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アタリツキ

作者: 竜胆スピカ

「どもー」


皆が部活に精を出す放課後。

俺は溜まり場である、空き教室の扉を開けた。


「あら、今日は遅かったわね」

「掃除当番だったんで」


ギギギと椅子を引き、先輩と向かい合うように腰かける。


「今日はてっきり来ないかと思ったわ」

「まさか。 この時間が生き甲斐なのに、そんな事無いじゃないっすか」

「ふふふ。 お世辞だとしても、嬉しいわ」

「いやいや。 お世辞な訳が無いじゃないっすか。 先輩は学園のアイドルっすよ」

「元よ。 元学園のアイドルよ。 今じゃあ、学園一番の嫌われものではないかしら」

「俺の中では今でもアイドルっす。 それに、あれは濡れ衣じゃないっすか」

「裕也。何時も言ってるけど、いいのよ。あれで鬱陶しい人達も皆、彼女の方に鞍替えしてくれた訳だし」


机に腰かけ、足を組んでいる先輩は、肉まんだった最後のひとかけらを口に放り込む。


「納得は出来ないっすけど、先輩を一人占めできてるんでもういいっす。 それで、今日も肉まんっすか」

「そう。肉まんよ」

「購買の肉まんっすよね。 美味しいんすか」

「コンビニの方が、断然に美味しいわ」

「ならなんで、そんなん食ってるんすか」


たまに先輩の事が解らなくなる。


「まだ、一年だから知らないのね。 購買の肉まんにはアタリがあって、あたった人は幸せになるのよ」

「嘘臭い話っすね」

「あら、そんな事を言うものでは無いわよ。 はい、どうぞ」


側に置いてあった袋から新品の肉まんを取り出し、此方へと突き出す。


「なんすか」

「貴方の分よ」

「えっと、何故俺の分があるんすか」

「あら、昨日、羨ましそうに見てたじゃない」

「いや。あれは」


妖艶に食べる先輩に見とれていた訳だが、口に出すと変態ぽかったので思いとどまる。


「いくらっすか」

「いいわよ。 奢るわよ」

「いえ。男の意地張らしてほしいっす」

「仕方ないわね。 200円よ」

「意外に高い」


財布から、なけなしの200円を取り出し、先輩に渡し。 肉まんを受けとる。


「それで、当たりって何処を見ればわかるんすか」

「食べて見ないと解らないわよ」

「そうなんすね」


包み紙を広げ、肉まんにかぶりつく。


「どう。 美味しくないでしょ」

「美味しく無いと言うか、味が薄いっすね」

「でしょう」

「なんで、先輩が誇らしげなんすか」


食べれない程に不味くは無いが、本当に味が薄すぎる。


「酢醤油が欲しくなるっすね」

「カラシとか酢醤油とか、そんな気の効いた物は購買に無いわよ」

「マジっすか。 辛いんすけど」


先輩がくれたものを残す訳にも行かないので、必死に食べ進める。


「何とか完食っす。 二度と食べたくないっす」

「大丈夫よ。そのうち、その不味さが癖になるから」

「いやな。癖っすね」


そんな癖はごめん被る。


「それにしても、味が薄い意外に、変哲もない肉まんだったんで、当たらなかったようすね」

「まだ解らないわよ」

「何を言ってーーー」


『ぎゅるる』とお腹がなり、突如と襲いかかる腹痛。


「あら、あたったようね」

「はいっ!?。あたりって、食中りっすか」


意味が解らなかった。


「厳密には違うけど、にたような物よ」

「なんで、こんなものがーーーうばぁ」


言葉を続けようにも、腹痛が邪魔をしそれどころじゃない。


「ムリムリ。 トイレ」


もうなりふり構う暇がなく。 尊厳が失わないよう、脂汗を流しながらトイレへと急行した。


☆☆☆


「酷い目にあったっす。 なんなんすかアレは」


トイレの住人から解放された俺は先輩に訪ねる。


「アレはそう言う食べ物なのよ」

「食中りするような物が人気なんておかしいっす」

「食中りでは無いわよ」

「じゃあ何なんすか」

「あれは、デトックス効果がある食材をふんだんに盛り込んだ、秘伝の肉まんなのよ」

「なんすかそれは」

「食べるだけで美容効果があり、健康になり、学力も上がりそんな代物なのよ」

「なんすか、その胡散臭いサプリメントみたいな謳い文句は」

「嘘じゃないわ。本当の話よ。現に私の友達に、あの肉まんの美容効果で彼氏が出来た友達がいるのよ」


いや。本当だとしても、購買で売るのはどうかと思う。


「先輩。 色々を犠牲にするのは、やめましょうよ。 先輩は今のままで十分可愛いっすよ」

「私は別に美容とか健康とかに興味はないわ。ただ、あの時の腹痛が忘れられないの」

「そういうのもやめてもらっていいっすか」

お読み頂きありがとうございました。

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