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天罰戦線の殺神者  作者: 有栖
第五章『もうひとりの仲間』
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第12話『三千世界』

-2527年7月16日-AGF極東支部第5階層-北訓練場-


紬が開花し、フェリスティナが人型になってからおよそ3か月。神相手の大規模な戦闘はなかったが、ヒト相手の小競り合いは頻発していた。

そんな中で、紬は自分の機体である三千世界の機能をつかむために日々演習を行っていた。


―1本目の杭は剣。雷の剣。


三千世界の背から伸びる7本の純白の杭。それは、引き抜くと武器に変化するようだ。

だが、この機体そのものであるはずのフェリスティナに聞いても、『どの杭が何になるか?知らないでふ!』と言われたため、『役立たずめ!』と言い放って訓練場で試している次第である。


今行っている訓練は、ランダムで現れる球状の目標物(ターゲット)を、それからの攻撃を受けずに破壊し続けるというものである。


紬は、目の前にある目標物に向けて剣を振り下ろす。

それは、雷の尾を引きながら目標物に命中し、爆散させる。そして、少し先に新たな目標物が現れる。

紬はそれを一瞥すると、そちらに向けて剣を振る。到底届く距離ではないが、紬のイメージによって雷の尾が伸びてそれを砕く。


―遠距離攻撃も可能…。


砕け、爆散する目標物を見て、剣を杭に戻して背に戻す。


『紬さん!背後に3機の目標物出現ですよ!撃ってくるタイプです!!』


と、通信が入ったようにフェリスティナの声が響く。これは、三千世界そのものである彼女の声であり、三千世界の強みのひとつでもある。彼女のレーダーの情報や攻撃予測が逐次紬に入ってくるのだ。

そんなフェリスティナの声に反応し、紬は裏を向く。

その瞬間、3機の目標物が紬に向けてビームを放つ。


「くそっ!」


だが、そのビームの軌道予測はすでにフェリスティナによって視界に赤い線として現れており、最低限の動きでそのビームの間をすりぬける。

そして2本目の杭を抜きながら上昇し、目標物群の上をとる。


―2本目は銃か…。


目標物のひとつ目がけて引き金を引くと、鋭い雷の筋が放たれてそれを撃ちぬく。

だが、その間にも残りの目標物が紬に向けてビームを放ってくる。その軌道予測を見て、紬は銃をふたつに折った。するとそれは輝いて形を変え、二丁拳銃となった。

高速で引き金を絞り、軌道予測に沿って雷を放つと、それはビームを相殺して消える。

そして、二丁の拳銃をガンッとぶつけると再度一丁に戻り、その引き金を絞る。

放たれたのは密集した雷によって出来上がる巨大な光線。高密度なそれは、目標物のビームを寄せ付けず、残りのふたつを焼き尽くした。


―銃の形、弾形とかもイメージで自由がきくのかな…。


そう考えながら銃を杭に戻すと、紬の周りに大量の目標物が高速で旋回し始める。

紬は迷わず3本目を引き抜き、それの形状を見る。


―3本目は…なんだこれ…?


形状がよくわからない。

球状の浮遊物が両方の掌の上方にあり、その周りを鋭い爪のようなものが囲んでいる。

とりあえずブンッと振ってみると、その爪のようなものが飛びだして飛翔し、尾のように雷の線を引いてゆく。それは自動で目標物を追尾し、命中するとそれを易々と砕く。


―追尾ミサイルみたいな感じか?フェーのレーダーをつかっているのか…。


と、そこで紬は少し閃く。

いったんすべての爪を戻し、再度放つ。今度は自分のイメージですべてを操る。一部はそのまま真っ直ぐ。また、一部はその真っ直ぐな線を横切らせるように。

それは、まるで網のような形状となり、動く敵を捕らえては雷の線がそれを焼き切る。


―追尾性能と形の自由さ…。これも使いようではかなりの威力になるのかな。


と、まだ生き残っていた目標物が、紬めがけて特攻してくる。

慌てて網を杭に戻し、4本目を引き抜く。

それは姿を変えると、紬の腕や足に追加の鎧を構成する。

その部分は密度の高い雷でできているように見える。試しに特攻してきた目標物をそれで殴ると、雷に当たったように砕ける。

そして、鎧の部分は紬が念じると生き物のようにその形を変える。盾のようになり、身を守ることもできるようだ。

そんなことを考えながら特攻部隊を殴り倒し、次を待つ。


『紬さん!次が来るですよ!!』


現れたのは通常の目標物とは違い、硬そうな殻に守られたような少し大きいものである。

それを見て、紬は迷わず5本目を抜いて武器へと変える。

それは、槌。柄の長い槌である。雷を纏うそれを、回転の勢いを利用して目標物にたたきつける。

ガンッという鈍い音と共に目標物の外殻が砕ける。と、外殻に入ったヒビから大量の目標物があふれ出てくる。


「うわっ!?」


それらは、ビームを放ちながら紬の周りに展開してゆく。

形成した盾でそれを受けつつ、紬は6本目を引き抜く。姿を変えたそれはふたつに分かれ、紬の肩の上を浮遊する。


―移動砲台かな…?なら!


すぐさま銃となる杭を抜き、二丁拳銃型にすると、敵のビームをよけながら目標物めがけ乱射する。

そして、紬が念を送ると、移動砲台も弾を放つ。雷のエネルギーが凝縮された楕円形の弾だ。


交錯するビームと雷。

それが収まったとき紬の周りに目標物はなく、『mission complete!』の文字が目の前に浮かんでいた。


「ふう…。」


紬は一息つくと、最後の杭を使っていないことに気がつく。

武器の形だけでも見ておこうと、引き抜こうとする。

だが、


―あれっ…?


どれだけ力を入れても抜けない。


「フェー、この杭の詳細は?」

『わかるとでも思いましたか!?紬さんもまだまだ甘いですね!わかりませんっ!!』


やはり、フェリスティナもわからないようだ。


―謎が増えたな…。


現状判明している6本で戦うことは十分に可能であるが、どこか不安を覚える紬であった。

少し考えこんでいると、フェリスティナが『燐隊長さんから通信です!』と通信が来たことを伝える。


『紬君、訓練ご苦労さま。』

「隊長、お疲れ様です。」


紬は、燐に使えない武器があるということを伝え、意見を求めてみた。


『ふむ…。使えない武器か…。』


燐は、少し考え込むと、推測を話し始める。


『ひとつ、現状はまだ想像力が足りていない。ひとつ、まだ機体は発展途上。あとは、まだ使えるシチュエーションでない。くらいだろうな…。』


どの推測が合っているのか紬たちが知るのは、まだかなり先のこととなる。


『まあ、いずれわかるさ。さあ、紬君。キミの歓迎会の時間だ。第2階層の階層エレベータ前まで来てくれたまえ。』


そう、今日はバタバタしていて遅くなってしまっていた紬の歓迎会の日である。

とりあえず疑問を置いておいて、紬は集合場所へ向かうのであった。




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