片足を背負う兵隊
太い樹の根元で、大宮が座って「見張り」をしている。
『丸山道』の奥から、誰かを呼ぶ声が聞こえて来る。
声は徐々に迫って来る。
暫くすると上半身裸の日本兵(彷徨兵)が、杖を突いて現れる。
ヨタヨタしながら大宮の前を通り過ぎる兵隊。
大宮はその兵隊に声をかける。
大宮「おい、キサマッ! 何処の部隊だ」
兵隊は大宮に気付いたのか分からない。
一点を見詰めて歩いて行く兵隊。
大石「おい! オマエ」
ジッと男の後ろ姿を目で追う大宮。
大宮「・・・気がフレテいるのか」
暫くすると、もう一人の兵隊が後を追って来る。
大宮「オイ、待て! キサマ等、何処の・・・」
この兵隊も俯いて、樹の枝を杖代わりに大宮の前を通り過ぎて行く。
後ろ姿もジッと見詰めている大宮。
背中に奇妙な『骨付きの肉』を背負っている。
その肉には沢山の蠅がたかっている。
大宮は蠅のたかった肉棒の先を見て腰を抜かす。
大宮「あ、・・・指だ。ひ、人の脚だ! ア・・・アァ~~ア~・・・」
大宮は一目散にホラ穴営舎に飛び込んで行く。
洞穴営舎では木原が横に成っている。
発狂の声と共に、ホラ穴営舎に飛び込んで来る大宮。
大宮「ア~~~、ヒヒヒ、ヒト、ヒト」
木原は飛び起きる。
木原「来たか!」
同時に、関元、福原、河野、森が壁の38銃とカービン銃を取る。
大宮は震えながら狂った声で、
大宮「チチ、違います。ヤ、ヤ、ヤツ等、ヒトの足を喰っています」
木原が冷静に
木原「ヤツ等?」
大宮「ど、どこかの日本兵です」
関元「ニホンヘイ? 血迷ったか」
木原は急いでホラ穴営舎の外に出て行く。
それを追って全員が出て来る。
大宮はホラ穴営舎の中で気が触れた様に、宙の一点を見詰めて居る。
ジャングルの中に不気味な声が木霊している。
声 「オ~~~イ。・・・オ~イ・・・」
木原は関元を見て淋しそうに、
木原「戻ろう」
沈黙する五人。
俯きながらトボトボと『ホラ穴兵舎』に戻って行く。
木原が穴に入る前に急に振り返る。
ジャングルを見回し唇を噛み締め「不動の挙手の敬礼」をする。
木原の目からは涙が溢れ出ている。
関元達四人も木原に倣って、ジャングルに響く不気味な声の方向に
『不動の敬礼』
をする。
つづく




