軍服の汚れてない兵隊
藤田が野村(幽)に尋ねている。
藤田「野村伍長は何処に居たのだ」
野村「浜です」
藤田「ハマ? あそこで?」
野村の全身を見る藤田。
藤田「怪我は無いのか?」
野村「ハハハ、怪我だらけですよ」
藤田は不気味な眼で、舐める様に野村の「汚れてない軍服」を見る。
藤田「キサマ、それで怪我をしてると言うのか? 歩けるじゃないか」
野村「そうですね」
藤田は立ち止まり、
藤田「オマエは?・・・」
佐々木が菊池の前を進む。
菊池は前を歩く佐々木の『新しい軍装』を見て、
菊池「オマエ等の戦闘は無かったのか?」
佐々木は黙っている。
菊池が、
菊池「オマエは・・・?・・・」
佐々木が、
佐々木「中佐。私はあなた達を一兵たりとも残さずさこの島から撤退せる責任が有ります。黙って私達に付いて来て下さい」
菊池は立ち止まり、不気味そうに前を歩く佐々木を見ている。
行列に紛れ込み、必死に疲れ果てた兵隊達を支えている元早坂中隊の幽霊兵達。
細いジャングルのケモノ道。
やつれた負傷兵達が『蟻の行列』の様に進んで行く。
いつの間にかシンガリに付いている西山(幽)が、
西山「おい、遅れるな。頑張れ。しっかり付いて行け」
斉藤(幽)が、
斉藤「頑張れ、頑張れ。皆で故国へ帰るんだ」
兵隊達は泣いている。
残兵達がどんどん膨れあがる。
「皮だけ」の一人の兵隊Aが、後ろの「骨だけ」の丸腰の兵隊Bに話しかける。
兵隊A「おい! オマエは何処の部隊だ」
兵隊B「石井部隊だ」
兵隊A「石井部隊? 何人残った」
兵隊B「二九」
兵隊A「二九? 上陸時は」
兵隊B「三百だ」
皮だけの兵隊は驚いて、
兵隊A「三百で二九か・・・。大変だったのう」
兵隊B「・・・何日もろくな物喰ってねえんだ。あまり話しかけないでくれ」
兵隊A「そうか。・・・よかったら、これを喰え」
皮だけの兵隊が雑嚢から煮干しの様な物を取り出す。
兵隊A「ほら、喰え」
兵隊B「? スルメか」
兵隊A「・・・乾燥トカゲだ」
骨だけの兵隊は表情も変えずに、ジッと 差し出された「黒いトカゲの干物」 を見ている。
つづく




