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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
三章 〜心と領地〜
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ラターシュ。

サンヴィヴァンを発って十日。

あの襲撃以外は、特にこれと言った出来事もなく、うちの領地では最も北にある拠点、ラターシュに到着した。

ラターシュは、初めから城郭都市として築かれていて、マルガンダの次に発展している都市である。

いや、発展させた、と言うべきだろうか。


此処は、これから北の山脈まで開拓をする時の補給基地であると共に、騎士団の予備役、つまりは騎士団に入団するまでの訓練を積む場所として定めた。


サンジュリアンはもちろんだが、ローヌやマルガンダと比べても、寒さが厳しい。

冬には土が凍る程で、吹雪でまったく外出できない日もある。


全てを凍らせる土地では、強者しか生き残れない。

戦場の弱者は、周りを巻き込んで死ぬ。

珍しく、マンシュタインがそう主張し、予備役の訓練地となったのだ。

実際、数人だが、予備役の中から凍死者や病死者が出ている。


そんな土地だが、今も人を集め続けている。

来たる戦役に備え、騎士団に入団すべく、万を数える男達が日々鍛錬に励んでいるし、食う口が多くなれば、それに伴って物流も盛んになる。

また、領内の探索を生業にしている冒険者や、物流を担う商人達の護衛である傭兵も、ここを拠点に活動する者が少なくない。

もちろん、他の村と違って宿屋や酒場も多く建ち並ぶ事になり、ますます物流は盛んになった。


予備役で振るい落とされた者や、怪我で戦えなくなった騎士などが、治安維持の為に衛士として配属されており、それほど治安は悪くはない。

それでも、細かい諍いは絶えず、酒場で喧嘩などよくある事だし、落ちぶれた冒険者や傭兵が詐欺や強盗を働く事もあると言う。


「大きい。」


シエーナが、町並みを眺め、洩らした。

小便じゃないぞ。言葉だぞ。

卑猥な意味でもないからな。


ラターシュはマルガンダの改良型でもある。

マルガンダの都市設計から縄張り、建築に至るまでを担当したチームが、ラターシュの建築に当たっている。


城壁の高さ15m、四方10kmに及ぶ設計で、未完成ながら、とにかく広く、でかい。

石工を得意とするドワーフ達の仕事で、完成した城壁は大変な強度を誇り、並の攻城兵器ではビクともしない。

近くにある、山脈からローヌ河へと続く川の水を引いた堀は既に巡らされ、平地にあるにも関わらず難攻不落の城塞となるだろう。


また、城壁を造り上げたドワーフ達の趣味で、初期からの建物は石造りが多い。

官庁や各ギルド、早くに拠点を置いた商会の他に、幾つかの宿や酒場も石造りのモノがある。

これらの建物は総じて大きい。

城壁ほどの高さはないが、王都の建物と比べても遜色がない。


それでも、一部を除けば建物がまばら、と言う印象がある。

予備役とは言え、大軍が常駐しているこの町では、道の幅がかなり広い、と言うの事もあるかも知れない。


もちろん、途轍もない額の金貨が、ラターシュにはつぎ込まれており、現在進行形で赤字街道爆進している。

ローフェンが築こうとしている砦に次ぐ、金食い虫だ。


こちらの方は、将来的に回収はできそうなので、まだ良いのだが。


「宿は、如何しましょうか。アルマンド様。」


「任せた。オーズ。」


「パウロ殿ではなく?」


「こいつに任せたら、酒場に近い宿しか選ばんだろう。喧しくてかなわん。」


エッ、と言う顔をして、パウロがこちらを向く。

そして、何故かシエーナも。


「久しぶりに、ベッドで眠れるんだから、ゆっくりしたい。」


残念、と言った感じに、パウロが肩を落とした。

シエーナは俯いて唇を尖らせている。


「まぁ数日は留まるからな。そのつもりでいろ。」


言うと、二人共あからさまに笑顔になった。

わかりやすい奴らだ。

ただ、パウロとシエーナでは、表情が変わる要因が違う。


悪いが、今夜は寝かせてくれ。

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