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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
第二章 〜食糧確保と町造り〜
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父と息子とシエーナ。

会議が終わり、夕食になった。

広いテーブルについているのは、俺とシエーナ、エルロンドだ。

久々に会った我が子は、また背が伸びたようだ。


夕食のメニューは、大人と子供で違っていた。

俺とシエーナは、ライ麦パン、こてこてのソースがかかったステーキ、キャベツのような野菜で数種類の根菜を包んだ冷菜、水菜っぽい野菜のサラダ、鶏と玉ねぎのスープ、デザートに蜂蜜をかけたスコーン。


エルロンドは、ライ麦パン、川魚のソテー、温野菜、野菜ポタージュ、デザートは凍らせたフルーツ。


侯爵家の食事にしてはかなり質素だが、抑えに抑えてまだこれだった。

三年前は、これに一品か二品は多く、もっと手のこんだ料理が並んでいたが、食いにくい上にそこまで美味くない。

ならいっそ、シンプルにしてくれ、と今の形に収まったのだ。


「父上。」


デザートの甘ったるいぼそぼそした物体と格闘していると、エルロンドが話しかけてきた。

飯を食いながら喋らせない。

これは、俺がエルロンドに徹底させている事の一つだ。

シエーナも、それは知っているので、三人揃っての食事は基本的に無言だ。

時折、話す時はフォークとナイフを置いてから話す。


「なんだ。エルロンド。」


「発掘の話を聞かせて下さい。」


多分、発掘の意味などまだわかっていないだろうが、俺が屋敷にいない理由として、大人達に教えられたのだろう。


「そうだなぁ。」


使用人がコーヒーを運んで来てくれた。

口をつけると、コーヒーのコクが残っていた甘みを消してくれる。

透明感とキレの良いブレンドを求め、豆もオーガスタ神から良いモノを融通してもらってかなり完成度が高い。


これぐらいの贅沢は許されても良いだろう。


コーヒーを楽しみながら、どんな話しを聞かせようか、思考を巡らせた。

エルロンドは、キラキラと目を輝かせている。

自分も、こういった冒険談に憧れた時があったような気がする。


ふと、エルロンドの向かいに目を移すと、そこには何故か目を輝かせているシエーナがいた。


お前の頭は三歳児と同レベルなのか。


いや、外に出る事がほとんどないので、そういった話しに飢えているのは、わからん事もない。

だが、身を乗り出すのはやり過ぎだ。


「難しい事が多かったが、その分、見えてきたモノも大きかったよ。」


森の中に、ポツンと放置されていた神殿。

だが、その周りには明らかに多くの人間が暮らしていた。

柱が並立する大通り、その両側に建つ大きな建物、未だ明らかになっていない神殿の全貌、周辺にあった墳墓、その中に納められていた財宝、飛び出してきたスケルトン、そんな話しを聞かせてやった。


「私も、いってみたいです。」


エルロンドは、何度もそう言った。

三歳児にして、一人称は私である。

フィリップや家庭教師、乳母、その他もろもろは、我が子にはしっかりとした、貴族としての教育を施しているようだ。


「もっと大きくならないとな。それに、勉強もしないと、楽しみが半分になる。」


「どうして、半分になるんですか?」


「それがなんなのか、わからないからだ。勉強をすれば、わかる事が増える。わからない事が、なくなる訳じゃないがな。」


言っても、エルロンドにはわからないだろう。

ただ、俺がきちんと説明しようとした事を察する聡明さが、エルロンドにはある。

我儘を言うことがないわけではない。

だが、蔑ろにせず、きちんと言葉を尽くせば理解はできなくても納得はする。


「私が、旦那様と御一緒するのは、無理でしょうか?」


あ、このやろ。便乗しやがったな。


「俺はかまわないが、フィリップが良いと言えば、だな。しばらくは、発掘の方には手が回らないから、領地の視察ぐらいだろうが。」


「それでもかまいません。今夜にでも、聞いてみます。」


言ってから、シエーナは顔を赤らめて俯いた。

この言ってしまってから恥ずかしがる癖が中々抜けない。

この自分に自信がない態度も、俺の神経に触れてくる。


「私は、いつ連れて行ってくれるのですか?」


焦ったようにエルロンドが早口で言った。

シエーナが良いなら自分も、と考えさせるあたり、二人の関係は悪くはないのだろうが、対等に近い意識を感じる。


「まだまだ先だな。だが、必ず連れて行くよ。」


「早く、行きたいです。」


「マルガンダを周るぐらいの視察なら、今度連れて行ってやるから、他のところは我慢しなさい。」


現金なモノで、それでエルロンドは満足気に笑った。

笑顔は、やはりエリーゼにそっくりだ。


コーヒーに口をつける。

ぬるくなっていたが、それはそれで良い。

美味いとは思わないが、嫌いではない。


こんなものでも、贅沢だど思ってしまい、残す事が出来ない。

俺がそうなので、エルロンドもシエーナも出されたものを残す事はしない。


スコーンを胃袋に流し込んで、俺は席を立った。


シエーナはともかく、エルロンドとの視察は俺も楽しみだ。

親子として過ごす時間が、前世からすればかなり少ない。


表情には出さなかった。


理由はないが、死んだ親父の気持ちがちょっとわかった気がした。

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