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天罰戦線の殺神者  作者: 有栖
第四章『道化師型』
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第9話『ロベルトの過去』

「すぅ…。」


穏やかな寝息を立てながら、フェリスティナは紬の膝に頭を乗せて眠っている。


満腹になって眠くなったようだ。




そんなフェリスティナのことは気にせず、ネギを頬張りながら紬はロベルトに話しかける。


「ロベルトさんはユウイチさんと仲がよかったんですか?」


「まあほどほどだな…。単にお互い同じ部隊にいる時間が長かったというだけだ。」


「それにしては農場で親しげでしたよね?」


「いや、あいつが勝手に来ていただけだ。」


「そうですか…。」


そこで、紬はふと気になることがあり再度問いかける。


「ユウイチさんとロベルトさんはいつからAGFに?」


「ユウイチは設立当時から。俺は二年目からだな。」


「そうなんですか…。」


そこで、ロベルトがまっすぐ紬を見ながら問いかけてくる。


「紬、お前はどうしてAGFに入った。」


「俺は…家族の仇をとるために…。」



そう言って、紬は語る。

天罰の日の出来事や、記憶のことを。


紬の話を目をつむり、腕を組みながら

聴くロベルト。


紬が語り終えるとゆっくりと目を開き、一言「そうか…。」ともらす。


「お前も苦労をしたんだな。」


―もってことはロベルトさんも…。


少し尋ねるのは憚られたが、恐る恐る問いかける。


「ロベルトさんは、どうしてAGFに?」


「話すと少し長くなる…。」



そう前置きして語り始める。


天罰の日以後の日々を…。




***



―俺は、留学生としてここ日本に来て、そのまま日本で働いていた。

そのなかで妻の家に婿に入り、二人の娘に恵まれていた。


「パパー!お年玉ー!」


「まだ新年じゃないぞ。もう少し待て。」


―そこそこの収入があり、家族仲もいい。あのころは幸せだった。当たり前の、ありふれた幸せの中にいた。


「あなた、そろそろ年越しそばの準備を…」


「ああ、そうだな…。」


ロベルトはこたつから出て、台所へ。


「パパー!早くしないとお正月だよー!」


「だよー!」


催促するように子供がそう言う。


「ああ、ちょっと待て!今から持っていく!」


家族のぶんの年越しそばを持ち、再びこたつのほうへと向かっていく。



「新年まであとさーん!」

「にー!」

「いーち!」



子供の無邪気な声が響く。


『ゼロ!』


子供は顔を見合わせて満面の笑みを浮かべる。



『明けましておめでとー!』


「よし、お前ら!そばとお年玉だ!」


『やったー!』


家族の笑顔に満ちたありふれな正月。


だが、確かにそこには幸せがあった。



***




「あのころは本当に幸せだった…。」


ロベルトは懐かしいものを思い出すように、しみじみと呟く。


「だが、あの日の明け方。ちょうど家族が寝静まり、俺は水分をとるために少し起きた。その時だったな…。」





***


チカッと外が輝いた。


「なんだ…?」


不思議に思って窓の方へ近づいて行くロベルト。


だが、一歩動いた瞬間、彼の耳を轟音が打つ。


「おおおっ!?」


断続的に続く轟音。

どこかで火の手が上がったようで、赤い光も見える。



「あなた!どうしたの?」


ロベルトの妻が慌てて降りてくる。


「わからん!だがやばそうだ!」


ロベルトは、慌てて寝ている子供を抱えると、家族を車に乗せてエンジンをかける。


「どうするの?あなた…。」


妻が不安そうな声を上げる。


「わからん…。」


と、ラジオが声を吐き出し始める。


『一般の皆様は至急、名古屋まで避難してください!至急、名古屋まで避難してください!』


「名古屋…。」


彼らは浜松に住んでいた。


「とりあえずこの街を出ないことには始まらないかっ!」



車を出し、国道に乗る。


だが、


「くそ…。」


道路はズタズタに引き裂かれていた。


「本当に何が起きているんだ…。」


大きな力で無理矢理裂かれたような地面。


自然災害とは到底思えない。


辺りにはひっくり返った車や、呻く人々。


見回してみると砕け散った家々に、燃え上がる街。


まさに地獄絵図のようだった。


「くそっ!」


ロベルトはハンドルを切り、下道の方へ向かう。



その時、先ほどまで避難情報を吐き出し続けていたラジオの声にノイズが走り始め、ザーーーーッという音に変わる。



「おいおい、どうしたんだ!」



『あー、あー、人間諸君。現在我々神は、人類を滅ぼさんと活動を開始した。』


と、ラジオから再び声が流れ始めたが、到底理解出きる内容ではない。


「神、神だと!?」


『お前たち人類はもう終わりだ。そして、お前たちのこの街を滅ぼした我が名はアレス。冥土の土産に覚えておくがいい。』


よく見ると、空を古代の戦車が走っていた。



戦車を中心に半円状に光の線が描かれると、それに呼応するように地面が裂ける。


まるで巨大な何かに切り裂かれたように。



『ふははははっ!精々逃げ惑え人間ども!はははははははっ!!!』


そんなアレスの高笑いを聞きつつ、ロベルトは無我夢中で車を走らせる。




***


「そして俺たちは地獄のようなあの街を抜け出すことができた。」


「じゃ、じゃあ!」



―みんな助かったんですか!




そう言おうとしたが、ロベルトの言葉に遮られる。



「だがっ…!ここからが本当の地獄だった…。」


「本当の…地獄?」




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