滅させたあの日以来研究所の動向は不明だし、『美少女』は攻めて来ないと出会えない。
「それで。カメリアはなんで俺らの予定を聞いたんだ?」
「あたしがみんなを呼んだのは、もう一つ目的があって」
「カメリアちゃん、なにかするの?」
「さすが察しがいいわね、ひなこ」
「それほどでもー」
カメリアに褒められて上機嫌のひなこを横目に、話を続けた。
「この間、初めてこの少女館に入館者が来たわ」
「こころを含め、『迷い子』たちだよな?」
「元、『迷い子』たちね」
「そうだな」
小さな違いかもしれないが、とても大きな間違いだ。彼女らはもう計画の道具でもないし、『美少女』でもない。
「それで、彼女たちが少しでも早く、ここに、そしてあたしたちに打ち解けられるように、親睦会を開催しようかと考えてるのよ」
「それはいい案だな」
「わたしも賛成だよ!ぜひしたい!むしろわたしからお願いするよ‼︎」
異様なひなこの食い付きは意味不明だし置いておいて、
「チームM.Mのみんなや寺都、門番はここで生活していくこときなるんだし、そういう場は必要かと思ったのよ。色々話せて仲良くなれるチャンスでもあるでしょ?」
「カメリアさん、お気遣いありがとうございます」
「私は一足先に彼女たちと接させてもらっていますが、それほど話したことがありませんので。とても良い考えだと思います」
「私は特に必要ないし。何かあったら呼んで」
「めぐ姉ちゃんもありがとって。ぜひとも参加するって」
「誰もそんなこと言ってない」
「顔が言ってたよ?」
「この——!」
どうやら他のみんなも異論はない様子。
「でもこれからやるなら準備とかどうするんだ?」
「それなら心配ないわ」
「?」
その場にいた全員が同じように首を傾げた。
それでもカメリアに連れられるまま本日の主役ともいえる彼女らがいる居住区へと移動し、そこの光景に今度は目を疑った。
通路は華やかに装飾され、少し奥へ行った住人の交流スペースである食堂にはケーキやらお菓子やらが並んでいた。
驚きのあまり、全員言葉を失っていると、どこからか破裂音とともに、紙吹雪や紙テープが飛んで来た。
それとともに、
「「「お姉ちゃん、お兄ちゃん、これからよろしくおねがいします!」」」
元気のいい声が聞こえてきた。