二つの影(幽霊兵)
深夜。
『エスペランサ(希望)岬』に向かう菊池大隊。
菊池大隊長(菊池源一郎 中佐)が藤田に、
菊池「・・・おい、この方角で間違いないだろうな」
藤田は菊池の傍に来て図嚢カバンから地図を出す。
懐中電灯の灯りを絞り、地図上に方位計を置く。
藤田「・・・間違いないと思います」
菊池「この先から川の流れる音が聞こえる。地図には川なぞないぞ」
藤田は耳を澄ます。
藤田「そうですねえ・・・。迷いましたか?」
菊池「バカ者! 六百の兵が付いているんだぞ。しっかりせい! あと三日しか無いんだ」
藤田「はい!」
沢田神治大尉が後方から走って菊池の傍に来る。
沢田「報告します! 兵がどんどん増えています」
菊池は驚き、
菊池「何?」
沢田「ジャングルの中から合流して来る様でありす」
振り向く菊池と藤田。
遥かに続く残兵(撤退兵)の長い列。
菊池が、ふと月夜のジャングルの奥を見る。
人影の様な者?(幽霊兵)が立って居る。
菊池が、
菊池「おい。あそこに誰か居るぞ」
眼を凝らし、銃を構えて近付く沢田。
沢田の声を殺した合言葉が。
沢田「ヤマ!」
影の声「カワ」
沢田「カワ?」
沢田が菊池の傍に戻って、
沢田「味方の様ですねえ・・・」
菊池の傍に近寄って来る二つの影(幽霊兵)。
影は兵隊の様?である。
二つの兵隊(幽霊兵)は立ち止って、菊池に挙手の敬礼をする。
兵隊A(幽)が、
兵隊A「第二師団・岸本部隊・早坂中隊・佐々木 誠 准尉であります!」
兵隊B「同じく野村晋介 伍長です!」
佐々木「此処からは先は私達がご案内します」
菊池は呆気に取られ『二基の幽霊兵』を見て、
菊池「・・・岸本部隊? 俺達より後発だな。早坂中隊は何人残った」
佐々木が、
佐々木「三二です。一部はエスペランサ岬に向かってます」
菊池「三二?・・・無傷か」
佐々木「いえ」
菊池「イエ? ・・・負傷兵も先行してると云うのか?」
怪訝な顔の菊池。
佐々木と野村は無言。
「・・・」
佐々木が菊池に、
菊池「急ぎましょう。時間が無い」
佐々木はサッサと先行して行く。
菊池が立ち止まって佐々木の後ろ姿を見ている。
つづく




