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とある貴族の開拓日誌  作者: かぱぱん
三章 〜心と領地〜
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幕間 侯爵家の闇。

アルマンド達を送り出し、俺は荷物を運び出し終わった馬車に向かった。

荷台に潜り込むと、そこには縛られて涙を流している男と、その男の傍で目を閉じて腰を降ろしているシュナがいた。


「殿は?」


「町にお買い物だ。暗くなるまでは、帰って来ない。」


シュナは、アルマンドを殿と呼ぶ。

いつからか、そうなった。


「で、こいつは、どうなんだ。」


「もう少し責めれば、全部喋る。」


縛り上げられた男は、涙を流しながら、首を横に振っている。

相手の心を折ってからの先を見極めるのが拷問だと以前、シュナは言っていたような気がする。

男は、全ての爪を剥がされ、両足がおかしな方向に曲がっていた。

猿轡が血で塗れているので、歯も幾つか抜かれているのだろう。


この男は、マルガンダから俺達を尾行してきていたので、シュナが捕らえた。

俺が気づいたぐらいなので、シュナからすれば素人も良いところなのだろうが、手加減してやる程、俺達は温くない。

こちらの領地に入って以来、送り込まれた刺客は数知れない。

そのほとんどは始末した筈だが、未だにしぶとく、こんなのがいたりする。

時には村一つ丸ごと王国貴族の手の者入れ替わっていた事もあった。


「他に仲間はいそうか?」


「この町の連中は、全て特定している。今は、下手に身動きできないだろう。」


「この先は?」


「部下を三十名、先行させてある。何かあれば、いつも通り知らせる。」


まったく、先が思いやられる。


アルマンドは、侯爵になる際のゴタゴタで政治派の貴族から目の敵にされていた。

公爵位を剥奪された豚は、他の貴族から援助を受け、商会を興すほどの商人になっている。

幾度かシュナが暗殺を試みたが、異常なまでに警戒されていて、手が出せない。

犠牲を顧みなければ不可能ではないらしいが、他に対する備えが甘くなる事を嫌ったフィリップがきつく止めている。

アルマンドの父を裏切った代官も、商会の幹部として生きながらえていた。


「夜までには、終わらせてくれよ。」


「焦ると、心が壊れる。いつまでとは、約束できんな。」


男は、涙を流し続けていた。

此処は、音を遮断する魔法がかけられている。

男の目には、絶望しかない。


まだ、生きたがっている、と言う事でもあった。

全てを喋るまで殺してもらえない。

男が、それに気付いた時、楽になれる。


もう何度も繰り返して来た事だった。

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