新たな人財。
朝がきた。
今世初の完徹である。
奴隷時代にもした事なかった。
正直、二度とやりたくない。
いや、正直言うと、まだちょっと読みきれてない書類があるんだが、キートスとの話し合いには間に合いそうだ。
さて、割と真面目に取り組んだからか、キートスとの話し合いはスムーズに進んだ。
フィリップも、俺達が決めた人選で反対はないとの事だったので、後は面接して辞令を出せば、俺の仕事は終わりだ。
サルムート。38歳。
親父の代からエンリッヒ家に仕えていた男で、エンリッヒ家没落の際、フィリップに付いて山中に隠棲した者達の一人だ。
元は庭師で、植物に関する知識が尋常ではなく、良し悪しを見抜く目も持っている。
彼は、穀物や野菜などを、マンシュタインや彼の息子達の部隊に供給する食糧の管理、つまり、保管と輸送の全てを管轄する事になった。
いずれは、領地の食糧生産なんかも見てもらうつもりだ。
ちなみに、農民の出なので、家名はない。
アルフレッド・ヴィユー 。29歳
光る何かを持っている訳ではないが、とにかく堅実に仕事をこなす。
そして、ミスが極端に少なく、期限に遅れる事もない。
地味だが、与えられた仕事はきっちりやるタイプだ。
が、期待以上の仕事はしてくれない。
最初からキートスの部下で、フィリップ経由でうちに雇われているので、身元ははっきりしている。
彼には当家の記録の作成と管理を任せた。
いつ、どこで、誰と、何を、いくらで取引したのか、なんでもないようだが、不正が行われやすい部分であり、またその他の機密も扱う事になる。
彼のような冒険しないタイプが適任だと考えた。
ダルトン・ルフレーヴ。 26歳。
元はマンシュタインの部下で、ラドマンの飛竜討伐部隊所属の従士だった。
任務中に片脚を失う大怪我を負い、キートスの下に入った男である。
彼には全ての物資を調達する役目を与えた。
部隊の行軍にはついていけないにしても、元従士だけあって体力はある。
王国各地を駈けずり回る事になるが、彼なら軽くこなしてくれるだろう。
能力の方は、フィリップが保証したので大丈夫だ。
「と言う訳で、各々頑張るように。それと君達には部下を十名ずつ付ける。別室に控えさせているので、顔合わせしておきなさい。」
キートスが辞令を出すと、三人の顔が青褪めた。
特に、サルムートがヤバイ。
この世の終わりみたいな顔をしてる。
まぁ、元庭師が侯爵家の幹部になれって言われてるんだから、わからなくもない。
キートスの激務を知ってるってのもあるんだろうが。
「俺は、お前達なら大丈夫だろうと思ってる。実際、やってみなけりゃわからんが、ダメだったらダメで、やり直せば良い。後の事は考えず、やれるだけやってみろ。本当に無理なら、俺とキートスでなんとかする。」
キートスが、え?って顔してこちらを見る。
そうだよ。ダメだったらお前に丸投げするんだよ。
三人共、俺の言葉に目を丸くしていたが、すぐに一礼して部下達に会いに行った。
「驚きましたな。アルマンド様がお声がけするなど、滅多にありませんのに。」
え?そう?
てか、そっち?
「まったくです。普段は必要最低限の事しか口にされないのに。」
なんだよ、キートスまで。
「そんなに珍しいか?」
「フィリップ殿には、そうでもないらしいですがね。少なくとも、私やハリーがアルマンド様ときちんとお話ししたのは、最初の面接ぐらいですよ。」
む、そうだったのか。
奴隷時代の癖かな。
「それは悪かった。これから気をつけるよ。」
言うと、キートスは苦笑していたが、フィリップは愉快そうに笑っていた。
知らず知らず、俺は家臣達に壁を作っていたようだ。
明日、パウロにも謝っておこう。




