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異能者に転生したから現代最強を目指してみる ~僕以外、全員モブってことでいいよね?~  作者: パラレル・ゲーマー


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第13話

 ドォォォォン!!


 深夜のパーキングエリア。

 アスファルトが捲れ上がり、数トンの瓦礫が散弾のように飛び散る。

 それを引き起こしたのは、真紅のマントを翻した吸血鬼の貴族――『吸血公・アルカード』が放った無数の血の槍だった。


「死ねッ! 死に絶えろ、化け物めッ!!」


 アルカードの形相は、貴族の冷静さをかなぐり捨て、恐怖と憎悪に歪んでいた。

 彼が生成する『真祖の血槍』は、ダイヤモンド並みの硬度を持ち、音速を超えて標的を貫く。

 まともに食らえば戦車すらハチの巣になる、致死の豪雨だ。


 だが。


「……遅い」


 僕はあくびを噛み殺しながら、その豪雨の中を歩いていた。

 槍が迫る。

 眉間へ、心臓へ、喉元へ。

 僕は首を僅かに傾け、半歩横にズレ、時には手の甲で軽く払う。


 キンッ、カカンッ、パァン!!


 直撃コースだった槍がすべて紙一重で逸らされ、背後の地面やトラックに突き刺さる。

 魔法障壁バリアは使っていない。

 『念動力』による補助もない。

 ただの素の動きだ。


「ハハハ、便利だな、これ」


 僕は自分の体を確かめるように、軽くステップを踏んだ。

 軽い。羽が生えたようだ。

 以前までの僕なら、これだけの機動を行うには『身体強化ブースト』の術式を常時発動し、魔力を消費し続ける必要があった。

 だが今は違う。


身体能力強化ブーストしなくても、これだけ動けるのは便利、便利。……燃費が段違いだよ」


 剛力鬼からコピーした『怪力乱神(S)』と『金剛皮(A)』。

 これらはアクティブスキル(発動型)であると同時に、パッシブスキル(常時型)としての側面も持つ。

 僕の基礎ステータスそのものが、人間という種族の枠を超え、Tier 2の鬼神クラスに書き換えられているのだ。


「クソッ、速いし、パワーが桁違いだ!!! どうなっている!?」


 側面から襲いかかってきたのは『都市伝説・カシマ』だ。

 彼は実体を持たない概念怪異。

 高速移動というよりは「瞬間移動テレポート」に近い動きで、僕の死角から鎌を振り下ろす。


「そこ」


 僕は振り返りもせず、裏拳を放った。


 ドゴォッ!!


 空気が爆ぜる。

 カシマの鎌と僕の小さな拳が激突する。

 本来なら肉が斬り裂かれるはずの攻防。

 だが現実は違った。


「ギャッ!?」


 カシマが悲鳴を上げて吹き飛ぶ。

 鎌の刃が欠け、彼の手首がありえない方向に曲がっている。

 僕の拳は無傷。かすり傷ひとつない。


「剛力鬼の能力を、そのまま使えるのか……! しかも、オリジナル以上の出力で!」


 カシマが戦慄の声を上げる。

 そう、オリジナル以上だ。

 剛力鬼は筋肉バカだったが、僕はそこに『六式流古武術』の理合テクニックを乗せている。

 同じエンジンを積んでいても、ドライバーの腕が違えば、マシンの性能は別物になる。


「ハハハ、興が乗ってきたよ」


 僕は笑う。

 楽しい。

 新しいスペックのテストドライブには、彼らは最高のサンドバッグだ。

 だが、ただ殴り合うだけじゃ芸がない。

 せっかくのお客さんだ。

 もっと絶望的な「手品マジック」を見せてあげよう。


「ねえ、君たち。……少し、びっくりさせようか」


 僕は立ち止まり、足元の影を見下ろした。

 ニヤリと口角を吊り上げる。


          ***


「……何をする気だ?」


 アルカードが警戒し、距離を取る。

 賢明だ。だが、もう手遅れだ。

 僕は右手を掲げ、パチンと指を鳴らした。


「――『調伏術式サモン・サーヴァント』」


 ボコォッ……。


 不気味な音がした。

 僕の足元の影が、まるで沼のようにドロドロと溶け出し、広がっていく。

 漆黒のタールのような闇。

 そこからズズズ……と「何か」が競り上がってくる。


 巨大な質量。

 見覚えのあるシルエット。

 二本の角、丸太のような腕。


「……ガアアア……」


 低く、地獄の底から響くような唸り声。

 闇の中から完全に姿を現したのは――つい先刻、僕が殺したはずの『剛力鬼』だった。

 ただし、その体は生前のような赤黒い色ではなく、影のような漆黒に染まり、目は青白い燐光を放っている。


「あっ? ど、どういうことだ……!? 剛力鬼!?」


 カシマが目を疑うように叫ぶ。


「死んだと思ったら!! なんで生きてる!? いや、死んでるのか!?」


 混乱する妖魔たち。

 無理もない。

 目の前の剛力鬼からは、生気ライフは感じられない。

 だが、強烈な魔力と殺意だけが、以前よりも純度を増して漂っている。


「ハイハイ、じゃ、戦ってね」


 僕が軽く手を振ると、影の剛力鬼は「グルルッ」と従順に頷き、アルカードたちに向き直った。


「なっ、貴様……まさか!」


 アルカードが青ざめる。


「僕の術式はコピーだけど、その中に『調伏術式』があってね」


 僕は解説ネタばらしをしてあげる。

 これは以前、退魔師協会に所属する『式神使い』の老人からコピーした能力だ。

 本来は弱らせた霊を紙の人形に封じ込める程度の技だった。

 だが、僕が使うと、こうなる。


「倒した妖魔・怪異・魔物を吸収して、僕の魔力で再構築リビルドし、使役出来るのさ」


 倒した敵は経験値になるだけじゃない。

 装備品アイテムとしてドロップするのだ。

 これが僕の『万象模倣』の真の恐ろしさ。

 能力ソフトだけでなく、そのハードすらもコピーし、支配下に置く。


「つまり、君たち全員……僕の奴隷コレクションね!」


 宣言と同時。

 影の剛力鬼が爆発的なスタートを切った。


 ドゴォォォォン!!


 生前よりも速い。

 なぜなら肉体のリミッター(痛覚や疲労)が存在しないからだ。

 影の巨体がカシマに肉薄する。


「ひぃッ!?」


 カシマは慌てて霧になって回避しようとするが、剛力鬼の腕がそれを薙ぎ払う。

 影の腕は実体のないカシマをも捉える。

 同じ「霊的質量の塊」だからだ。


「ギャアアアッ!!」


 カシマが地面に叩きつけられる。


「さあ、第2ラウンドだ。……2対2のタッグマッチといこうか」


 僕はアルカードに向かって歩き出す。

 僕の背後には圧倒的な暴力の化身(剛力鬼)が控え、僕自身もまた、その剛力鬼以上の力を秘めている。

 これほど絶望的な「無理ゲー」が、他にあるだろうか。


          ***


「おのれ……! おのれぇぇぇッ!!」


 アルカードが咆哮する。

 プライドの高い吸血鬼にとって、仲間を傀儡マリオネットにされ、自分たちに向けられる屈辱は耐え難いものだろう。


「『血のブラッド・ケージ』!!」


 彼が両手を広げると、周囲の空間から鮮血が噴き出し、僕を閉じ込める檻となって襲いかかる。

 拘束魔法か。

 Tier 2の魔力が込められた強力な呪い。


「邪魔」


 僕は腕を一振りした。


 ブンッ!!


 ただの腕の風圧。

 それだけで血の檻が霧散した。


「なッ……魔法を物理で……!?」

「言ったでしょ? パワーが桁違いだって」


 魔法というのは所詮は魔力の構成物だ。

 その構成強度を上回るエネルギーをぶつければ、理屈抜きで破壊できる。

 今の僕の拳には、剛力鬼の怪力に加えて、高密度の『念動力』がコーティングされている。

 魔法殺しの鉄拳だ。


「終わりだ、吸血鬼」


 僕は一瞬で距離を詰める。

 縮地。

 アルカードの反応速度を超えた移動。

 彼の懐に入り込み、鳩尾に拳をめり込ませる。


「ガハッ……!?」


 アルカードの体が、くの字に折れる。

 内臓が破裂し、脊髄が砕ける感触。

 吸血鬼特有の『再生能力』が働こうとするが、僕が流し込んだ魔力がそれを阻害する。


「僕も『再生』持ってるからね。どうやれば再生を止められるかも、なんとなく分かるんだよ」


 僕は彼の襟首を掴み、地面に叩きつけた。


 ドシャアッ!!


 アルカードが血反吐を吐いて動かなくなる。


 一方、カシマの方も決着がついていた。

 影の剛力鬼に首を掴まれ、宙吊りにされている。


「はな、放せ……! 俺は都市伝説だぞ……! 消えるわけには……」

「グルルル……」


 剛力鬼は慈悲などない。

 僕の命令に従い、カシマの全身の骨を握力だけで粉々に砕いていく。

 メキメキ、バキバキと嫌な音が響く。


「はい、お疲れ様」


 僕は動かなくなったアルカードを引きずり、カシマの元へ歩み寄る。

 二人のTier 2怪異。

 数分前までは東京を恐怖に陥れようとしていた革命軍のリーダーたち。

 今はただの壊れたオモチャだ。


「さて、仕上げといこうか」


          ***


 僕は再び足元の影を広げた。

 今度は召喚ではない。捕食のための『口』だ。


「そして、身体能力で剛力鬼と二人でアルカードとカシマを倒して……吸収する」


 ズブブブブ……。

 僕の影が瀕死の二人を飲み込んでいく。

 アルカードが最後に怨嗟の声を上げた。


「きさま……。これほどの力を持ちながら……なぜ人間の側に……」

「人間側?」


 僕は首を傾げる。


「勘違いしないでよ。僕は人間側とか怪異側とか、そんなのどうでもいいんだ」


 影が彼の顔を覆う。


「僕はただ、この世界ゲームを一番楽しみたいだけ。……そのために君たちは便利な経験値リソースになるんだよ」


 ズズッ。

 完全に飲み込まれた。

 気配が消える。

 そして次の瞬間、僕の脳内に快感と共にインフォメーションが走る。


 【調伏完了:吸血公・アルカード(Tier 2)】

 【調伏完了:都市伝説・カシマ(Tier 2)】

 【獲得スキル:『真祖の血魔法』『霧化』『恐怖伝播』……】


 力が湧いてくる。

 彼らの持っていた魔力知識、そして特殊能力が、僕の中でライブラリ化されていく。

 さらに影の中には今、三体の強力な下僕(剛力鬼、アルカード、カシマ)がスタンバイしている状態だ。


「……ふふっ」


 笑いが止まらない。

 大漁だ。

 京都から逃げてきたTier 2の鬼一匹を狩るつもりが、オマケでTier 2の部下が二体も手に入った。

 これで僕の『私設軍隊』は一気に強化された。


「便利な手駒ゲットだぜ!!!」


 僕は夜空に向かって、どこかのアニメの決め台詞を叫んだ。

 9歳児らしい無邪気さで。

 でも、その足元には地獄よりも深い闇が広がっている。


 僕は影の剛力鬼を収納し(シュッと影に吸い込まれるのがカッコいい)、隠蔽結界を解除した。

 パーキングエリアの風景が戻ってくる。

 誰もいない。何もなかったかのような静寂。


 ただ、僕の影だけが以前よりも濃く、長く伸びている。


          ***


 車に戻ると、田中の顔が少し青ざめていた。

 結界の外にいたとはいえ、中の凄まじい魔力の波動を感じ取っていたのだろう。


「……虚様。終わりましたか?」

「うん。終わったよ。……ああ、お腹すいた」


 僕はシートにドカッと座り、伸びをした。

 魔力的な意味では満腹だが、物理的な意味では腹ペコだ。


「コンビニ寄って。肉まん食べたい」

「……御意。……あの、集まっていた怪異たちは?」

「食べた」


 僕の言葉に、田中はハンドルを握る手を滑らせかけた。

 比喩だと思ったのだろうか。

 それとも文字通りの意味だと悟ったのだろうか。

 彼は何も聞かなかった。

 それが賢い従者の処世術だ。


 車が走り出す。

 東京の夜明けが近い。

 西の空が白み始めている。


(さて、手駒も増えたし……次はどうしようかな)


 僕は脳内で、新しい手駒たちのステータス画面を眺める。

 アルカードの『吸血魔法』。これを使えば、分身の持続時間をもっと伸ばせるかもしれない。

 カシマの『都市伝説化』。これを使えば、情報の拡散や隠蔽が自在になる。

 剛力鬼は……まあ、荷物持ちか鉄砲玉だな。


 京都の御言家の少女。

 マジェスティックの思惑。

 そして、まだ見ぬTier 0の神々。


 僕の手札は揃いつつある。

 そろそろ次のステージへ進む時かもしれない。


「……楽しみだなぁ」


 僕は窓に映る自分の顔を見た。

 そこには、9歳の子供の顔をした貪欲な捕食者が笑っていた。

 東京の平和は守られた。

 ただし、もっとタチの悪い怪物の支配下において、だが。

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― 新着の感想 ―
喰われた(コピーされた)のは奴らの方だったな
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