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AnotherWorld  作者: ♤Spade♤
第一章 〜ロストフィアー編〜
2/3

第二話 〜キラー〜

挿絵(By みてみん)

「「デュエルスタート!」」

 その掛け声とともにバトルが始まった。

 ミサトはナイフ使いで、左右で二本持っている。ナイフ使いはスピードが特徴的だ。しかしリーチも短く攻撃力もそこまで高くはない。片手剣の俺には都合がいい。

「ハァア!!」

 ミサトから先に突っ込んできた。

 しかし、長期間一緒に狩りをしていたのでここで突っ込んでくるのは想定済みだ。

 俺はそのままガードする。

 それからの連続攻撃をミサトは仕掛けてくるがそれも想定済み。回転斬り、しゃがんで足で攻撃からの回転斬り。全て予想通りだ。

 ミサトが縦斬りを敢行しようとした時、ハクトは動いた。

 ミサトの縦斬りをスラッと左前に避け、そのまま勢いで剣を横殴りに叩きつけた。

「あぐぅ!」

 よくこんなので勝負しようと思ったなぁ。

 俺は怒りを込めて容赦なくミサトに向かって走り出す。

「あぁぁぁァァアァアアア!!!!」

 走った勢いに乗って剣をミサトの胸腹部に向けて突き刺した。

「くそ…なんなんだよ…」

 目の前にパネルが現れ賞金と経験値がつぎ込まれた。なんでまた、裏切られるんだ。

「おい、あいつ見ろよ」

「パーティキラーだ。最低…」

「おいパーティキラーはこのサーバーにくんな!」

 周りのプレイヤー達が口々に俺を批判してくる。

「ち、違う!俺は仕掛けられただけだ!」

 しかし誰も聞く耳を持たない。

 あぁ…もうこのサーバーにはいられない。

 頭が痛い。

 俺は足早にこの場を後にした。


 ***


 この事件以来、俺はパーティを組まなくなった。もう裏切られるのはウンザリだ。こんな思いをするくらいならパーティなんて組まなくていい。かといって、今はそんなこと言ってる場合じゃないのだ。ここでくたばれば二度と帰ってはこられないのだ。

 俺がトボトボ歩いていると、少し向こうの方にゴブリンに苦戦している少女見つけた。

 近づいてみると、剣の使い方はほぼ初心者、いや完全に素人だ。

 俺は見てられなくなり、少女に襲いかかっているゴブリンに向かって斜め斬りを敢行する。

挿絵(By みてみん)

「剣を振るときはべらぼうに振っちゃいけない。空気を斬るように振るんだ。君はグチャグチャに振るから空気抵抗で攻撃できていないんだ。わかった?」

 少女はポケーっとしながら俺の顔を見てくる。しかし、俺はふと違和感を覚える。

「あれ、このゲームって17禁じゃなかったか?なんで子供が?」

 俺は疑問に思いながら言うと、少女は顔を膨らませて、

「これでも17だもん!」

 と、叫んだ。

「そっか、すまない。でもお前はまだ素人だからパーティにでも入っておいた方がいい」

 まぁ人に言えた義理かって自分に言ってやったよ。

「そ、それならあなたと…」

「すまない…それはできない」

 きっと言ってくると思った。しかし、さっきも言ったが俺はパーティを組みたくはない。

「俺はソロだ。パーティを組む気はない」

 しかし少女は諦めようとしない。

 正直、こいつはVRMMOは始めたばかりだろう。

「お願いです!私、まだRPGについてよく知らないし、この通り弱いですから、死んじゃうかもしれないし、急にこんな事態になってどうすればいいか分からないし…」

 まぁ無理もないだろう。RPGどころかMMO初心者の女の子がこんなデスゲームにいきなり参加させられて、右も左も分からない状態で放っておけば殺られるのも時間の問題だ。

 俺はやれやれ、と思いながら少女に向き直り告げた。

「分かった。普通なら断るとこだけどこの状況だ。素人は放っておくわけにはいかないしな。俺はハクト。お前と同じ17歳だ」

「私はヴィズ。よろしくお願いします!」

 ヴィズは俺の手を取って握手してきた。ヴィズはホッと胸を撫で下ろすと、さて、と姿勢を直すと口を開いた。

「あ、あの…パーティってどうやって組むんですか?」

 苦笑いしながら俺に助けを求めてくる。

 やれやれ、ホント素人だなぁ。

「メニューのしたら辺にある『party・creation』てとこあるだろ?それ押したら出てくるパネルに『IN』ってやつあるからそれ押して俺の名前を選択するんだよ」

 こういうのも悪くない。と、少し思った。


 ***


「リクト…」

 ヌール(零)は、デスゲームが始まってからずっとレベル上げに専念していた。

 リクト…大丈夫かなぁ…あいつのことだから死ぬことは無いと思うけど…

 狩っているモンスターは「ファンゴ」だ。イノシシ科のモンスターで、突進して攻撃してくるモンスターだ。

 ヌールが使っている武器は『ソニックスピア』。槍の武器だ。名前の通り、槍は持ちやすい構造になっており、左右の刃の重さで遠心力がはたらいて素早い攻撃を繰り出せるようになっている。

 ファンゴは突進しかできないモンスターだから、突進が止まったところを蜂の巣にすれば容易く狩れる。


「おぉ!ヌールっちぃペースいいねぇ!」


 後方で弓を打っている女性はリズというプレイヤーだ。

 使っているのは『シャイニングアロー』で、到達距離と速度に特化した弓だ。

「あの人見つからないね」

 ヌール達は狩りもしながらリクトも探していた。

「リクトなら大丈夫だよ。私より全然強いしさ」

「ヌールっちよりも全然強いって相当凄いんだねリクトって」

 そりゃそうとも。MMORPGを教えてくれたのも彼だし、私にRPGの基本を教えてくれたのも彼だ。私より強くて当たり前だ。

「どうする?そろそろ上がる?わっちもう疲れたよぉ〜」

「そうねぇ。ファーストギアに戻りましょ」

 なんだかんだでもう半日ずっと狩りっぱなしだ。疲れないわけがない。

 二人は武器をしまうと南東のファーストギアへと向かった。


 ***


「腹減ったなヴィズ。何が食いたい?」

 ハクトとヴィズはファーストギアの中央街にいた。

「そうですねぇ。肉とかいいですよねぇ。ん?あれなんですかハクトさん」

 ヴィズが指さす方向には『デュエル』と書かれたパネルがあった。

 そこはデュエルを見せ物とする場所だ。

「あっこはコロシアムみたいなもんだ。興味ない」

「ええー?ハクトさんなら勝ち間違いなしですよ!」

「褒めても何もでねえぞ」

 さっきは興味ないと言ってしまったが、正直に言うと他のプレイヤーがどんな感じなのかを調べておきたいので、

「ちょっと不本意だが…調べておきたいこともあるし出てみるか」

「そうこなくちゃ!」

 俺はヴィズを一度睨んでから受付嬢のいるカウンターへと向かった。

「デュエルスタジアムへようこよ!」

「選手登録はここですか?」

「はい!次の項目を入力して決定ボタンを押してください」

 開かれたパネルの項目を入力し終えると、

「もうすぐ試合ですので奥の待合室でお待ちください」

 いきなりかよ!

 そう心の中で呟いて、一回深呼吸をした。

 一体この世界ではプレイヤーはどんな戦法を使ってくるのだろうか、相手は誰だろうかと考えていたら、アナウンスとともに奥の扉が開いて光が差し込んできた。

「さぁ…行くか!」



「いやぁ、今日の試合は面白くないなぁ。わっちの方が強いんじゃないの?」

「さすがにそれはないでしょ。リズはアーチャーだし…」

 ヴィズと話していたら次の試合のアナウンスが聞こえてきた。


『それでは、今日最後の試合です!それでは選手入場!』


 そして扉が開き、選手が入場してきた。

「…っえ?」

 ヌールは西プレイヤーを見て驚愕した。


『東プレイヤー、シルバ!レベル350!』


「あいつってトップランカーのシルバじゃね?」

「すげぇ!」

「見たの初めて!」

 観客は東プレイヤーに注目しているが、ヌールが驚いたのは西プレイヤーの方だった。


『西プレイヤー、ハクト!レベル214!』


「決まったな」

「あぁ、決まった」

「シルバの圧勝に10万!」

 観客達はシルバに声援をあげ始めた。

 それも当然のことだ。シルバとハクトのレベルの差が100以上違うのだ。相当の手練れじゃなければハクトはシルバには勝てない。

 しかし、ヌールはハクトというプレイヤーの顔を見て驚愕した。

「っえ?!な、なんで、なんであいつが?!」

 ヌールは自分でもビックリするほどの声を出しながら口を抑えた。

「えっ?どうかしたの?確かにトップランカーに会えたのは嬉しいけどそこまで驚くところ?」

「な、違うって!そうじゃなくて!あの西プレイヤーの白髪の人!」

 そういうとヌールは西側にいるプレイヤーを指差した。それを見てリズはヌールが指差す方向に視線をそらす。

「ん?あぁ、あの白髪の人ね。その人がどうかしたの?確かにレベルは高いけど」

「そこじゃなくて!あの人だよ!私が何日も探していた人が!彼なの!」

 ヌールは必死にリズに向かって理解を求める。なんとか通じたようで、リズはハッとした顔になった。

「あぁ!あの人がぁ。なかなかかっこいいんだね」

「あー!リズなんか変なこと考えてないでしょうねぇ!」

 ヌールはリズの言葉の裏を読んで指摘した。

「いや、そんなことは…」

 図星のようだ。

 もう面倒なので適当にスルーしておいた。


『賭け金を選択してください』

「賭け金ねぇ…それじゃあ!』

 シルバはニヤリと笑い、1000万を選択してきた。その瞬間に観客達が大騒ぎだ。

 1000万と言えばもうちょっとした家が建ってしまう。そのような賭け金をシルバは設定したのだ。

「なら、俺も負けられねぇなぁ!」

 俺はゼロを押しまくった。

 そして出た数字は…

「い、一億?!」

「なんだよあの大金…」

 会場が一気に驚愕した。

 きっとこんな大金をかけたのはAWO史上初だろう。

 しかし、シルバは眉間にシワを寄せていた。

「なんのつもりだ。一億賭けるなんて…」

「なんのつもり?そりゃあ決まってるでしょ。だってたくさん賭けたほうが金も多く貰えるだろ?」

 このデュエルスタジアムは、勝った方が自分の賭けたゼニーの二倍のゼニーをもらうことができる。つまり、ハクトは勝てば2億貰えるのだ。しかし、負けた場合、賭けたゼニーは相手の物になり、相手の賭け金の二倍を自分で払わなければいけないのだ。

「てめぇ…調子に乗るのも大概にしろ!」

 シルバはそう言い捨て、背中に抱えてあった包帯で巻いてあった剣を取り出す。

「大剣…大門寺か…」

 大門寺。それは大剣というゲームで一番重い種類の剣で、動きが遅いが当たれば致命傷は避けられない。


『それでは、試合を開始します!』


 そして、会場がカウントダウンに包まれた。

「「3!2!1!」」


『スタートォォオオ!!』


「オォオオオ!!」

 先にしかけてきたのはシルバの方だ。

 シルバはそのまま剣を垂直斬りを行う。それをすかさずハクトはガードした。

「うお?!」

 その重さは想像以上だった。まるで三人からの垂直斬りを受けているようだ。

 それから、ハクトはシルバの攻撃をできるだけ避けたり受け流しながら戦った。

 シルバの攻撃は異常だとすぐハクトは悟った。それは、ここまで重い大剣を高速で降ってくるのだ。このままだと押し負けてしまう。

「おいおいどうしたぁあ?反撃しないのか?それなら一気にいかせてもらうぜぇ!」

 シルバの攻撃はまた速度を増した。ステータスの割り振りがパワーよりなのだろう。

 しかしハクトも押されているだけじゃない。ハクトはシルバの猛攻をかいくぐり、スライディングでシルバの背後へと移動する。そして移動するのと同時に剣を平行に滑らせ、シルバの足の切断を試みた。しかし、それは避けられてしまう。でも背後へと移動することができた。そこから一気に畳み掛ける。

「セェァァァアア!」

 なるべく斬ったところと違うところを狙う。大剣はこういうスピードの速い攻撃はガードしにくい。

 そのままシルバは後ろに押しのけられ続けた。だが、途中で横に回避され、ダメージは与えられなかった。


「う〜ん!凄い戦いだねぁ!最初はシルバが勝つと思ってたけどこれは分からないぞ?」

 ヌールは静かに戦いを見守った。そして気づいてしまった。

「シルバって人、プレイヤーキラーだよ。プレイヤーに対して大剣を自由自在に操るのは至難の技だ。それを何分も平然とやってのけている。

「リクト…お願い…」


 それからも二人の激闘は10分も経過していた。

「ハァ…ハァ…なかなかやるな小僧…」

「ハァ…お前…だって…いい腕してるぜまったく…けど…」

 ハクトはもう気づいていた。彼がプレイヤーキラーであることに。

「プレイヤーキラーとは感心しないなぁ。その大剣の対人戦闘はそう簡単にできるものじゃない」

 大剣はモンスター狩りにはうってつけだが、対人戦闘となると扱いが難しいため、不向きとされていたが、シルバはそれをもいとも容易く使いこなした。

「お前はプレイヤーキルをし続け、そこまでレベルを上げた。プレイヤーキルの方が経験値は上がるからなぁ」

 プレイヤーキルはボスモンスター並の経験値が貰えるのだ。そうなればなにもかも辻褄が合う。

「俺はお前を倒す。そしてお前に倒されたプレイヤーの分まで、俺は戦う!」

「かっこいいこと言ってくれるじゃねぇか。だが、お遊びはここまでだ。そろそろ本気で行かせてもらうぜ!」

 シルバは再び剣を構えた。

 俺も剣を構えると、あるスキル名を口にした。

「スキル…スローアイ」

「せぇェアア!」

 シルバは一気に突っ込んでくる。だが、

「っな?!」

 ハクトはその攻撃をスラリとかわし、そのままシルバに回し蹴りを入れる。

「うぐぅ?!」

 シルバは2メートルほど吹っ飛び体制を崩す。ハクトはそんなシルバに容赦無く接近し剣を振りかざす。

「うぉぉォォオオ!!」

 ハクトは体制を崩しているシルバに対して一気に剣で斬りつける。それは永遠に続いたかのような光景だった。その連撃の数およそ20ほど。

 シルバはそのまま何もできず、KOとなった。


『勝者、ハクト!ハクト選手には賞金2億1000万ゼニーと、賭け金1億超えの賞品氷黒剣が贈呈されます』


 そして今日一番の歓声が沸き起こった。

 ハクトは賞品を受け取ると、足早にそのスタジアムを後にした。


 ***


「いやぁ!ホント凄いですよハクトさんは!あのトップランカーまでも倒してしまうなんて」

「マグレだよきっと。それと最後は感情にまかせただけさ。あと、どうするこの大金…なんか美味いものでも食いに行くか!」

 そういいながらハクトはファーストギアのオススメの店へと向おうとした。その時、


「ハクトさん…」


 後ろを振り向くと、二人の女性が立っていた。

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