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天罰戦線の殺神者  作者: 有栖
第五章『もうひとりの仲間』
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第13話『歓迎会』

-2527年7月16日-AGF極東支部第2階層-階層移動エレベータ前-


訓練場を後にし、燐に指定された場所にフェリスティナと共に向かう。


「紬さん紬さん!!歓迎会の料理はなんですかね!?」


「うるさい!あと近い!!」


ぐいぐいと顔を寄せてくるフェリスティナを手で押して遠ざけつつエレベータを降りる。

そんなふたりを苦笑いしながら見つめ、燐が声をかけてくる。


「仲がいいな君たちは…。さあ、みんなはもう先に行っている。早く行こうじゃないか!」


そう言うと、ふたりを誘導するように歩き出した。


-同日-AGF極東支部第二階層-居酒屋-


「あっ、紬君たち来た!!遅いぞーっ!!」


宴会場に入ってきた紬たちを発見し、レイが声を出す。


「主役と隊長様は上座だよーっ!」


そう言ってレイは立ち上がり、紬の背中をぐいぐいと押す。

その後ろを、「隊長様はやめてくれ…レイ……。」と苦笑いしながら燐が続く。


紬が席に着くと、燐が乾杯の音頭を取る。


「みんな、お疲れ様。今日は神の襲来などで先延ばしになっていた紬君の歓迎会だ。宴会向きなあいつがいないのは残念だが、存分に楽しもう。乾杯!!」


―あいつ…?


前もそんなことをほのめかしていた気がするなと紬は思う。だが、まわりで音頭に合わせてグラスが打ち鳴らされる音が響き、紬はその思考をやめて応じる。


「"かんぱい"ですよ紬さん!!」


フェリスティナが、とても興奮したような様子で紬に乾杯をせがんでくる。彼女の『乾杯』の発音はどこかたどたどしいように感じられる。まるで、頭にはあったがこの言葉を初めて発するかのように…。


「はいはい、乾杯乾杯…。なんでお前はそんなにテンション高いんだよ…。」


「だって!あの乾杯ですよ!データベース上でしかみたことない!!」


紬にとっては当たり前のこともフェリスティナにとっては新鮮なのだ。

そんなやり取りをしていると、ふたりの方に燐がやってくる。


「じゃあ、私も混ぜてもらおうかな。」


そう言いながらグラスを掲げて燐がやってくる。紬とフェーはそれに応えてグラスを当てる。


「今更だが、君の歓迎会だからな。一応言わせてもらうぞ?守護隊へようこそ、紬君。」


「ありがとうございます。」


「燐隊長さん!私も私も!」


コンピュータとしてずっと守護隊として働いていたフェリスティナの言葉の意味が一瞬わからず、燐は少し首をかしげる。だが、人の形となってこうしてよりかかわれるようになったことで、彼女の中でより守護隊に所属しているという感覚が強まったのだろう。ということに気付き笑顔でフェリスティナにも歓迎の言葉を言う。


「そうだな、フェーもようこそ。守護隊に。」


「はいっ!!」


その言葉を聞き、フェリスティナはとても嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねる。


「そういえば、フェーは言葉がだいぶまともになってきたのだな。」


それはずっとフェリスティナの話相手をしていた燐の所感である。丁寧語を重ねたりと妙な語尾をしていたフェリスティナが普通の喋り方をするようになった。これは燐にとって印象深いことであった。


「えへへ、そうですかっ?」


「そりゃ…。俺が四六時中話してますから…。」


紬はとても辟易としているようだ。だが彼女の笑顔と紬の言葉の中にあるどこか優しげな語調から、ふたりの関係は良好だと判断して燐は素直によかったと思う。


「あ、そういえばみんなはお酒とか飲まないんですね…。」


守護隊のメンバーが談笑している様子を見て紬は素朴な疑問を口にする。その問いに、燐は当然のように答える。


「ああ…。我々はいつ出撃になるかわからないからな…。」


「そっか…。確かにそうですね…。」


「いざ出撃となったときに酔っていても話にならないだろう?」


そう言いながら笑うと、燐は少し遠くを見ながら呟く。


「だが、そうだな…。もしも再び平穏を手に入れることができたのなら、皆と気兼ねなく酒を酌み交わしてみたいものだ…。」


「そうですね…。」


ふたりの間の空気が少し暗くなる。


「紬さん紬さん!これおいしいですよ!食べましょう!!」


だが、その空気はフェリスティナの賑やかな声で吹き飛ばされる。


「はいはい、今行くよ!」


燐の横からフェリスティナの元へ移動して行く。その様子を眺めながら燐は思う。


―あのふたりは確実に人類を救うための鍵となるだろう…。大事にしたくてはな…。




宴は賑やかに過ぎて行く。

賑やかではあるが、平穏な日常。

だがそれはやはり嵐の前の静けさであり、すぐに嵐はやって来る。



フェリスティナがバッと顔を上げる。


「フェーどうした?」


紬が不思議そうに声をかける。


「レーダーに反応っ!敵です!」


その声に宴の場は静まり返り、全員の目が鋭くしてフェーの次の言葉を待つ。



「これは……。神です!!」


それを聞き、燐がすぐさま号令を出す。


「皆、すぐに支度しろ!相手は神だ。浮わついた気分のまま行くんじゃないぞ!!」


『おうっ!!』


全員がすぐに動き出す。

目指すは地上。襲いくる神を迎え撃たんがために…。


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