現代詩 赤ペンの呪い
赤ペンの呪い
現役時代は赤ペンや赤の鉛筆を売ってはいたが
自分では赤ペンや赤鉛筆を使うことは決してなかった。
赤ペンや赤鉛筆で字を書くと赤い字が書けるが
それがいけなかった。
赤い字は赤字に繋がるから
セールスマンや商売人は
赤字に繋がる赤ペンや赤鉛筆は
余程でない限り使わなかった。
この場合の赤字は
会社の経営に関わる赤字である。
赤字決算
赤字会社
赤字会計
と言う具合に
赤字は企業にとって悪いイメージしかない。
だから赤ペンや赤鉛筆は売っていたが
極力それらを使わないようにしていた。
ところが現役を退くと
赤字に関する呪いも解けた筈なのに
自分が書いた小説や詩の校正をするとき
赤ペンを使わずに
ブルーブラックのインクのボールペンで
校正するが
出版社の人は容赦なく赤ペンで
校正してくる。
実際気が悪い。
現役を退いたのに未だに赤字の呪いが解けずにいる。
でも最近自分で原稿を校正するとき
赤ペンで校正するようになった。
渋々ではあるがこの業界の習わしに慣れてきた。
でも心の中までは
赤字の呪いはとけてはいない。
困ったものだ。