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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
第二章 〜食糧確保と町造り〜
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アンデットとの戦い。

一日の休みを挟み、視察三日目。

早朝にローフェンが指揮する騎士団、二隊約四千がエンリッヒ家の旗を掲げて出陣し、それに少し遅れて俺達も出発した。

パウロが指揮する護衛騎士百騎と、俺とシエーナは神殿がある森の端が見渡せる小高い丘に陣取った。距離は、600mぐらいか。

森からわらわらと、スケルトンやゾンビが湧き出してくる。

ローフェン達は、歩兵に二つの方陣を組ませ、その後ろに騎兵を置いて、ジッと動かない。

出てくるだけ出て来させ、相手の数を見極めるつもりなのか。

まとまる前に、森の裾で倒していった方が良い気もする。


「なぁ、パウロ。」


パウロに声をかけると、まず苦笑が返って来た。


「森の端で、出てくる所を叩けば、と思ったでしょう?」


「ダメなのか?」


「やめておいた方が良いですね。最初から森の中で戦うつもりならともかく、こちら側からは見えにくい森の中から、どんな一撃が飛んで来るかわかりませんし。」


ふむ。そんなものか。

そういや、魔法を使って来る魔物も混じってるんだったか。


「それに、終わりが見えない戦いってのは、消耗するんですよ。ただでさえ、人間より力が強く、死んだ身体を持った魔物が相手ですから。」


なるほど。

俺は、まだ自分の手で魔物を倒した事がない。

パウロとの訓練で、並の騎士ぐらいの技術はある、とは言われた事はあるが、実戦を経験してはいない。

それが、どういう事なのか、少しだけだがわかったか気がする。


「よくわかった。俺に、わかる筈がないって事が。」


言うと、パウロは複雑な笑みを浮かべた。

同情したのかも知れない。

俺は、臆病とは言え、男だ。

前世の子供の頃は特撮ヒーローに憧れたし、成人してからでも、ファンタジー映画の戦闘シーンなんかには、ちょっとしたロマンを感じた。

今世に転生してからも、魔法への憧れは絶えずある。

剣にしても、いつかは魔物と戦い、勝ちたいと言う欲求がモチベーションの根源だった。

パウロは、俺の剣の指導をしているだけあって、そういう思いをわかってはくれている。

だが、立場がそれを許さない。


俺も今の立場にいる以上、それが叶う事はない事を理解している。

いや、無理を言えばできるかも知れなかった。

だが、それはパウロや護衛騎士達が要らないと言っているのと同義だ。

そこまで、無理を通そうとは思わない。


魔物が布陣を終えたようだ。

と言っても、ただなんとなく集まって、ここから見ると楕円形になっているだけだ。

ポツポツと煌めいているのは、生前の装備を身につけているスケルトンナイトだろう。


「もう一つだけ、森の裾で迎え討たない理由があります。」


ポツリ、とパウロが呟いた。


「ほう。」


「あいつですよ。」


パウロが言ったか言わないか、という時、ラドマンの軽装騎士が方陣の間を四列縦隊になって駆け抜けた。

アンデット達も、何かを感じたのか、前の半分ほどが駆け出している。


「エンリッヒ侯爵家騎士団『貫竜の槍』、ラドマン・ランシュムーサス。いずれ一対一で、俺が勝てなくなりそうだと思う、ただ一人の男です。うちの家中では、ですが。」


なんだその渾名は、と思ったところで、ラドマンを先頭に、騎士達はアンデット達とぶつかった。

いや、薙ぎ倒している。

馬の勢いを殺さず、そのまま魔物の群れの中を駆け抜けていた。


「おい、孤立するぞ。」


言った瞬間、ローフェンの歩兵が動き出す。

ラドマン達が通った所に数百の部隊が円陣を組んで入り込んだ。

方陣二つは、ラドマンが開いた道の入口で、アンデット達と押し合っている。


突然、円陣から火球が撒き散らされた。

火の魔法でお馴染み、ファイアボールだ。

あの円陣の中に、魔法使いが複数名いるようだ。

あそこからなら、狙いをつけなくても味方に当たる事はなく、敵には必ず当たる。

だが、あそこは死地だ。

すぐに周囲の魔物に嬲り殺しにされる。


「捨て身、か?」


「そんな訳ないでしょう。ローフェンは、マンシュタイン殿に誰よりも早く隊長格に上げられた男です。そんな下手は打ちませんよ。」


円陣に向って、氷の矢が降りかかる。

群れに紛れている魔法を使える個体が放ったのだろう。

まともに喰らえば容易く全滅するような、容赦ない数の矢だ。


それは、円陣をドーム状に包んだ炎で蒸発した。


「馬鹿な。」


パウロが呟いた。

あれは、かなりの魔力を消費する。

数百人を包みこむような炎の壁は、そう容易く創り出せるものではないのだ。


これはまずい、と思った時、ラドマンの軽装騎士が弾けたように四つの縦列に分かれた。

まるで、蛇のようにうねりながら魔物の群れの中を突き進んで行く。


同時に、円陣の歩兵と方陣の歩兵が、一つになろうと群れの中に斬り込んだ。


俺は、閃くように理解した。

ローフェンは、魔法を使う個体を探していたのだ。

俺のように魔力を視力で捉えられる者がいれば、居場所はすぐに見つかる。

残念ながら、俺の眼では逆に色付き濃霧の中に迷い込んだようになってしまうのだが。


あらかた目星をつけた個体を狩り終えたのか、ラドマンの軽装騎士達は魔物の群れから飛び出して、一つになった。

常に動き回っていたからか、基本的に動きが遅いアンデット達からあまり攻撃を受けなかったようだ。

数が減っているようには見えない。


ローフェンの歩兵も円陣の兵と合流し、すぐに下がった。

これだけ激しく動いた後でも、兵達はすぐに方陣を組み、前衛の兵は槍を群れに向けている。


いつの間にか、日が高く昇っていた。


ローフェン達がゆっくりと退却を始めると、アンデット達は追う素振りさえ見せず、森の中に戻って行った。

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