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 ――他にやりたいことはないのか。

 あったとしても、もう遅いよ。

 ――何年だ。

 聞いてどうする。

 ――いや、どうもしない。

 四十年以上じゃないかな。

 ――最初に書いたのは。

 小学生のときに何故か西部劇。

 ――未完か。

 影響元さえ忘れたな。

 ――漫画も描いてただろ。

 才能がないとすぐにわかって止めた。

 ――文才はあるのか。

 マジで天才だと思っている。

 ――それなら売れてるはずだろう。

 それが、わたしにも不思議過ぎるんだ。

 ――鬼の童話は良かったな。

 誰にも理解されなかったじゃないか。

 ――四日目の朝に泣きながら帰って来た男の子のお話です。

 三日間人間を喰わないと死んでしまう鬼の……子供時代の話だな。

 ――結局あの結末の意味は。

 子供の頃は鬼は何でも喰えるんだが……。

 ――つまり不意に大人になった鬼の子の餓死か。

 そう解釈ってくれた人が何人いたか。

 ――おまえが訊かなかったからだろう。

 作者の手を離れた話は読者のモノだ。

 ――解釈を支配したがる作者もいるぞ。

 そもそも読者がいないのだから話にならない。

 ――だな、諦めるか。

 正直、話を書いていないときはそう思うこともあるが、いざ書き始めるか、あるいは過去作を読み直すと正直面白過ぎて困ってしまう。

 ――世の中には自作を読まない作家がいるよ。

 知っているけど、タイプが違う。

 ――知り合いに作家やイラストレーターが多いな。

 賞を獲って正面玄関から文筆業に入った仲間は一人だけさ。

 ――今は無き日本ファンタジーノベル大賞。

 経済がまわれば復活する。

 ――維持費だけか。

 そんなところだろう。

 ――エージェント制が……。

 日本にあれば良かったと思う。

 ――日本は賞が多いぞ。

 その代わり流行らない話は売れ先がない。

 ――面白ければ売れるだろう。

 その方向も考えるかな。

 ――分析はできると。

 でも、考えるのが面倒臭い。

 ――理系とも思えぬ発言だな。

 好きで進んだ道じゃないからね。

 ――できることをやるのが一番だ。

 好き勝手やってたあなたがよく言うよ。

 ――人に恵まれたからな。

 その点については感心する。

 ――だから友だちを作れば良いんだ。

 休みの日に家に引きこもって小説書いてる女に誰が付き合うかよ。

 ――恋愛は糧だぞ。

 あなただって浮気は一度しかしなかった。

 ――バレたのはな。

 それにしたって多くはないはずだ。

 ――若い頃は地方営業で一人が多かったから何でも出来たよ。

 可能性の話は聞きたくないな。

 ――お母さんに惚れてたんだよ。

 お母さんの方はそうでもなかったみたいだけど。

 ――最初は違った。

 当時向こうに婚約者がいたという噂は……。

 ――そんなことを誰に聞いた。

 噂は何処からでも立ち上るよ。

 ――いずれ求婚される予定だったらしいが、当時まだ高校生だ。

 そしてあなたは先生か。

 ――ドラマとは違うさ。

 枠だけはドラマみたいだが。

 ――おまえが生まれたときは嬉しかったな。

 北海道のじいさんが東京の出身だとは、ずいぶん後まで知らなかったよ。

 ――恐くて頭の良い人だった。

 天国では会わないのか。

 ――そういえば、会ったことがないな。

 あなたは死んだ後、何をしていたんだ。

 ――おまえに呼び出されるまでは眠っていたよ。

 にしても、夢くらいは見ていただろう。

 ――憶えてないな。

 そういうシステムなのか。

 ――システムも何も、人それぞれだ。


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