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異能者に転生したから現代最強を目指してみる ~僕以外、全員モブってことでいいよね?~  作者: パラレル・ゲーマー


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第8話

 週末の深夜。

 場所は東京湾岸エリアにある、マジェスティック・トゥエルブの極秘セーフハウス(隠れ家)。

 表向きは外資系企業の物流倉庫だが、その地下には対爆仕様の射撃レンジが完備されている。


「……これか」


 僕は目の前のジェラルミンケースを見つめ、ゴクリと喉を鳴らした。

 ジェームズがゆっくりとラッチを外し、蓋を開ける。

 ウレタンの緩衝材に鎮座していたのは、鈍い黒鉄色を放つ「暴力」の結晶だった。


 『XM-13 "Van Helsing"』。


 デカい。

 分かっていたことだが、実物を前にするとその威圧感に息を呑む。

 全長は30センチを超え、銃身の下には魔力冷却用のウェイトが追加されている。

 グリップには滑り止めのチェッカリングと、聖書の一節を模した封印術式が刻印されていた。


「約束のブツだ。弾薬アモは3ケース。通常弾、聖銀弾ミスリル、そして徹甲榴弾(AP-HE)だ」

「最高だね……」


 僕は震える手で――いや、武者震いを抑えながら、そのグリップを掴んだ。

 ズシリとした重みが腕にかかる。

 片手で持ち上げる? 無理だ。8歳児の筋力では、持ち上げた瞬間に手首が悲鳴を上げる。重さは優に3キロを超えている。

 だが僕はすぐに『念動力』を起動した。

 見えない補助アームで銃を包み込み、重力を相殺する。


「……ふっ」


 浮いた。

 まるで羽根のように軽く、しかし手の中には確かな鉄の冷たさがある。

 僕は銃口をレンジの奥に向け、両手で構えた(形だけだが)。


「試射するか?」

「当然!」


 ジェームズが防音イヤーマフを投げてよこす。

 僕はそれを装着し、レンジの50メートル先に設置されたターゲット――厚さ10センチのコンクリートブロック――を見据えた。


 安全装置セーフティ解除。

 初弾装填。

 ガシャコンと重厚な金属音が響く。この音だけで白飯が食える。


反動制御リコイル・コントロール……全開!)


 僕は『身体強化』で骨格を補強し、『念動力』で銃身を空間に固定ロックする。

 トリガーに指をかけ、絞る。


 ドォォォォォン!!!!


 発砲音ではない。爆発音だ。

 マズルから紅蓮の火花マズルフラッシュが噴き出し、衝撃波が倉庫の空気を震わせた。

 空間固定していなければ、僕の体ごと後ろに吹き飛んでいたかもしれない凄まじい反動。

 だが放たれた13mm弾は一直線に飛び――。


 バゴォッ!!


 ターゲットのコンクリートブロックが粉々に砕け散った。

 穴が開いたのではない。運動エネルギーが大きすぎて、標的そのものが破裂したのだ。


「……ヒュウ」


 僕は硝煙の匂いを吸い込み、口笛を吹いた。

 化け物だ。

 魔法で同じ威力を出すことはできる。だが、この「物理的な破壊力」の感触は魔法にはない快感だ。

 魔力抵抗レジストが高い相手でも、これなら物理で強引に貫ける。


「気に入ったか?」

「ああ。名前をつけなきゃな……『ケルベロス』とかどう?」

「中二病だな。まあ君には似合いだ」


 ジェームズは肩をすくめ、新しいターゲットをセットした。


***


 試射を終え、銃を『異空間収納』に放り込んだ後。

 僕とジェームズは倉庫の休憩スペースで、缶コーヒーを飲んでいた(僕は微糖のカフェオレだが)。


「さて銃の礼は言った。……で『面白い情報』ってのは?」


 僕が切り出すと、ジェームズの表情が曇った。

 彼は端末を取り出し、一枚の衛星写真を表示した。

 場所は東名高速道路。

 そこには横転したトラックや、ひしゃげたガードレールが点々と映っている。


「昨夜の映像だ。……『西』から一匹の獣が脱走した」

「獣?」

「比喩だ。正体はTier 2クラスの『オニ』だ」


 Tier 2。

 僕の目が輝く。国家戦略級。ソウジさんや爺さんクラスの大物だ。

 それが脱走?


「どこから?」

「京都だ」


 ジェームズが短く告げる。

 京都。あの閉鎖的な魔都。


「京都の『御言みこと家』が管理していた封印地から、強力な鬼神が逃げ出したらしい。奴は東へ……つまりこの東京に向かって移動している」

「へえ。京都の管理不行き届きじゃん。八咫烏には連絡は?」

「それがない。……ここが面白いところだ」


 ジェームズはニヤリと笑った。


「御言家はこの件を隠蔽しようとしている。八咫烏に協力を仰げば、自分たちの失態を認めることになるからな。奴らは独自に追っ手(始末屋)を差し向けているが、鬼の足が速すぎて追いつけていない」

「なるほど。メンツのために東京を危険に晒すわけか。……クソだね、陰陽師ってやつは」


 僕は呆れる。

 だが状況は理解した。

 Tier 2の怪物が制御不能の状態で東京に迫っている。

 そして公式には「存在しない」ことになっているため、八咫烏の主力部隊は動いていない。


「つまり誰かが、内密に処理しなきゃいけないわけだ」

「そういうことだ。八咫烏が気づいて迎撃態勢を整える頃には、神奈川あたりが火の海になるだろう」


 ジェームズは僕を見た。


「どうする? 無視して寝るか? それとも新しいオモチャ(銃)の試し撃ちに行くか?」


 愚問だ。

 僕は飲み干した缶をゴミ箱に投げ入れた。

 カランと乾いた音が響く。


「決まってるでしょ。……僕のシマ(東京)に入ろうとする不届き者には、通行料を払ってもらわないとね」


***


 深夜の東名高速道路。

 下り車線は静かだが、上り車線――東京方面へ向かう道路は異様な事態になっていた。


 ドゴォォォォン!!


 走っていた大型トレーラーが正面から「何か」に衝突し、紙細工のようにくしゃりと潰れて宙を舞った。

 アスファルトが捲れ上がり、火花が散る。


「ガアアアアアアアッ!!」


 咆哮。

 爆煙を突き破り疾走するのは、一台の……いや、一匹の怪物。

 身長3メートル近い巨体。全身が赤黒い筋肉の鎧で覆われ、額からは二本の太い角が生えている。

 『剛力鬼ごうりきき』。

 日本の怪異の中でも、純粋な物理戦闘力に特化した上位種だ。


 鬼は四つん這いで、時速100キロを超える速度で走っていた。

 邪魔な車を撥ね飛ばし、ガードレールを引き裂きながら一直線に東を目指す。

 その目には理性がなく、ただ「破壊」と「逃走」の本能だけが渦巻いている。


 ――ヒュオッ。


 その鬼の頭上。

 夜空を滑空する小さな影があった。

 僕だ。

 『風圧操作』と『重力制御』を併用し、上空から鬼を追尾している。


(うわデカいな……。あれがTier 2か)


 眼下の惨状に舌打ちする。

 既に数台の車が巻き込まれている。一般人の犠牲者が出ているだろう。

 八咫烏の初動が遅れたせいで、被害が拡大している。

 京都の連中、後で絶対文句言ってやる。


『虚様、ターゲット確認。……推定脅威度Tier 2です。単独での接触は危険です! 応援を待ちますか?』


 インカムから、僕の専属オペレーター(田中の部下)の焦った声が聞こえる。

 僕は既に現場に入っていたため、事後承諾で八咫烏のサポートを受けさせていた。


「応援なんて待ってたら、世田谷あたりまで突っ込まれるよ。ここで止める」

『しかし……! 相手は物理耐性が極めて高い個体です! 通常の術式では……』

「大丈夫。今日は『特効武器』を持ってるから」


 僕は高度を下げる。

 異空間から愛銃『ケルベロス(仮)』を取り出す。

 空中で構える。

 風切り音がうるさいが、集中力は乱れない。


「ねえ鬼さん。スピード違反だよ」


 僕は鬼の進行方向に先回りし、高速道路の高架の上に降り立った。

 鬼が気づく。

 赤い瞳が僕という障害物を捉える。


「グルルルル……ッ!」


 減速しない。

 むしろ加速した。

 8歳の子供など路上の小石と同じように踏み潰せると判断したのだろう。

 猛烈な殺気と質量が迫ってくる。

 普通なら恐怖で足がすくむ場面だ。

 だが僕は笑った。


(的がデカくて助かるよ)


 距離200メートル。

 150。

 100。


 鬼が跳躍した。

 その巨腕を振り上げ、僕を叩き潰そうとする。

 僕は一歩も動かない。

 ただ銃口を鬼の眉間に向け、念動力で固定する。


「――『チェックメイト』」


 トリガーを引く。


 ズドン!!!!


 夜の高速道路に、雷鳴のような轟音が響いた。

 発射されたのは13mm徹甲榴弾。

 鬼の皮膚は、戦車砲すら弾くと言われる『金剛皮こんごうひ』だ。

 だがマジェスティックの科学力と、僕の魔力が乗ったこの弾丸の前では、それは薄紙に等しい。


 バチュンッ!!


 着弾。

 鬼の額、角と角の間に風穴が開く。

 そして一瞬遅れて、頭蓋骨の内部で弾頭が炸裂した。


 ドパァン!!


 鬼の頭部が内側から爆発して消し飛んだ。

 首から上がなくなった巨体は、慣性だけで僕の方へ飛んできて――。


「っと」


 僕は軽く横にステップして避ける。


 ズザザザザザ……ッ!!


 鬼の死体はアスファルトを削りながら滑っていき、数十メートル後ろで停止した。

 沈黙。

完全な即死だ。


「……反動キツいなぁ」


 僕は肩を回した。

 念動力で相殺しても、骨に響く衝撃だ。

 でもその威力は本物だった。Tier 2を一撃。これなら神様相手でも通用するかもしれない。


 僕は銃口から立ち上る硝煙を吹き消し、銃を収納しようとした。

 その時だ。


「――何者どすか?」


 鈴を転がすような、しかし氷のように冷たい声が響いた。


***


 声の主は、高速道路の防音壁の上に立っていた。

 月を背にしたシルエット。

 狩衣かりぎぬのような和装に長い黒髪。

 顔には狐の面をつけている。


「……誰?」


 僕は警戒レベルを引き上げる。

 気配がなかった。

 今の今まで、僕の『魔力感知』に一切引っかからなかった。

 それはつまり、相手の隠蔽技術が僕と同等か、それ以上だということだ。


「ウチの獲物を横取りするなんて、ええ度胸してはりますなぁ。東京のカラスさんは、マナーも知らへんのですか?」


 狐面の少女(声の高さからして僕と同じくらいの年齢だろう)は、ふわりと舞い降りた。

 重力を感じさせない動き。

 そしてその手には何も持っていないが、周囲の空気が歪んでいる。


「獲物? ああ、この死体のこと?」


 僕は首なしの鬼を指差す。


「悪いけど、東京に入ろうとした害獣を駆除しただけだよ。飼い主がしっかり鎖を繋いでおかないから、こうなるんじゃない?」


「……減らず口を」


 少女の周囲で、空気がバチバチと鳴る。

 呪力だ。

 それも、僕が見てきた野良の呪言使いとは質が違う。

 濃密で、古臭くて、そして重い。


「その鬼はウチら『御言家』の管理下にある実験体どす。生け捕りにして連れ帰る手筈やったのに……頭を吹き飛ばされては、研究材料にもならへん」

「へえ。やっぱり御言家か」


 本家のお出ましだ。

 僕は内心で舌なめずりをする。

 コピーのチャンスだ。

 Tier 2の鬼よりも、こっちの少女の方が遥かに「レア」な獲物だ。


「じゃあ弁償でもしろって? 断るよ。こっちは道路の清掃代を請求したい気分なんだ」

「弁償なんかいらへん。……その代わり」


 少女がスッと指を僕に向けた。

 印を結ぶわけでもない。ただの動作。

 だが僕の『未来視(数秒先の予測)』が、強烈な警報を鳴らした。


 【死】。


 直感ではない。確信としての死の予感。

 彼女が口を開く。


「――【平伏せ(ひれふせ)】」


 ドンッ!!!!


 重力魔法ではない。

 世界そのものが僕に対して「土下座しろ」と命令してきたような感覚。

 膝が笑う。脳が命令を受け入れそうになる。

 魂の格付け(ランキング)を強制的に書き換えられ、僕という存在が彼女よりも「下」であると定義される。


(ッ……これか! これが『本家』の呪言か!)


 凄い。

 僕が使っていた『動くな』なんて可愛いものだ。

 これは『従え』という概念攻撃だ。


「ぐぅ……ッ!」


 僕は歯を食いしばり、膝をつくのを堪える。

 『精神障壁』全開。魔力回路をフル回転させ、侵入してくる呪いを焼き払う。


「……あら? 耐えるんか」


 狐面の奥で、少女が目を細めた気配がした。


「普通の術師なら、今のひと言で魂ごと潰れるんやけどなぁ。……あんさん何者?」


 彼女の興味が、死体から僕へと移った。

 好機チャンス

 僕は冷や汗を流しながらも、口角を吊り上げる。


(解析完了。……構成術式、音声パス、因果干渉コード。全部見えた)


 僕の目は既に、彼女の術理を丸裸にしていた。

耐えた甲斐があった。

 これで僕の呪言レパートリーに、最強のピースが加わる。


「僕は六式 虚。……東京こっちじゃあ、ちょっとした有名人だよ」


 僕は『身体強化』で無理やり呪縛を振りほどき、まっすぐに立った。


「今の挨拶、痛かったよ。お返ししなきゃね」

「ほう? ウチに呪い合戦を挑む気ぃか? ええ度胸や」


 少女が袖を振り、臨戦態勢をとる。

 一触即発。

 東京の最強と、京都の麒麟児。

 ここでやり合えば、高速道路どころかこの区画一帯が更地になるだろう。


 だがその時。

 遠くからパトカーのサイレンと、八咫烏の到着を知らせるローター音が聞こえてきた。

 邪魔が入った。


「……チッ。カラスが湧いてきよったか」


 少女は舌打ちをし、構えを解いた。


「今日はこれくらいにしといたるわ。鬼の処分はあんさんらに任せる。……けどな、六式 虚。名前は覚えたで」

「そりゃ光栄だね」

「次はその可愛らしいお口、利けんようにしてあげるさかい。精々首を洗って待っとき」


 言い捨てると、彼女は霞のように姿を消した。

 『縮地』とも違う、純粋な空間転移か、あるいは認識阻害か。

 逃げ足も一流だ。


「……はあ」


 彼女の気配が完全に消えたのを確認して、僕は大きく息を吐き、その場に座り込んだ。


「キッっつ……。今のマジでヤバかったな」


 膝が震えている。

 13mm拳銃の反動のせいじゃない。

 あの少女の「格」に、本能が恐怖したのだ。

 Tier 2の鬼なんて目じゃない。あの子は将来、間違いなくTier 1、あるいはTier 0に届く逸材だ。


「……楽しくなってきたじゃん」


 僕は震える手を見つめ、ニヤリと笑った。

 銃を手に入れたその日に、銃でも殺せないかもしれない化け物に出会う。

 なんて素晴らしいバランス調整だ。

 神様(運営)も、たまには粋なことをする。


 僕は立ち上がり、近づいてくる八咫烏の車両に向かって手を振った。

 新しいオモチャ(銃)と、新しい目標ライバル

 8歳の夜は、まだまだ終わりそうにない。


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