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第2話 「レイド・アリエスの矛盾」

 グリエルという小さな王国の、さらに地方のアリエスティア。そこが俺の生まれた場所で、俺の親が治める地域の名前だ。

 俺の名前は、レイド・アリエス。

 その地方の領主を務める、アリエス家の4男だ。


 とは言っても、地方領主の4男など、特に凄いことなどありはしない。そもそも、領主たる親父からして、領内の村人と一緒に開墾などをしているほどだ。これが都市部の貴族だったらまた違うのだろうが、せいぜい少しだけ豪華な食事にありつけるのが地方の限界だ。 

 そんなわけで、俺も15までは村人と一緒の学校に通い、生活していた。


 生活するうえで、まず気になったのはハーレムチートを弄ったとか言うリヴィエラの言葉だが、実際のところよくわからない。いや、近隣の村の女の子たちは、俺に優しくしてはくれるが、どうもハーレムと言うほど行為は見せてくれないのが問題ともいえる。

 けれど、確かハーレムチートの説明に、“特別な異性にほど好かれる”といった文があった気がするので、ヒロイン属性が高い女の子に反応して、村の女の子たちの様な有象無象――所謂“モブ”には反応が薄いのではないかと思っている。


 だからというわけではないが、生まれてから15年間は、まったくもって平穏だったと言えるだろう。






 さて、俺は転生者だ。

 ハーレムチート以外に特殊な能力は持ってはいないが、前世の知識というものを持っている。病院にこもりきりだったから、人間関係などには疎いが、本はよく読んでいたし、勉強もしていた。なので、様々なこと――特に、勉強に関して要領が良かった。6歳から通っていた領内の学校での成績は1番だったし、親父に軽く教えてもらった領地経営の話も割とすんなり理解できた。ほんの一部で天才児と噂もされた。

 そして、その話をどこかから聞きつけてきた、親父の旧友だという王国の重鎮が、俺に学園都市国家『ソフィア』への入学を薦めたのだ。


 ――学園都市国家『ソフィア』は、学校が領土、学生が国民、校則が法律という、学園そのものが国という、特殊な国家だ。

 世界中の国々から学生や教師を招き入れ、あらゆる分野に精通した教育機関が存在し、全てに対して“教育”という中立を掲げる。

 “義務教育である初等学校を卒業した後、その先を学びたいのならば、ソフィアに入学しろ”、グリエル王国ではそんなことも言われており、実際、国内に初等学校以外の教育機関はほとんど存在しない。


 俺がその薦めを受けた時、少しだけ迷った。

 アリエスティアも、いいところだ。4男だから自分で仕事を見つけなければならないとはいえ、初等学校主席ならば役所にもはいれるだろうし、それに、幼馴染なんてのもいたから、その子と結婚するのだろうかなんて思いもした。


 けれど、その思いはすぐに消えた。

 俺は転生者で、ハーレムチートを持つ者だ。このまま普通に生きていたら、何のためにこのチートを得たのかわからない。

 もっともっと、楽しいことがしたいと思った俺は、肯定の返事をした。


 そして、あれよあれよという間に準備が終わり、この学園の普通科に入学したのが1年前。その時はまだ、初めての場所に、浮かれていた。






 ソフィアは、国としてみれば、その大きさはかなり小さい。前世の例として挙げるならば、ヴァチカン市国のようなものだろうか。ただし、1つの学園として見るならば、それはとてつもなく巨大な学校だ。さらに、建物も上に下にと伸びていて、人口密度など、グリエル王国とは比べるべくもない。

 必然として、俺は入学初日から迷子になった。


 見知らぬ場所で、目的の場所がどこにあるかもわからず、完全にテンパっていた俺は、人に道を尋ねるということすらも思い浮かばずに、右往左往していた。しばらく歩いた先、辺りに見えるのは、ロンドン塔の様な高い建物に、コロッセオの様な広い闘技場っぽいもの。あとは、何やら禍々しい雰囲気を発している洞窟がある。


「ほんとにここ、どこだよ……」


 世界遺産ツアーのような光景に辟易していると、とん、と軽く人とぶつかってしまった。


「あ、すみません。大丈夫?」


 という俺に対し、凛とした声が聞こえる。


「……いや、私もよそ見をしていた。すまない」


 黒い艶やかな髪まとめてポニーテールにし、どこか和風を思わせる衣装に身を包んだ綺麗な女の子。それが、声の主だ。

 前世の日本ならば大和撫子といった言葉が似合いそうな彼女に、俺はしばし見とれてしまっていた。仕方がないだろう。美少女なのだから。


 けれど、いつまでもそうしているわけにもいかない。彼女が怪訝な顔をしてきている。確かに、初対面だとしてもじっと自分の顔を見つめられるのは嫌だろう。

 頭の奥からリヴィエラの、変態ですね、という声が聞こえた気がするが、それは記憶の彼方に放逐する。


「君、ここの生徒?」


「……そうだが、ここは学園都市国家だ。むしろ学生以外の方が少ないだろうな」


「あー。それもそうか」


 少しきついことを言われた気がしないでもないが、彼女の口もとはむしろ綻んでいるように見える。口調が厳しいだけで、性格自体は温厚なのだろうか。

 だからというわけでもないが、努めて親しげに、俺は彼女に話しかける。


「じつはさ、俺、迷子になっちゃっててさ。もしよかったら道案内をお願いできないかな?」


「……む……」


 彼女は眉間にしわを寄せた。何か気を悪くするようなことでも言ったのだろうか。初対面から好感度マイナスか?

 ハーレムチートはどこに行ったと抗議したくなる。


 だが、真相は違うものであり――、


「……実は私も、迷子なのだ」


 お先真っ暗の2人組が出来上がった。


 




 この後、俺たち二人の目的である中央校舎を探しつつちょっとした事件に巻き込まれたりするのは、また別の話として、これが俺と彼女――トウジョウ・イズミとの出会いとなる。

 もちろん、俺は浮かれていた。

 入学前日、道に迷った先で出会った美少女と一緒に事件に巻き込まれて、仲良くなるなんて話、まさにラブコメの鉄板だ。病院のベッドでこんな感じの小説はよく読んだ。むしろ食傷気味ともいえる。しかしそれこそ王道だ。

 そんな、テンプレな出会いだからこそ、俺は一層心を躍らせた。そんな都合のいい出会い方、まさに“ハーレムチート”と呼ぶに相応しいのではないかと。それはつまり、俺のハーレムライフが今ここから始まるのではないか、と。


 そして、翌日。入学式。

 俺はアルビニアという大国の王女によって、再度事件に巻き込まれた。詳細は省くが、結果、リーンベル=エリシア・ロビングッドフェロウ=アルビオンというアルビニア王国第1王女をハーレム候補として迎えることになった。


 そして、俺は”ハーレムチート”が本物だと確信した。そして、この先、素晴らしいハーレム王への道が開かれるのだと信じていた。

 ――しかしと言うべきだろうか、俺はハーレムを舐めていた。






 一週間後に、勇猛果敢で故郷の国でも名を馳せていた将軍の娘(武闘派ツンデレ)と一悶着あり、これをハーレム候補に加えた。さらに2週間後、学園始まって以来の天才魔女と呼ばれた先輩(淫乱ピンク)に拉致られ、これをハーレム候補に加えた。その1月後、元Sランク冒険者のパーティに所属していたというエルフの教師(貧乳)の家に居候するという変事が発生し、以下同文。

 そして入学から2月ほど経ったころ、当然のように、ハーレムは軋みを生み始めた。


 さて、ここで一つ考えてもらいたい。ハーレムに必然なものとは何だろうか。

 それは、嫉妬と不平等だ。

 俺を好いてくれる女の子は5人だが、俺の身は1つしかない。そうすると、一人当たりのデート時間は短くなるし、それによって不満が高まり、今まで許容できたことも許せなくなる。

 例えば、ある女の子と買い物をしていたとしよう。それを別の女の子が見つけると、まず初めに突き刺さるような視線が感じられる。その後、バレバレな偶然を装い、その女の子も買い物に加わろうとする。けれど、先に買い物をしていた女の子は当然反発する。口論が始まる。だんだん過激になってくる。俺が口を挟もうとしても一蹴される。だんだん胃が痛くなってくる。ストレスで胃がマッハだ。


 そんな感じの事柄が続き、けれどもハーレム要員の女の子が8人を超えた、入学から半月後。

 遂にかようやくか、俺はハーレムチートを手に入れたことを心の底から後悔した。


 そして、俺は再びリヴィエラと邂逅する。






 その日、いつもの騒動によって疲れ果てて寝たはずの俺は、見覚えのある白い空間にいた。小型のソファに、漫画にサターンも、変わらずそこにある。

 そして、相変わらず属性過多の神もそこいた。

 

「ハーレムを満喫していますか、剣司さん?」


 こちらに話しかけてくるのは、巫女服の幼女。

 普段の俺ならばここで、今の俺の名前はレイドだ、とか合いの手でも入れるのだろうが、あいにくこちらも余裕がない。


「これはお前の仕業か、リヴィエラ!」


 声を荒げ、危うく掴みかかりそうなほど、俺は怒っていた。

 心身ともに疲弊している俺の現状。それが、リヴィエラが俺のチートを弄ったことが原因かもしれないからだ。


 その気持ちを知ってか知らずか、リヴィエラは淡々と言った。


「わたしの仕業、ですか。……そうとも言えますし、そうでないとも言えます」


「なんだそりゃ。どういうことだ?」


「説明しますので、ちょっと待っててください」


 俺の荒い声を気にしない風に話すリヴィエラに、少し毒気を抜かれる。頭に血が上っていた。ちょっとばかし落ち着きがなかったか。


 深呼吸し、座禅を組み、素数を数えて落ち着いているうちにリヴィエラの準備が終わったようで、サターンのディスプレイが表示される。


「準備できたか。……と、さっきはすまなかったな、つっかかって」


「おお、剣司さんも素直に謝れたんですねー」


「俺は純真無垢な青少年だからな。腹黒なお前とは違うんだよ」


「そんな幼気な少年は私の胸をチラ見しませんよ」


「……それは、あれだ。男の条件反射」


「で、剣司さんの現状を説明するとですね……」


「無視すんなや!」


 よし、いつも通りの俺だ。この場所の空気もどこか緩やかになった気がする。流石俺。伊達に『ソフィア最狂の愉快犯』とは言われていないな。

 というわけで、本題に入る。


「そもそも、私がチートにどんな細工をしたかを話しましょう」


 どこからか持ってきた眼鏡をかけたリヴィエラは、指示棒をもってディスプレイ上で説明を始める。


「俺の現状――つまりは、ハーレムチートの過剰駆動だって勝手に俺は思っているけど」


「いい線はついてますね。では、そもそもハーレムチートの通常駆動はどうなのか、と言いますと、それこそエロゲーの主人公というお話は前にしましたよね?」


「まあな。無条件で異性に好かれる能力と、ご都合主義のような展開って認識でいいか?」


「That’s rightですよ。では、ハーレムチートを持って生活していた15年間。不思議に思ったことはありませんでしたか?」


 手に持った指示棒を俺の方に向けてくる。やめなさい、危ないから。

 というか、巫女服教師も新しいな。


「不思議に思っていたこと、ね。ソフィアに入学する前はハーレムチートが機能していたと思えないんだけど、それか?」


「それです。ハーレムチートの発動下限を上げました」


「だから、俺の故郷の女の子たちでは反応せず、ソフィアでのヒロイン力高い厄介美少女達に激反応したってことか」


「正確には、まったく反応しないわけではなく、びっみょーな好意は発生していたとは思いますけどね」


 ああ、憶えがある。よく俺にお菓子とか持ってきてくれたっけ。領主の息子だから気を使ってくれたのもあるだろうが、一応チートも機能していたのか。

 ……それはそれでいやだなぁ。


「……で、それプラス、好意の上限を取っ払いました。下限上昇と合わせて、チート性能をピーキーにしたっていえばわかりやすいでしょうか? これが一つ目の改造です」


 ピーキー性能、か。

 ハーレムチートの過剰駆動っていう俺の予想と、大体同じようなものか。

 と、今、リヴィエラは聞き捨てならないことを言わなかったか?


「おい、1つ目ってことは――」


「はい。2つ目もありますよ?」


 リヴィエラは心底楽しそうな顔でそう言う。

 それから察するに、2つ目の改造こそが厄介そうであった。


「さて、私がさっき言った、ご都合主義とは何だと思いますか?」


「文字通りの意味じゃないのか? 都合がいい。運がいい。矛盾を許容するとか?」


「ハーレムにおいてどんなことが言えますか?」


「ハーレムとして? ……偶然にしては出来すぎな出会い、男が女性同士のいざこざに気づかない、もしくはそれ自体が起きないとか、それこそ不満や不平等がないとか……もしかして!?」


「はい。ご都合主義の限定化。それが2つ目の改造です」


「排除じゃなくて限定化っていうのは?」


「出会いに関してはご都合主義が働いています。記憶にありませんか、そういうこと?」


 探そうとしなくても勝手に思い浮かんでくる。イズミとの出会いに始まり、彼女らとのファーストインプレッションはどれも偶然過ぎて出来過ぎていた。嬉しい記憶であると同時に地獄の始まりだったから、脳みそがよく憶えていてくれた。


「なるほどな。言われてみれば、確かに納得できる。……つまり、完璧100%お前が原因じゃないか!」


 下限を上昇させたから普通の女の子にはチートが機能しない。上限を取っ払ったから行為に歯止めがきかない。ご都合主義を排したから、ハーレムがドロドロしてきている。俺への被害も甚大だ。さらに出会いにだけは補正がかかっているため、女の子はどんどん増えてくる。もはや、リヴィエラのせいじゃなかったらどうやってもこんなんならんだろ。


「いやですね、私も、こんなんなるのは誤算だったわけですよ」


「嫌がらせ目的のチート改造じゃなかったのか?」


「それもそうですが、そもそも、剣司さんにはこの世界である程度の成果を出してもらわなければなりませんでしたので、あんまり悪いようにはしないつもりだったんですよ? それこそ、ちょっと胃に穴が開けばいいかな、くらいにしか」


「ちょっとで胃に穴をあけられてたまるか!」


「まぁまぁ、落ち着いてください」


 小型冷蔵庫から薄い麦茶のような飲み物を出すリヴィエラ。俺はひったくるようにそれを受け取り、喉を潤そうと一気に煽るが――、


「ぶえっふ、うぇ、ごほっ…………なんだこれは!」


 見た目は麦茶だが、杏子のようなどこか甘い味がする上に、ソーダのように炭酸が効いている。それ単体では不味いわけじゃないが、お茶と思って飲むとどうにもやばい。


「ペプシ・バオバブです」


「なんでそんなもんが冷蔵庫に入ってるんだよ」


「こういう時のためにですよ」


 そんなことのために入れておくものじゃないと思う。いや、これの製造元も十分頭おかしいが、それ以上にコイツの頭もやばい。


「ですが、ちゃんと確かめなかった剣司さんの責任でもありますよね?」


「それはそうだが……」


 確かにリヴィエラは一言もお茶だとは言っていなかったので、渋い顔をする俺だ。

 いや、だまされるものか。罠は引っかかった方じゃなく仕掛けたほうが悪い。


「ですが、私もそれをお茶だと間違えて剣司さんに渡した場合はどちらが悪いのでしょうね?」


「そんなことがあるかどうかはともかく……どっちもどっちだと思うぞ?」


 俺の言った言葉に、待ってましたとばかりに飛びつくリヴィエラ。

 いやな予感を覚える俺を尻目に彼女は眼鏡をかけ直す。


「今回のことはまさにそれです。――まさか、剣司さんにこれほど甲斐性がないとは思わなかったんですよ」


 リヴィエラは、天啓を得たように、神のお告げの様に、それが心理であるかのように、俺を貶す言葉を堂々と言った。


「な――」


 絶句する俺に、さらに畳みかける。


「出会いは能力任せ。デートは女性主導。妄想はするくせに自分からは手を出さず、念願のハーレムを手に入れても5人程度で女の子の手綱も握れない。そんな覚悟で、ハーレム王に俺はなる! とか言ってたんですか?」


「いや、そんなこと言ってな」


「ともかく。確かに私はチートを改造しましたが、それでも性能をピーキーにしただけの事。それを使いこなせないのは剣司さん自身ですよ!」


「――――――」


 反論が、出来なかった。

 いや、ちゃんとチートが機能していれば、ハーレムはうまく回っていたと言うことは出来る。

 ご都合主義がうまく働いてくれれば、いざこざは起きず、俺も被害を受けることはなかっただろうし、下限が元の通りならば、“ソフィア”に来る前にある程度慣れて甲斐性のようなものも形成されたのではないかと思うし、リミットを外さなければ、今のような過激な状況にはなっていない気がする。


 そういう考えが頭に浮かんで、やっと、俺は矛盾に気づいた。

 そう。一番初めからの矛盾だ。

 俺がハーレムチートを選んだ理由。それは、面白い恋がしたいというものだった。けれど、そのためにハーレムチートを選ぶことが間違いだったのかもしれない。

 ハーレムをつくるチート。そんなものに縛られて、本当の恋愛が出来たのだろうか。――出来るわけがない。好意がどう転ぶかわからないから、だからこその恋愛だ。


 けれど、もう後戻りはできない。俺はこのチートと一生付き合っていかなければならないだろう。リヴィエラが、チートを除くことをしてくれるとは思えないし、俺もする気はない。


「する気はありませんし、許しもしませんし、何より出来ませんね。チートは魂と密接に絡まり合っているので、まぁ、外すとしたらもう1回死ぬしかないでしょうね」


 2度も死ぬのは御免なので、ノンチートという選択肢は完全に消えた。

 ならばと言おう。


「このチート。ハーレムチート改造版。都合主義を省いたこれは、出会いのためのチートだと思う。華麗で、壮絶で、厄介なヒロインと出会うチートだ。そして、その後どうなるかは俺次第。だから、さ。……俺は、このチートでしかできない恋をしてみせるよ。俺だけの恋愛をしてみせる」


 1人、勝手に納得して、盛り上がっている俺を、彼女はどう見ているのだろうか。

 ただ、真顔で俺を見ている神様。彼女の言葉がきっかけでこの答えに至った。その言葉は、本当に俺を乏しめるものだったのか、それとも、このことを気づかせてくれるために放ったのか。

 ……リヴィエラなら、前者の気もするけど。


「ま、ありがとう、リヴィエラ。なんかやる気出てきた」


「……ふぅ、まったく。いっちょまえにかっこつけてくれますね」


 そう言うリヴィエラの顔は、少し前と違って不機嫌そうだ。眉間にしわを寄せ、唇をとがらせている。

 けれど、どこか嬉しそうというのは俺の願望だろうか。


「……む」


 と、さらに表情を険しくしたリヴィエラが、俺の胸ぐらを掴み、自らの方へと引き寄せる。身長差があるため、もともと上向きだったリヴィエラの顔と下向きだった俺の顔が近くなる。

 いや、これ普通に恥ずかしいわ。


「でも、ま。……頑張るようですから、神としても応援しなきゃダメでしょうね」


 そう言って、彼女は目を閉じて――、


「あなたに、神の加護を」


 キスをした。


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