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ーおはようー

 目を覚ますと、オフィスの一室にいた。目の前にはペストマスクの男が脚を組んで椅子に座り音楽を聞いている。俺たちを遮るものは何もない。


 「お、目を覚ましたね」


 「覚ましたも何も、お前がいきなり襲いかかってきたんだろ…」


 俺は起きあがろうとするが、動けない。というか座った状態で後ろ手で椅子に身体が縛り付けられている。どうしようもない。


 「君にやってほしい仕事はこれ」


 ペストマスクの男は少年の写真を出してくる。


 「男の子…?」


 小学校低学年くらいだろうか。頭には髪がなく、目がくりくりしている。背景が病院なので、その子がなんらかの病なのがわかる。


 「そう。男の子。この子は今難しい病気にかかっていて、腎臓の移植を待ち望んでる。そして、その適合者が見つかった」


 「いいことじゃないか」


 「でしょ?父親は一大企業の社長で、まあ、あらゆる手を尽くして適合者を探したらしい。世の中、金さえあればなんとかなることもある」


 ペストマスクの男は激しい身振り手振りを交えながら話す。そんなことよりも解放してくれないかな。そろそろ腕が痛いんだが。


 「で、君にはこいつを盗んでもらう」


 「……は?」


 今なんて言った?


 「そんな顔をするなよ。君には、なんの罪もない少年の、命を救う臓器を、盗んでもらう」


 「…なんで、そんなことを?」


 そんな非人道的なこと、許されるわけがない。


 「依頼があったからだよ」


 ペストマスクの男は楽しそうに言う。


 「依頼があったから。社長の昔の恋人からね。社長をどん底に突き落とすにはこれしかないって。報酬は依頼者の生命。依頼達成後に殺して綺麗な死体はバラして海外に売るってわけ。莫大な利益が僕たちの手に残る」


 「そんなの…そんなのできるわけないだろ!そんな、人の道から外れたような…」


 「そう言うと思った」


 ペストマスクの男はそう言うと立ち上がり、こちらに向かってくる。


 「な、なにをー」


 男は手袋をつけた手を大きく開くと、俺の頭を掴み、何かのスイッチを押した。その瞬間ー


 「ッー!」

 

 頭に鋭い衝撃が走る。意識を失うほどではないが、鈍い痛みが、頭に流れ込んでくる。


 「君は僕の命令に逆らえなくなる逆らえなくなる逆らえなくなるー、はいおしまい」


 そう言うと男は頭から手を離し席に戻って行く。


 「やる気になったでしょ?」


 「………やればいいんだろ」


 なぜか、やる気になってしまっていた。理由はなかった。ただ、そうしてもいい気がした。


 「いいねえ!詳しいことはあとで話すから、とりあえずご飯でも食べようか」


 ペストマスクの男は俺の縄を外した。なんだか、あらゆる枷が外れた気がした。俺たちは近くのファミレスへ向かった。

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