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プロローグ 事件発生。 生徒会VSミス研 戦いが始まる。

この作品はフィクションです。

登場人物は、実在の人物とは一切関係がありません。

プロローグ 事件発生。 生徒会VSミス研 戦いが始まる。



都内のどこにでもあるような私立高校、深淵学園。

 この学園は非常に部活動が盛んであり、数々の部活動がある。

 これから紹介するミステリー研究会。通称ミス研もその一つである。


「ねえ木村くん。何か会誌のネタになるような事無い?」

「さあ、簡単には無いっしょ。大体さ、去年から同じ事やって面白いわけ? やっぱなんか変わったことしたいよな」

「まあそうだよね。やっぱり同じことは芸がないというか、変化を求めないと……」

「そうそう。分かってるじゃん。じゃあ今日はこれからどっか寄ってこっか。晴香。お前もさ。パソコンと睨んでないで付き合えよ」

「はあ、どうしてわたしが放課後まで付き合わないと駄目なんです? それに会誌って私が入部してからはまだ一度も出してないですよ」

「だから会誌は去年まで。今年から新しい事やろうって話じゃん」

「ですが……」

「じゃあ晴香一人で考えてよ。書けるっしょ。初めてなら、何でも良いから書いて見せてみ」

「ええっ!」


 この会話もいつものことである。

 既に四月も後半であり、ある程度部員の関係も出来上がる。

 ミス研。部員は三名であり、部長には二年生の木村拓斗。

副部長には同じく二年生の稲原吾郎。

 そして紅一点の女子は新入部員である一年生、七瀬晴香。

 この三人がミス研の全部員である。

 ちなみに昨年度は卒業した部員が複数存在し、その部員が主な活動をやっていたため、木村と稲原は特に会誌の作業はやっていない。

 単純に会誌作りといった地味な作業は嫌いなのだ。


「じゃあいこっか吾郎」

「うん。それじゃ……」

「ええっ、待ってくださいよ」

 木村と稲原はさっさと部室を出ようとする。

 だが木村がドアを開ける前にドアが開いた。ドアは自動ドアなどではない。

 つまり来客が来たという意味である。

「ミス研の皆さん。全員揃ってますね。えっと部長は?」

「俺だけど。あんた誰?」

 突然の来客。その客の態度は非常に感じが悪く、木村は嫌な印象を持った。

「申し訳ありません。名乗るのが遅れましたね。私、小松貴子と申します。生徒会執行部の者です」

「へえ~、執行部。それでその執行部が何のようっすか? 俺らこれから用事あるんで、話なら手短に済ませてくれると嬉しいんすけど」

「ええ、私としてもその方が助かるので。では、本題に入りますけど、今年度のミステリー研究会ですが、予算は九割減となりますのでその通告に来ました」

「はあっ! そりゃおかしいっしょ」

「いえ、決まった事です」

 小松の言葉は有無を言わせない毅然としたものだ。

 だがそれには稲原も黙ってなどはいられなかった。

「ちょっと待ってください。予算削減とは、どのような経緯でですか? 説明して下さい」

「はい。一言で言えば、活動実績ですね」

「活動実績?」

「そうです。昨年度は季節度、年四回の会誌発表が主な活動ですが、それであの予算は多いという判断です。部員も今年は三名ですので、妥当な予算だと思います」

「……そうですか」

「はい。もちろん今後部員増加などで予算増加が希望であれば、検討は可能です。ではお話はこれで」

 小松は部室を去ろうとする。

 だが木村はここで黙っている男ではない。

「ちょっ、待てよ!」

「はい?」

「話聞いてたらさ。それおかしくないっすか? まだ四月でこれから何やるか決めるって時に水差すようにってありえないっしょ。大体いきなりやってきて一方的に削減っておかしいっしょ。やるなら俺らが何やるか見てからにしろって!」

「そうですか? では何を見せてくれるんですか?」

「すげえもんだよ。あんた等がビックリするようなっ!」

 木村の目線は小松に対し一歩も引かないものだ。

 両者の眼光はぶつかり合い、熱い火花を散らした。

「分かりました。ですが、具体的に見せて頂く事には……」


 小松がそう言い掛けた時だ。


「きゃああああぁぁぁぁっっっーーーーーー」


 突如として、外から悲鳴が聞こえた。

 女性の悲鳴。それはミス研部室のすぐ外にある運動部部室棟から響いた物だ。


「えっ、何ですか?」

「悲鳴だ。下からだな」

「行こう! 木村くん」

「もちろんっ!」

「待ってください先輩。わたしもっ」

「ああ、私も行きますよ」

 木村と稲原、それに遅れて七瀬、最後に小松の順番で部室棟に向かう。



 悲鳴から約二分で四年は悲鳴のあった部室棟に辿り着く。

 そして悲鳴の主であろう女子生徒は部室の前で座り込んでいる。

「何があった?」

 木村が女子生徒に聞く。

 すると女子生徒は震える手で部室の方を指差した。

 木村たち四人はその方を見る。

 すると、そこには―――

「おいおいマジかよ」

「こんな事が……」

「いっ、いや」

「嘘でしょう、学校で……殺人なんて」

―――首から大量に血を流した遺体が転がっていた。




 警察が訪れ、現場検証に入っている。

「ガイシャは仙崎佐助55歳。野球部の顧問をしていたようですね。死因は首の頚動脈を切ったことによる出血多量。凶器は被害者が右手に持っているナイフ。死亡推定時刻は今から約1時間前の午後5時頃です」

 鑑識が警部に対し説明を行う。それを聞いてから警部は発見者の女子に話を聞く。

「えっと、君が第一発見者か?」

 部室の外にあるベンチに座っている女子生徒に警部が話しかける。

「はい。私が部室の鍵を開けると先生が……それで悲鳴をあげたら皆さんが……」

「鍵を。つまり部屋は鍵が閉まっていたわけだ」

「はい。確かに閉まってました。だから鍵を使ったわけですし」

 この野球部のマネージャーでもある女子生徒、水野渚はおずおずとしながらも状況を説明していく。

「それでやってきたのがこいつらというわけか?」

 説明を聞いていた警部は渚からの説明を聞いてから、木村たちの方を見る。

「そうっすよ。でもマジなんすね。事件のときにこうガヤガヤって大量の刑事が来て、現場封鎖して、えっと、あれなんだっけ?」

「現場検証ですか?」

「そう、それっ!」

 途中で言葉が詰まった木村に自然な流れで助け舟を出す小松。

 しかし小松は依然として、憮然とした表情のままだ。

「で、事件はどうっすか? やっぱこれからアリバイ調査とか?」

「いや、鍵が閉まっていたなら自殺だろうし、捜査は必要ない」

「はっ、それおかしくないっすか?」

「いや、首を切るというのは不自然なように思うが、凶器は仏さんが握っていて部屋が密室。これで自殺じゃないというのは探偵小説の読みすぎだ」

「いやっ、でもさっ!」

 木村は異を唱えようとするが、警部は特に聞く耳は持たないようだ。

 だが、そこに新たな人物がやってくる。

「待ってください。僕も話に加わらせてもらえないでしょうか?」

「えっ! ……あっ貴方はっ!」

「お久しぶりです。警部さん」

「はあっ! あんた誰?」

 警部は深々と頭を下げるが、木村は突然の人物にあまり好意的な印象は持たなかった。

 ウマが合いそうに無い。

 それが第一印象だった。

「生徒会長! どうしてここに?」

「えっ、生徒会長? 嘘!」

 だが小松の言葉ですぐに招待が判明する。

 彼は草壁剛。この学園の生徒会長だ。

「この学園で遺体が出たというので様子を見に来ました。警部さん。中に入っても?」

「はい。どうぞ!」

 草壁は過去に幾度もの事件を解決した探偵である。警部も何度と無く助けられたことがあり、すでに草壁の捜査権限は刑事と同等のものである。

 故に現場での立ち居振る舞いも堂に入っていた。

「仙崎教諭ですか……警部さんはこれが自殺と判定したようですが……」

「はい。現場の状況から判断すると、それ以外は考えにくいかと」

「いや、おかしいって絶対! 首だよ首。自殺で首を掻っ切る奴なんていねえって!」

 木村は再度現場の異常性をアピールする。

 首の頚動脈を切断しての自殺。それは確かに違和感の強い判断である。

「お前は黙ってろ。それで草壁くん。君も自殺と思うだろ」

 警部は草壁に対しても同意を求める。

 しかしその問いに草壁は首を横に振った。

「残念ですが、この事件は彼の言うとおり、自殺ではありません。」

「なっ!」

 警部は驚きを隠せない。

 そして再度聞き返す。

「いやいや、現場は密室で凶器も仏さんが握ってるんだぞ。これで自殺以外は……」

「いえ、遺体が凶器を握っているからこそ、これは自殺では無いんです」

「何を言っとるんだ! 握って……」

「被害者は出血多量で死んでいます。それなら首を切ってから死ぬまでのある程度の時間が必要です。そして死ぬ際には筋肉は弛緩します。このように強く凶器を握り締めたままというのは逆に不自然です」

 草壁は遺体の手を指差しながら丁寧に説明を続ける。

「なるほど。確かにそういわれたら不自然と言われなくも……」

「いや、そんなことよりもさ。この先生左利きじゃね! なんで右手に凶器持ってんだって話じゃん」

 木村がさらに割り込む。

「おいおい、お前は黙って……」

「いえ警部さん。彼の意見も聞きましょう。左利き? 仙崎教諭が左利きだとどうして分かるんです?」

「だってさ、腕時計を右腕にしてるんだぜ。普通利き腕の逆につけるもんっしょ。なら先生は左利き。普通利き手じゃないほうで首切らないでしょ」

 木村の指摘は言葉使いはともかく、内容は非常に理路整然としていた。

 そしてそれは、シンプルであり、決定的にこれが自殺で無いというのを示す物でもあった。

「……つまりこれは他殺。これから関係者集めて事情聴取だ。準備急げーっ!」

 警部は他に刑事に指示を出し始め、一度その場を離れていく。

「君、名前は?」

「俺? 木村拓斗。ミス研で部長やってまっす! 以後よろしこっ!」

「面白い方ですね。僕は草壁剛。生徒会長をやってます」

「ああ、剛ですか? そうだっ、面白い提案があるんすけど」

「何ですか?」

「うちら、なんか部費削られそうで、成果見せないとだめらしいんですけど……」

「はい。ミステリー研究会にはそのような決定を下しましたが、何か問題でも?」

「別に、たださ。逆にいえば成果見せたら問題無いわけでしょ」

「そうですが」

「ならさ。うちらがこの事件を解決したらそれ成果って事でいいっすか? せっかくミス研に相応しい事件ですし」

「ちょっと木村くん何言ってるの? 人が死んでるんだよ!」

 今まで沈黙を守っていた稲原が突然驚いて言葉を挟む。

 だが木村はむしろその反応に驚いている。

「バカ! せっかくのチャンスだろ。リアルに殺人事件に遭遇って早々ねーぞ。ミス研を本物の探偵にしたくねーのか?」

「したいけど……でも不味くない?」

「いや、だいじょーぶっしょ! なっ!」

 木村は草壁に同意を求める。

「はい。問題はありません。僕も最初に解決した事件は本当に偶然巻き込まれたものでしたし。こういった経験が出来るのはむしろ幸運なのかもしれませんね。その提案にはもちろん賛成です」

「おっけ、話分かるじゃねーか」

「ですが、私も生徒会長として、そして探偵として、事件解決に向けで動かないわけにはいきません。ですので……」

「勝負ってことだな。乗ったぜ。俺とあんた。どっちが先に事件を解決するか」

「はい」



 ミス研と生徒会。 部長と会長。

 互いの意地とプライドを掛けた勝負はこうして静かに幕を開ける。


プロローグです。

次回から本格的に捜査が始まります。

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