表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

 あなたにしてみれば、わたしは対等以下だろう。

 ――そんなことはないさ。

 謙遜。

 ――おれには特許は取れんし、理系のこともわからんよ。

 その世界に浸かれば大したことじゃない。

 ――同じ言葉を返そうか。

 あなたは人間好きだろう。

 ――人間嫌いが小説を書くのか。

 嫌いというわけじゃないが、似たような誰かが近くにいなかった結果かな。

 ――前例のないことをやっても誰も認めてはくれんよ。

 そうだな、選者の意気込みは別にして……。

 ――商業出版社が向こう受けしない話をピックアップするはずがない。

 親や親戚に有名人がいない場合には。

 ――僻みか。

 いいや、でもそうかも。

 ――素直になったな。

 ストレスはいらないと学んだだけさ。

 ――辛いと感じるのなら止めれば良い。

 書くことそれ自体は楽しいんだ。

 ――それなら、それで良いじゃないか。

 人には煩悩があるんだよ。

 ――だったら、煩悩は恋愛にしろ。

 沢山だ。

 ――というほど経験豊富とも思えんが……。

 あなただって同じだろう。

 ――根がビビリだからな。

 それはわたしも継いでいる。

――ビビリなおもて全方位外交。

 親鸞は人によるだろう。

 ――壁。

 知ってる。

 ――失敗なんて恐くないよ。

 だとしてもアレだろう。

 ――アレとは。

 就活中の学生がエントリー先に相手にされず、されてもあっけなく落とされて、弾かれた会社の数が数十件となく増大して絶望する感じか。

 ――ああ。

 世の中におまえは要らない人間だと何度も言われれば、いずれ思い知らされて自信をなくす。

 ――おまえには居場所があるじゃないか。

 会社は腰掛に過ぎないのさ。

 ――それじゃ楽しいわけがないな。

 実験しているときは楽しいよ。

 ――実験には人が関わらないから。

 さて。

 ――関わった方が楽しいぞ。

 そうかもしれないが、時間がない。

 ――遊べ、遊べ、小説なんて打っちゃておけ。

 無責任だな。

 ――死者だからさ。

 今度止まったら、そっちへ行くぞ。

 ――ビビリだから死ねないよ。

 腹が立つ言い方だな。

 ――多摩川の水は冷たかったか。

 セーヌ川ほどじゃ無いな。

 ――ジョン・ヒューストンは職人だ。

 ああ、『赤い水車』のことか。

 ――いつのことだ。

 高校生のときだろうな、きっと、中学の頃はもっと子供だったはずだ。

 ――場所は。

 最後は飛田給駅に行き着いた記憶があるが、西武多摩川線を覚えているから、競艇場近くだったんだろう。

 ――恐くて止めたか。

 最初から死ぬ気なんてない、とわかって止めた。

 ――お母さんに電話しただろ。

 一生の不覚だと思うが、証拠が欲しかったんだ。

 ――今にして思えば。

 今思えば、また違う答もある。

 ――それ一回だけか。

 気づいたんだよ。

 ――何を。

 格好良く言えば、負けるのは嫌だって……。

 ――バカだな。

 知ってる。

 ――それに頑固だ。

 いや、そうでもないよ。

 ――おれよりは頑固だろう。

 同じくらいさ。

 ――負けると思ってるのはおまえだけだぞ。

 そりゃそうだろ、自分のことだ。

 ――だが相手がある。

 懸賞小説に応募する限り、確かにそうだな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ