幽霊兵達の援助
ブルドーザの後ろに関元と河野、軍用トラックの下には福原と大宮が隠れている。
米軍の補給テントの入口に早坂(幽)と佐々木(幽)が立っている。
二基の幽霊兵は三人を見て優しく笑った。
三人は驚き、
三人「あッ! あそこに中隊長と佐々木准尉が居るぞ」
早坂は関元達三名を指差し、手招きをする。
関元が小声で、
関元「オイ、俺達を呼んでる。俺が先に行く。キサマ等は俺が向こうで呼んだら来い」
二人が小声で、
二人「はい」
中腰で補給テントに走る関元。
関元が暫くして、テントの中から顔を出す。
河野達に手招きをする。
二人が周囲を確認、走ってテントの中に飛び込んで行く。
テントの中は「食料」や十字の書かれた「医療用品」が山積みされている。
四人は焦りながら、有りったけのモノを近くの麻のコーヒー袋に詰め込んでゆく。
福原が小声で、
福原「中隊長殿が居りましたね」
関元が、
関元「仏様だ。俺達を見守ってるんだ」
福原「幽霊がねえ。・・・有り難い事なのかなあ」
関元「うん? うん。おい、急げ! 早く詰めろ」
福原「はい」
関元「そこの『救急箱』も忘れるなよ」
大宮「あ、はい」
箱の上には懐中電灯・小刀と米軍の鉄帽が置いてある。
関元がそれを見て、
関元「そこの懐中電灯と小刀、『鉄帽』も持って行け」
河野「はい」
関元と河野、大宮が米軍の鉄帽を被る。
大宮「デカイですなあ」
関元「良いから急げ! よし、戻るぞ」
福原「ヨッシャッ!」
大宮は軍服の両ポケットに散らばったイワシの缶詰めを押し込む。
関元がテントから顔を出し周囲を確認する。
早坂は椰子の木陰から関元に手招きをする。
関元はそれを見て早坂の姿に合掌。
関元「よし、今だッ! 行くぞ」
関元達が「最後の力」を振り絞って走って行く。
関元と河野と大宮の三人の被った鉄帽が異常に大きい。
コカコーラ
木原の縛られている樹の周りに、ヘトヘトの関元達が集まって来る。
関元「少尉、成功しましたよ」
木原は一点を見詰めて動かない。
関元「おい、福原、水はねえか」
福原「ミズ? そんな物は無かったです」
河野「あッ、ビールみたいな物をカッパラって来ました」
関元「酒か? ・・・まあ良い。元気が出るだろう。出せ」
河野が麻袋から「こげ茶色の瓶」を取り出す。
福原は瓶を見詰めて、
福原「アメ功はそんな色のビールを飲んでるのか?」
河野は戦利品の「十徳ナイフ」の中から栓抜きを開き、栓を開ける。
溢れた泡を舐める河野。
河野「うッ、何だこれは。甘いような・・・、薬か?」
関元「どれ、俺に舐めさせろ」
渡された瓶の周りを舐める関元。
関元「うん? これは・・・生姜サイダーだ」
福原「甘いんですか?」
関元はゆっくり、味わう様に瓶の『水?』を飲む。
関元「・・・う~ん、甘いと言うか。美味い」
旨そうに飲む関元をみて福原が、
福原「私にも一口毒味させ下さい」
関元「おお、飲め」
福原は喉を鳴らせ瓶の中身を飲む。
河野と大宮が恨めしそうに福原を見ている。
河野「・・・旨いですか?」
福原「旨い。これは気付け薬だ。少尉に飲ませよう」
大石「俺も飲みてえなあ」
福原は大宮を見て、
福原「待てや。焦るな。まず、木原少尉殿だ」
福原は関元に瓶を渡す。
福原「・・・こぼさないで下さいよ」
関元「分かっとる」
関元が虚ろな眼の木原に『奇妙な色の炭酸水』を飲ます。
木原は咳き込み、鼻から泡を出す。
木原「ブフ、ゴホゴホゴホ。・・・何をするか!」
関元「お、気が付いた。さすがアメ功の気付けだ」
木原は関元の持つ瓶を見て、
木原「・・・? コカコーラじゃないか」
関元「何スか? それは」
木原「アメリカのサイダーだ」
関元「サイダー・・・。ほう。コカーラねえ・・・」
木原は関元達四人を見て、
木原「・・・成功したようだな」
関元「 何だ、木原少尉、俺達の突撃を知ってたんですか」
木原「うん?・・・うん。佐々木准尉が来て教えてくれた」
関元「佐々木准尉? ああ、ホトケ様ですか。実は俺達の所にも早坂中隊長と佐々木准尉が出て来てくれましてね。上手く段取ってくれたんですよ」
木原は河野の傍に置いてある麻袋を見て、
木原「それか」
大宮が笑顔で、
大宮「はい。当分、腹との戦いは落ち着きそうです」
骨と皮の木原が笑う。
木原「ハハハ、良くやった。オマエ等に勲章をやろう」
関元「クンショウ? 要りませんよ、そんな物。・・・木原少尉、頭の方はどうですか」
木原「アタマ? 何にか遭ったのか」
四人が顔を見合わせる。
関元は感心した様に、
関元「やっぱりコカーラのせいだ」
福原「効くねえ。木村にも飲ませてやろう」
木原「そうだな。おい、此処で少し腹ごしらえしょう」
関元「おお。そうだ! 早速、缶詰めを開けましょう」
大石「待ってました」
河野「ヨッシャ!」
河野が麻袋から缶詰めを取り出し、一つ一つ缶切りで開けて行く。
眼が点の残存兵達。
つづく




