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野村伍長が消えて逝く

 太陽が熱く照らし始める。

菊池部隊の最後尾の兵隊がカッターに乗り込もうとする。

その兵隊は振り向いて、


 兵隊「伍長殿。先に乗って下さい」


野村(幽)が、


 野村「俺は良い。構うわずに早く乗れ!」

 兵隊「? 乗らないのですか?」

 野村「良いんだ。まだやり残した事が有る。行け!」


兵隊は怪訝な顔をしてカッターに乗り込む。

兵隊が振り向くと野村は消えている。


 兵隊「? 伍長殿? あれ?・・・伍長殿?・・・何処に行ったんだろう」


 菊池中佐が周囲を確認して最後のカッターに乗り込む。

四人の水兵が挙手の敬礼をして、


 水兵「ご苦労様でした。菊池部隊は以上でありますか?」

 菊池「うん?・・・」


菊池が傍に居る木原を見て、


 菊池「おい、少尉」

 木原「はい」


菊池がもう一度、木原に確認する。


 菊池「さっきまで隊を先導してくれた、あの准尉と軍曹は乗ったのか」

 木原「え? あッ、はい。乗っている筈です」

 菊池「そうか・・・」


菊池は水兵を見て、


 菊池「以上だ」

 水兵「はい! では・・・出発します」


最後のカッターが岸を離れる。

カッター内で菊池が木原を見て、


 菊池「キサマ達は第2師団だったな」

 木原「はい。早坂中隊です」

 菊池「キサマの部隊はいったい何人残ったのだ」

 木原「七人・・・でしょうか」

 菊池「七人? さっき佐々木とか云う准尉に確認したら三二と言ったぞ」


木原は黙ってしまう。


 菊池「まあ良い。何処かに乗ったのだろう」


菊池達を乗せたカッターが海原を進む。


痩せた菊池が迎えの駆逐艦を見ながら一言。


 菊池「・・・此処の戦いは悲惨だったなぁ・・・」


                              つづく

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