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幽霊兵達の知らせ

 砂浜で夕飯の支度をしている七人の兵士。

ドラム缶を覗く森 。


 森 「あ、マッチが有りました」


木村が海水を入れた飯盒ハンゴウを持って来る。

それを見て福原が、


 福原「塩水で飯を炊くなんて生まれて初めてだ」

 木原「俺達が此処でやってる事はみんな生まれて初めてだよ」

 関元「へへ、まったくですわ。此処で生き延びられたらどんな所でも生きられます」

 木村「俺達は人間ですか」


全員が笑う。


 夕飯の後、ヤシの根元で一服している七人。


 木原「米が上手く煮えてなかったな」

 関元「そうですか? 腹が減ってたから分らなかったです」


木村が突然、


 木村「あの~・・・さっき、水を汲んでる時から気に成ってたんですけど」

 関元「何だ」

 木村「あそこに誰か居る様な気がして。それも、一人じゃない」


全員が木村の指先を見る。


 関元「ああ、あれは壊れた戦車だ。気にするな」


森はジッと見て居る。


 森 「あれ? 動いていますよ」

 木原「おい、森、見て来い」

 森 「はい!」


森が38銃を構え、そっと砂浜を進む。

暫くして森が叫ぶ。


 森 「少尉殿! 皆、此処に居ますッ!」


木原と関元、福原が顔を見合わせる。


 関元「皆って誰だ?」


森の喜ぶ声。


 森 「早坂中隊長殿がります。中隊の皆が此処に集まってますよ」

 木原「まさか!」

 関元「先に逝った連中がですか?」


森の叫ぶ声が続く。


 森 「早坂中隊長殿、高橋軍曹殿、佐々木准尉殿、野村伍長殿、・・・あ、木村上等兵殿、西山、石井、飯田も、林、渡辺。おい、オマエ等、俺達の後ろに居たのか・・・。少尉殿! 早く、早く来て下さい。全員此処ココに集まってます」


木原達六人が38銃を肩に立ち上がる。

関元は眼を凝らして黒いカタマリを見る。


 木原「おいッ! 行ってみょう」


七人が黒いカタマリに向かう。

木原が驚いて叫ぶ。


 木原「あ~ッ!!」


早坂を先頭に、横一列に並んだ幽霊兵達。

木原を見て優しく笑う。

木原が叫ぶ。


 木原「中隊だッ! 中隊が此処に在る。早坂中隊が全員、此処に集まって居る」


関元や痩せた敗残兵達は、「故早坂中隊」を見て驚いて立ち尽くす。

木原は暫く次の言葉が出ない。


 木原「・・・」


早坂は木原を見て、


 早坂「どうした」


木原が、


 木原「早坂中隊長以下、英霊に敬礼!」


七人全員が不動の姿勢で挙手の敬礼をする。

幽霊兵達は何も言わず七人を見ている。

早坂が、


 早坂「おい。もう良い。此処には階級何か無い。在るのは思い出だけだ」


木原は納得した様に、


 木原「え? ・・・はッ!」


木原が直る。

六人が敬礼を解く。

木原は早坂を見詰め、


 木原「一緒に逝けなくてすいません。」

 早坂「バカな事を言うな。此処で遭った事を伝えろ。生きて生きて生き抜くんだ。キサマ達の周りには、これだけの『再生兵(幽霊)』が憑いている。・・・もうこれ以上、キサマ等を死なせはしない」

 佐々木「俺達はこの島で永遠に戦います。故国クニに戻ったら俺達の事を必ず家族に伝えて下さい」

 西山「頼みますよ」


木原が、


 木原「俺達に捕り憑いて一緒に故国に帰りましょう」


幽霊兵達全員が、優しく淋しげに笑って木原達七人を見る。

すると佐々木が一歩前に出て来て、


 佐々木「あと五日(二月一日)したらエスペランサ岬に救助部隊が来ます。間違えないで下さい。『五日後』ですよ」

 早坂「この島にはまだ多くの残兵が居る。速やかに『エスペランサ岬』に集めろ。時間がないぞ。一兵たりとも、この島に残すな」

 高橋「皆さん、無事に撤収して下さい。ワタシ達全員が兵隊達を安全に見守ります」

 早坂「木原! 頼んだぞ。必ず故国に戻ってオレ達の事を家族に伝えてくれよ」


幽霊兵は月夜の砂浜から笑顔で消えて行く。

木原が、


 木原「あッ! お待ち下さい。早坂中隊長殿・・・」

                                つづく

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