第3話 うそ、同い年?
シオン「埋めたった。」
メガミ「(爆笑)」
シ・クロネ「『……』」
女神による転移の光が紫苑の視界を覆っていく中、ふと思った。
流れで何と無く連れて来てしまったが、こいつをどう説明しよう…。いや、別に連れて来たことに後悔はない。だが、いきなり、史上最凶だとか言われてるモン持ってきてはいい顔されないだろう。
そもそも、意思がある剣ということ自体、どれだけ信じてもらえるかどうかあやしい。紫苑自身は異常事態の連続で、「ファンタジーならこんなもんだろう。」で片付けてしまったのでなんとも言えない。
そうこう考えている内に視界が開けていく。
『色々、面倒くさそうだから引っ込んどくね。』
と、そこでクロネの声が頭に響くと同時に、剣を握る感触が消える。理屈は分からないが、どうやら空気を読んでくれたようだ。なので、「サンキュ」
と、小声で呟くと顔を上げる。
そこで見たのは、豪華な椅子に座った偉そうなおっさん(多分、王様)と紫苑と同年代くらいの男女3人だった。
そこにいた男女3人は全員、革の鎧?の下に麻で作った様な簡単な服を着ていた男1人と女2人の組み合わせだった。(あれ?よく見ると、いつの間にか自分も同じ格好だった。さっきまで部屋着だったのに!)
男の方は、高い背(180くらいはありそう)に端整な顔立ちにいかにも体育会系のがっしりとした身体つきが(革の)鎧越しでも何と無く分かる。少し羨ましいが頼りになりそうって感じの男だ。表情が豊かなのだろうか、俺の登場におぉー、と少々オーバーリアクションしている。
その隣の女2人は、片方はウェーブがかかったブロンドの髪が特徴的で、顔立ちも恐らく、10人いても最低9人は完全に見劣りしそうな位の美人である。しかも、かなり凹凸がハッキリしているのが少々遠目でも分かる。そして、仕草も見た目に合った上品さがあるが、満面の笑みで新しい仲間の来訪を喜んでいるため、明るい人間だろうということが見て取れる。
もう1人は、日本人女性の平均身長と同じ位(約158㎝)だろう。しっとりとした黒髪は肩より下くらいまで伸びている。表情は無表情という訳ではない様なのだが、乏しいようで俺の登場にも若干おっ、という顔をした以外特に変化はない。しかし、そういった感じが様になるような美人でもあるため、欠点に成り切っていない。
と、そこでブロンドの子が寄って来たので思考を一旦停止する。
「何かここまで大変だったみたいだけど、もう大丈夫だよ。お姉さんがついてるから。」
そういって立派な胸を強調するかの様に体を反らす。
対する紫苑はやっぱりか…、と内心ため息を吐く。因みに脳内では、クロネが爆笑しているため若干の殺意を覚える。クロネに。
ここまで1回も触れていなかった紫苑の容姿について説明しておこう。
風見紫苑は高校2年生16歳だ。だが、アンダー160という低身長で、もしかしたら、黒髪の女子にも負けているかもしれない。しかも童顔であるため、高2にも関わらず基本中学生に間違われ、下手をすると小学生に間違われる。声も変声期であまり変わらなかったのも原因の一つだが。
その為、ブロンドの子の発言は、仕方ないといえばそうかもしれない。それに、先ほどの全員の容姿の印象に身長から入ったのはそのコンプレックスがあるからだろう。
だが、訂正はする。この手のやり取りが面倒で最近は訂正をしていなかったが、ここはしっかりしておいた方がいいだろう。
「一応俺、高2なんですが…」
「……、うそ…同い年?」
ブロンドの子の表情が凍り付く。今まさに、よしよし、と頭を撫でようとしていた手が固まる。
背後では、体育会系の男子と、黒髪の女子が程度の差はあれど驚いている。
「うぉっほん‼︎」
王様を無視してそんなやりとりをしていると、宰相っぽい人が咳払いをする。
それを聞いて振り返る一同。それを見た宰相っぽい人は、「姿勢を正せ!この方はブリテニア王国、国王エドワード・ハイクス王であるぞ!!」と叫ぶ。
ここに来るまで何度か言われたのか、慌てて横一列に並び、気をつけをする3人。紫苑も何と無く流れに合わせて姿勢を正す。
「よいよい、楽にせい。宰相よ、自己紹介くらい自分でさせてくれ。それに此奴等は客人じゃぞ?多少の無礼くらい目を瞑ってやれ。全く、何度言えばわかる。」
偉そうなおっさ…じゃ無くてエドワード王様が朗らかに笑って言うので姿勢を崩す一同。
「このやり取り実は4回目なんだぜ?」
「マジかよ…」
そう、男が紫苑に小声で耳打ちするのでそう返す。
「あと、そこの端の者。無理矢理喚んだ上に何やら手違いがあったようで申し訳無い。後で詫びよう。」
「いえ、滅相もございません。」
朗らかに笑いながら言うエドワードに紫苑は下手に返すと、宰相が何か言いそうだったので無難に返しておく。
「あと、聞きたい事は山ほどあるじゃろうが、いかんせん時間が無いのでな大まかなところは、そこの者たちに教えてある。悪いが、後でその者たちに聞いてくれ。」
「…はい」
知りたいことが分かるなら別に良いので大人しく従う。
「さて、ようやく全員揃ったところで大事な事を教えてくれんかの?…御主らのステータスを。そこの…ヒナギクと言ったか?貴様から順に頼む。」
「はい」
あらかじめ、説明を受けていたのだろうか。名前とステータスをすらすらと読み上げていく3人。
雛菊 鈴レベル1
職業:魔法師
HP:500
MP:950
攻撃:250
防御:100
敏捷性:300
水戸 五月レベル1
職業:アーチャー
HP:450
MP:450
攻撃:400
防御:330
敏捷性:520
仙崎 龍太レベル1
職業:戦士
HP:780
MP:180
攻撃:650
防御:520
敏捷性:200
ボーナスポイントによるスキル補正はしてあるそうだ。
因みに職業については、スキル取得前に表示され選びその職で取れるスキルが表示されるのだが、紫苑の場合はクロネがいたので強制的に決まってしまっていた。紫苑は後でクロネにその事を聞いて肩を落とした。
そして紫苑の番が来た。
風見 紫苑レベル1
職業:剣士
HP:500
MP:450
攻撃:400
防御:400
敏捷性:750
「うむ。なかなかの粒が揃っておるな。」
「では、次へ参りましょうか。」
エドワードが頷くと宰相が次へと促す。
「では、手数じゃが、《勇者の証》を刻むので宰相について行ってくれ。」
「では、こちらへ。」
宰相について行き王の御前を後にする紫苑達。
すみません相当遅くなりました。m(._.)m
※宰相のセリフを変えました。