死神は甘く囁く
夢を見る。
帳の降りた毎晩の寝床で、私は自分を殺しにかかる。
何度も何度も。
だけれどおまえは、いつになったら成功するんだ?
呆れた囁きが耳に響いた。
あぁ、そうか。夢の中でさえ、自分は自分らしく不甲斐ないのだ。
憎らしく、その呼吸する喉元に手をあてる。
思考するために酸素がめぐる。涙するために血がめぐる。
憎らしく、その手に力は入らない。
夢から覚めて、確実な死が目の前にあるだろう?
「飛び降りてしまえばいい」
淡く光る羽衣は柔らかく舞い、美しい手をこちらへ広げる。なんて優しい招きだろう。
「何もかもがそこで終わる」
雄々しく羽ばたき舞う風は激しく、急かすようにこの身を煽る。なんて甘い誘いだろう。
心地好い誘惑に酔いながら、深い呼吸が鼻を抜けて目をつぶる。朝露を自らの糧にして、陽光で身体を解し、私の頬は知らずにゆるむ。
そうして、変化のない日常をやり過ごしてゆく。
いったい何度繰り返すのだ。
「私を責めるな」憎らしい。
死の前には生があり、死を感じればそこに生があらわれた。
いったい何度繰り返すのだ。
「私を責めるな」憎らしい。
私は握られた手を振りほどくこともできず、かと言ってこの身をゆだねてもあげられない。
死は、無で。死の先には何もないから。
今宵もまた、私は私の夢を見る。
最初にもどってループしましょう。
いつまで読むかは読者さま次第。