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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
第二章 〜食糧確保と町造り〜
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発掘調査2

やはり、黄色い砂は道、もしくはその機能を持たせる為に整地したモノのようだ。


発掘が始まって、十日が経っていた。

俺専用の小屋と、出土品をしまっておく倉庫、人夫や兵卒用の小屋を、歩兵達が建ててくれた。

簡単なモノで、屋敷や移動用の天幕に比べる事すら出来ない質素なものだが、元奴隷の俺からすれば贅沢なもんだ。


調査出来たのは100m四方といったところか。

神殿に向かって60mほどの幅で道が作られ、砂ではなく第四層より気持ち明るい黄土色の地層があった。

ほとんど同じ色だが、前世の学生時代、土の見分け方について、クソほどしごかれた俺の目は誤魔化せない。

その脇には焚き木の跡らしき炭が集まっていて土が焼けているような跡があり、更にその道から向かって外側に五棟ほどの建物跡らしき柱穴跡が見つかっている。

礎石はなかったので、掘立柱建物だろう。


「大したモノは出ませんでしたね。」


一区切りついたので、今日は休日にした。

歩兵の半数は森に入り、狩りをしている。

人夫達は、昼寝をしている者が多い。

俺は、描き上がった図面と出土した遺物の整理をしていた。

陶器片や壊れた工具らしきもの、元はなんだったかよくわからない鉄片などだ。

陶器片は、幾つかは完形に近い所まで修復できる筈だ。


「最初から上手く行く訳がないだろう。こういうのは、積み重ねだ。ここの発掘が終われば、少なくともこの周辺の発掘はもっと効率的にできるようになる。」


パウロは不満気な顔をした。

お宝が拝めると楽しみにしてたのもあるんだろう。

おまけに、元冒険者ともなれば、それは最早本能のレベルで染み付いている。


俺がやっているのは学術調査に近い。

最終的には儲けを出さねばならないものの、今はそれを度外視してでもデータの蓄積をしなければならない。


なんせ、記録として残っていない文明の調査を一から始めるのだ。

年代の推定さえ、年輪年代測定法やC14年代測定法がないこの世界では、すぐにはできない。

層位学と型式学を基礎研究から始めなければならないのだ。

俺も、全てを理解している訳ではなく、忘れてしまっている事も多いので人に教える事はできない。


時間をかけるしかないのだ。


「そんな顔するなよ。パウロ。元々、此処には何も残ってないだろうって言っただろ?」


「アルマンド様の謙遜かと思ってましたよ。なにせ、キートスにあれだけ大見得を切ったんですから。」


今度は俺が苦笑した。


正直、一発目から財宝を狙う事ができない訳ではない。

山や丘を踏査すれば、かなりの確率で権力者の墓があるだろうと、俺は推定している。

だが、それを一発目にしてしまうのと、データを積み重ねた後にするのとでは、おそらく商人や貴族に売る際の値段が、0がひとつかふたつぐらいは変わる筈だ。

歴史的価値と言うのは、それほどまでに大きい。


「あれは、嘘ではないぞ。俺は必ずうちの金庫を白金貨で埋め尽くして見せる。が、今はまだ我慢だ。」


「必要な事をやってるんですね?」


「絶対に、必要だ。どう考えても無理だろうと思ったら言ってくれ。そこまで長い時間がかかる訳ではない、とは思ってるが。」


言うと、パウロは神妙な顔をして頷いた。


うちの勢いが乗るか反るかが、この事業の成否にかかっていると言っても良い。

俺は成功させる確信があるので、そこまでプレッシャーを感じていないが、家臣達は冷や冷やしているのかもしれない。


まぁ、結果を出せば済む事だ。


パウロとの会話を切り上げ、俺は夕食まで整理作業に没頭した。


夕食には、歩兵達が狩ってきた獲物と、ついでに採ってきた野草や果物が並んだ。

肉は焼き、臓物と野草は煮て、両方とも塩と僅かな香辛料で味付けしただけだが、美味い。

屋敷で出てくる、これでもかと言うほど贅沢なモノより、こういう食事の方が俺は好きだ。

皆に一杯ずつだが、エールも振舞った。

皆喜んだが、ちびちび飲んでいる。


この世界では、酒も高い。


庶民が毎日浴びるほど飲める代物ではない。

俺はいずれ、領内の食糧に余裕がでてきたら酒蔵も作るつもりだが、多分、うちの領地で出来た本当に良い酒を俺が飲む事はないだろう。

それらは、エルロンドに遺していくモノだ。


俺は、皆から少し離れた所に作った焚き火の前に腰を降ろして、そんな事を考えていた。


俺がいると、みんな遠慮するだろうと思ったからだ。

今日は、休日なのだから、思う存分楽しんでほしい。

人夫や兵士達の中心で、パウロが酔ったような声をあげていた。


俺は、腰を降ろしたまま、はしゃいでいる彼らを眺めていた。

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