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手を振る幽霊兵

 最後のカッターが駆逐艦『アキクモ』に横付けする。

網梯子を残兵達が必死に登り始める。

負傷兵に手を貸す戦友(負傷兵)達。


 負傷兵「すまんのう。指を飛ばされてしまって・・・」

 戦友「何を言ってる。一緒に帰るんだ。ほら、右足! 右足を上げろ・・・そうだ」

 負傷兵「すまん。すまん・・・」


 艦上の菊池中佐、「木原少尉」、「関元曹長」、「福原軍曹」、「河野上等兵」、「木村上等兵」、「大宮一等兵」、「森二等兵」が手すりに掴まり、今まで居た岬を見ている。

菊池が岬で手を振る数十人の残兵(幽霊兵)を見付ける。


 菊池「あ! まだ兵が居る。 戻れッ! 彼等を乗せなければ」


甲板に居る水兵が、


 水兵「だめです! 陽が昇っています。午前中に撤収を終了せよとの艦長の命令です」


菊池は水兵を睨み、


 菊池「キサマ、仲間だぞ。戻れッ! 艦長を呼べッ!」

 水兵「ダメですッ!」

 菊池「水兵。頼む。もう一度戻ってくれ」

 水兵「だめです! 戻ったら、全員やられます。三日後にもう一度、救援隊が来ます。そちらに任せましょう」


関元達(六人)も、


 関元達「頼む! 頼む。何とか戻ってくれ・・・」

 木原「お願いです。仲間なんです。戻って下さい。あの兵隊達は・・・命の恩人なのです」

 菊池「・・・諦めよう。彼等には申し訳け無いが・・・」


菊池はじっと岬の砂浜を見詰めて唇を噛みめる。

関元達は砂浜に立つ幽霊兵達に「挙手の敬礼」をして、深く『合掌』する。

四隻の駆逐艦のスクリュー音が不規則に唸りだす。

木原達を乗せた駆逐艦が船主を返し、徐々に速度を上げて行く。

すると一隻の警戒駆逐艦が急に船主を返し、ガダルカナルの岸に近づいて行く。

それを見ていた菊池中佐が水兵に、


 菊池「? あの艦は何をしているんだ」

 水兵「? 分りません」

 木原「・・・やられるぞ」


                              つづく

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