ー由来ー
「うちの組織のモットーはさ。"世界を不幸に"なんだよ。"世界を少し不幸にするための団"SOF団」
ペストマスクの男はいう。
「あ、ペストマスクの男って言いにくいでしょ。"社長"で良いよ」
「…突然人の心を読むなよ。…なんだ、その厨二臭いモットーは」
そして訴えられそうな名前は。
「人生って平等じゃないじゃない?そんなのわかってる。でもさ、それでも報われたいって、思ってしまった人間たちは、報われるために死ぬほど努力をするわけじゃん?」
恵まれなくて、足りなくて、欠落していて。そんな現実を受け入れられた人たちはまだいい。でも、受け入れられなかった俺たちは、それでも恵まれた人たちの幸福が欲しくて、必死に努力して。
「でも努力って結局、報われないんだよね。いつだって天性が、運が、僕たちを崖から突き落とす」
社長はハンバーグをつつきながら言う。
「僕たちは必死にマイナスをゼロにしているのに、思わぬことでまたマイナスに戻る。なのに、初めからプラスの人間は、足し算や掛け算が行なわれて、どんどんプラスになって行く。世の中は全くもって不平等だ」
話しながらハンバーグをつつくから、もう原型をとどめていない。早く食べればいいのに。
「だからさ、決めたんだ。もう絶対に幸せに追いつけない年齢になった時に。少しでも、持っている人間を、こちら側に引き込もうって」
社長はボロボロのハンバーグをフォークで器用に救って食べる。
「だから裏稼業って…そんな簡単に作れるもんじゃないだろ…」
その行動力には目を見張るが。
「そうだねえ…大変だった。慣れないことをいくつもした。でも、努力だけはずっとしてきたからさ。できちゃったんだよね。なぜか、運にも天性にも邪魔されなかった」
社長は感慨深く言う。表情がわからないのに感情がよくわかる人だと思った。