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7話 達成と喪失

「行くぞ」


 天真は冷徹な顔をし、刀を構える。敵対者たちはライフルや拳銃などを構える。

リーダーと思われる男は天真に聞いた。


「言い残すことはあるか?」


「お前らはここで殺す」


「そうか……なら死ね!!」


ズガガガガガガガガガガガガガガ!!!


 男がそういうとマシンガン、拳銃、ガトリングガンから銃弾が放射される。

天真はその無数の弾幕を躱していく。ただ躱すのではなく、サバイバルナイフを投げたり、壁を利用したり、致命傷を避けたり、まるで全てを見透かすかのように躱していく。


 ここで天真のことについて話そう。

天真はコード・ZEROと言われているのは最強だからというのは聞いているだろう。

 しかし、そこで行われた非道的なものは違う。

ゼロ・セフィロトは軍のために人体実験の際、脳のリミッターを確実に100%引き出せるために電流を流し込まれ、死の体験を行わせることで、特殊な力を得させようとした際の副産物なのだ。


 コード・ZEROのゼロとは最強であるという称号の前に実験の無意味さを象徴とする存在のためにつけられたコードネームなのだ。

 大佐はこのコードネームを聞いた際に「皮肉なものだな」と失笑していた。


 話を戻すが、天真は100%の力を引き出して、弾幕全てが超遅く見えている状態。

脳へのリスクがあるが、それでも高い戦闘力と臨死体験を何度も何度も繰り返した結果、リスクを軽減して扱うことができているのだ。

 それは戦闘力の高さなどではなく、その力を使いこなそうとしたコード・ZEROという人間の狂気とも言える執念の力だった。


 男たちは既に心が恐怖に支配されている。

当然だろう、本来なら死んでいるはずのこの方法で全く死んでいないどころか、詰将棋のように、追い詰められているのだから……


「まず、二人」


 天真がそう呟くと


ザシュッッ!!


 バタンっと二人が倒れる。その二人の背中にはワイヤーが柄に巻かれたサバイバルナイフが刺さっていた。

 リーダーと思われる男が驚愕した表情をする。


「あ、ありえねえ……まさか、既に布石を打っていたのか……」


 男は気がついた。まるで、蜘蛛の巣のように張ってあるワイヤー付きのナイフがそこら中にあることを……そして、それがまるで、計算されていたかのように囲ってあることを……


「ここまでうまくいくとは思っていなかった。

俺は少し理性があると思っていたが、まさか、俺を殺せると思っていたとはな……


クックック……あまり舐めるなよ?」


 天真は少し見下したような顔をしてそう敵対者たちにいう。

そして、敵対者たちは嫌でも理解する。

目の前にいる存在はただの人間ではないと、人間を殺すために強化実験された改造兵士だということに……


「なんで俺がコード・ZEROと言われ、恐れられてきたのか、お前らは理解していないようだからもう一度教えておいてやる

俺は最強兵士計画において、臨死体験を千を超えるほどしてきた……」


 千という桁に敵のみならず、逃げる隙を窺っていた希空たちも驚愕する。

目の前にいる敵たちを殺すことだけを考えてきた天真にとっては当たり前のことだったが……


「脳に直接電気を与えられ、人間の限界を促され、神経を直接触れているかのような異物感を体に直接与えられてきた。」


 思い出したくもないのか、嫌な顔をする天真だったが、話し出したのは自分だったため、その感情を吐き出すかのようにいう。


「失敗すれば、大の大人が殴り、蹴り、刺して殺そうとする。


死にかけようが、蘇生できなかったら、それまでという冷酷な実験を何度も何度も繰り返してきたんだよ。


俺たちは」


 ゼロ・セフィロトは選ばれた改造兵士というふうに言われているが、実際は使い物になる道具はこの十二人しか存在しないと捉えることができるのだ。

 そして、この十二人が共通して思った感情は「生き残りたい」という生存本能。

それによって人間の限界値を超えるほどの実力を得たのではないかと言われている。


 その後、このあまりにも酷い実験を聞いた上層部の一部が禁止を言い渡し、人徳のある大佐の直属部隊になったのはそれから一年後の話となっている。


 命は軍のため、死ぬことは道具としての価値が失った時に死ね


それがゼロ・セフィロトの意味だと教えられてきたのだ。




     今の天真はコード・ZERO



大切なものを守るために他者の命と尊厳すらも奪う冷酷無比な存在なのだ。


「お前らは俺から大切なもんを奪おうとしたんだ………


だったら、奪われる覚悟があってやっているって思って良いんだよなぁ?」


 天真がそう言った瞬間、リーダー格の人間の視界から消えた。


そして、ズバズバ!!っと何かが斬れる音がする。


その音に嫌な汗をかきながら背後を見ると血塗れの天真が立っており、その下には部下が数名死亡していた。


 リーダー格の男は怒りの形相になり、銃器を構える。


「!!!!!この化け物がああああああああああああ!!」


 天真に向かってマシンガンなどの銃弾の弾幕が襲いかかる

しかし、天真にとってこの程度のことはあまり気にするようなものでもなかった。

 超スピードで一気に背後に周り、自身の部下を殺してしまう。

思わず、トリガーから手を止めてしまうが、それは天真を相手にするなら、悪手でしかなかった。


 天真を殺すなら軍隊を率いて戦え、それがコード・ZEROと戦う上での最低限の準備なのだ。

しかし、今まで天真を殺せなかった、それはなぜか………

彼があまりにも理不尽なほどに強かったというだけの話なのだ。


 今回は部下を自身の手で殺すことになっても天真を殺すべきところを、人間性を出してしまったがために、敗北してしまう。

それは、化け物を殺す上で、当たり前の覚悟なのだ。


「お前は何もなす事ができなくて死ぬんだよ」


 天真の言葉がリーダー格の男に突き刺さる。

部下を率いている上で、天真という化け物を殺すなら、それぐらいの覚悟をしていなかった。甘さ故の敗北だ。


 それを言われてリーダー格の男の体には刀が突き刺さり、絶命していた。


「来世に活かせよ……」


 天真はそういうと生き残ったものたちを見る。


「まだやる気か?それなら、お前らもリーダーと同じ場所に送ってやるぞ……」


 天真の殺気がこの場を支配する。

あまりの殺気に失神するものまで現れる。


 希空たちは何が何だかわからないような表情をして様子を見ていた。

転校してきてそこまで長い付き合いというわけではないが、それでも友達だと思っているし、どうしても目が放せない存在でもあった。

 故に、このことが終わってからでも話そうと思っているのだ。

どんな存在だろうとどんな冷酷な存在だろうと、学校生活の中で見てきた天真も本物だと信じているからこその判断だった。

だって、自分たちまで離れてしまったら、今度こそ、本当の天真がいなくなってしまうと思ったからだ。

 希空はたまらず天真の元に走って行った。


ダキッ!!


「!!!!?」


 天真は突然のことに驚愕する。そして、背後を見ると、希空が後ろで抱きしめていた。

天真は一瞬思考が停止するが、目の前には敵がいることを思い出し、希空に言った。


「離れろ……目の前には敵がいるんだ」


 希空に優しくそういうが、希空は首を横に振り、拒否する。

天真はその現象に驚くが、敵を殺すという任務が頭を支配しており、希空に続けていう。


「頼む……こいつらを殺さなくちゃまたお前たちが危険な目にあう……

こいつらの存在こそが、お前たちの平和を脅かすんだ。

だから頼む……良い子だから……」


 天真は子供に説得するかのように声をかけるが、希空は全く聞き耳を持たないのか、首を横に振り続けるだけだった。


 それに見かねたのか龍馬が歩いてきた。


「天真………白星はな。

お前にもう傷つけてほしくないって言ってんだよ」


「………何を言っているんだ……?」


「お前気がついていねえのかよ……お前、今にも泣きそうな面をしてんのによ……」


「は……?」


 天真は心底何を言っているのかわからないような顔をして龍馬を見る。

その様子を見ていた明星は信じられないような顔をして天真を見る。


「自覚……ないの……?」


「俺は殺戮兵器だ。道具に心があるわけないだろう……?


俺は軍のために殺し続けてきた。軍の実験のせいで選ばれず、そのまま死んで行った仲間たちに報いるために、そして否定された俺たちの価値のために俺は戦い続けるって決めたんだよ……」


 天真は記憶が蘇り、日本に来て、ここにいることを決めていた。

しかし、それはコード・ZEROというもう一人の自分の価値がわからないからだ。

日本での記憶が蘇り、コード・ZEROの時の記憶もある。

平和に生きて自分が何ができるのか、そして、自分の価値がどこにあるのか確かめたいという一つの実験のような感覚でここにいる。

 今回のことで、やはり、自分には人を殺すことしかできないと判断した。

その自分の自己完結に対して、なぜ三人が泣いているのか、わからない……人間の心という物がわからないのだ。


 すると


「お嬢様方、そして結城天真様、白星グループの者たちがここにやってきます。


お話はその後でもよろしいでしょう」


 未来がそういうと三人は涙を強引に拭って未来を見た。


天真はそれを見て、別の方向を見る。


「これ以上抗うならここでお前らを殺す。


それが嫌なら黙って待っていろ……」


 天真の殺気に既に心が折れている者たちは何もいえずにそのまま項垂れていた。

そして、天真は希空たちと共に白星財閥のホテルに戻って行った。


…………………………………………


………………………………


………………


 天真は殲滅報告を会長たちに終えると、天真は希空たちに声をかけて、三人は天真の部屋に入って行った。


 四人が部屋のベッドの上や椅子に腰を置き、コーヒーなどを入れて、一息を置き、天真が切り出した。


「……さて、どこから話そうか…」


「んじゃあよ……天真って何者なんだ?」


 龍馬が天真にそう聞く、明星と希空はビクッと震える。

もう後戻りができない質問、今まで通りの関係ではいられなくなるそんな質問を龍馬はしてしまった。


「いきなりの質問だな……


まあ、俺のあんな姿を見たらそう思うのは必然だったが……」


 天真は少し自分の行いを思い返し、呆れたような顔をしていた。

そして、意を決した表情をすると、己の正体を話した。


「俺は少し特殊な軍組織の訓練によって改造された改造兵士で特務機関・ジ・アルケー所属する特別部隊・ゼロ・セフィロトの元隊長でな

当時の俺は記憶喪失で、元上級大将の俺を助けてくれた爺さんが色々と根回しをして記憶が戻った時のために活動してくれていたんだ。

俺は恩返しのために軍に所属していたがな……そのおかげで、俺はコード・ZEROなんて異名がつくほどの有名人だ。


俺の首には100億以上の価値があるぐらいだ。」


 そう笑いながら話す天真に三人は何もいえなかった。笑えるはずがなかった。

知らないとはいえ、彼にとっては辛い人生、辛い海外での地獄を生きてきた。

あの笑顔にはいつも暗い影があったことに気がついていたのに……


「結城君は……軍の人たちのことを恨んでいないの……?


自分の体をそんなふうにされて……」


「……爺さんや姉代わりの人には止められたさ……けど、俺にとって俺が何者かが知らないあの時には力が必要だった。

地獄に抗うだけの力が欲しかったんだ。そのためなら俺はなんでもやったさ。

電流を流されて脳のリミッターを無理矢理外す方法を得て、身体能力は爆上がりだ。


俺は最年少で、軍の中でも最強になり、いつしかこう呼ばれていた


コード・ZEROってな」


 天真にとって軍のことは恩人だと思っているのは助けてくれた元・上級大将の爺さんと姉代わりの人、そして同じ境遇に立たされたゼロ・セフィロトの人間たちだけだった。

 何かを助けるためにその身を犠牲にしてきた。そのためだけに戦い続けて、記憶が蘇り、一人の人間として何かを得られると思っていたが、天真の根底は兵器のままだったと己を理解してしまった。

 故に、天真はこれからやることは決まっている。


「さて、話は終わりだ。俺は学校をやめて、また海外で傭兵の真似事でもするよ。


お前たちに俺の正体がバレた以上、俺はもう、この日本に入られなさそうだしな」


 天真が淡々とそういうと希空たちは勢いよく立ち上がる。


「なんで!!?」


「結城君は私たちを助けてくれたんだよ!!?」


「お前が俺たちの前からいなくなる理由なんてねえだろうが!!?」


 三人は驚愕して、天真を問い詰める。

予測がついていたため、天真は言った。


「俺の正体は極秘のものだ。いくら俺のお得意様である白星家の人間だろうと一部の人間しか知らないことだ。それを教えてしまい、あまつさえ、関係のないお前たちにまで巻き込んでいるんだ。


これ以上、俺と共にいることがお前たちのためになるとは思えない。よって俺は一度、日本から離れる。

お前たちの護衛は俺のことをつけてきた部下たちが守ってくれるだろうからな……」


 そう言って窓の方を見て、殺気を放つ。


「というわけだ、俺は会長の方に話をつけてくる。」


 そう言って天真はどこかに行ってしまった。

希空たちはそんな彼を止めることができず、そのまま出ていった扉を見ていた。

この先どうなっていくのだろうか……
























今日はここまでとなります。

次回をお楽しみに!

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