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彼女の隠れてた本性

作者: 楓蘭 仁

他人から知り合い、知り合いから友達、友達から親友、または恋人。

人と人は、何かしらの関係を持って、初めてわかるその人の性格とかがある。


これ必然。


そして関係が特別なものに、親密にものになるにつれ、今度はその人の本性がわかってきたりする。






まぁ、これは持論だけど。










……俺にも初めて彼女が出来た。向こうから告白してきてくれて、OKした。体育の授業風景を見ての一目惚れらしい。まあ、高校生なんだから普通に青春したいし。

そんな三日経ったある日。

やっぱり気分的には舞い上がっていた。だってその日は放課後遊びに行く約束もしていたしね。テンションは高い。



「はーい各自解散。悪い事はすんな、後怪我すんなよー。」


担任がそう言い、教室から出て行くクラスメート。俺もその中に混じって出て行く。早く遊びたいし。


ふと教室二つ分離れている、近くのクラスを見る。彼女のクラスだ。

……うーん……待つ事にしよう。







………五分程待つと、教室から生徒がちらほら出てくる。彼女は出て来ていないようだ。

しょうがない。




「あーすみませーん。吉原(よしはら)ってもんですけど、若宮(わかみや)さん呼んでくれます?」


教室の扉付近の女子に頼んだ。


「ん?あーはいはい、(かすみ)っちー、お呼びだよー。」

扉から結構離れた席の女の子がこっちを向き、慌てて帰り支度のスピードを上げた。

……ちょっと悪い事したかな?


反省。







「ご、ごめんね(ぜん)くん」




謝ってくる霞。背中に少しかかる長い髪、それに小さくて赤いリボンが二つ。身長は155cmくらいだろう。そして眼鏡っ娘。

これと言って目立った特徴はあまりないが、俺の彼女。……てか息切らす程帰り支度を早めなくても……




「気にしない気にしない。もう大丈夫か?」


「うん、大丈夫だよ。…行こう。」


「そだな。」


軽く返事をして二人並んで歩き出す。









一応、デート、みたいなものなので、俺は緊張する。

だってまだ付き合って三日目だし。



「えーと、今日はなんかあった?」


めっちゃアバウトに話を切り出してしまった。もう、俺の馬鹿。


「うんとね、今日は−−−」






どんどん話を続けてくれる霞。緊張はしているんだろうけども、どことなく自然さを感じる。俺より落ち着いているんだろうなーってのがわかる。……なんか俺が恥ずかしい。


「善、くん?」


「どしたの?」


少し戸惑いを感じる話し方。やっぱり緊張?




「…手、…いい…?」


顔をほんのりと赤く染め、うつむき加減で聞いてくる霞。


……断るワケねーだろ……


自分の手を霞の手にスッ、と伸ばす。すると、




キュッ




っと音が本当に聞こえた気がする。……しかも俺から握ったんじゃなくて、霞から握られたワケで……。




「「………」」




お互いの会話が無くなる、が、雰囲気が悪いワケじゃない。




「手…大きいね。」


手をつないだ時の定番の台詞。自分の彼女から(しかもほんのり顔を赤くしながら)、聞けるとは…、そして体験できると思わなかった。破壊力は、抜群だ。







この日のデートは手をつないだままだった。


霞は、恥ずかしがり屋さんだけど、意外と積極的で、頑張り屋さんでもあった。










霞と付き合って一週間経ったある日。


どーやら霞は風邪をひいてしまったらしい。情報提供は扉の近くの席の女子。本当にありがとね。

今日配られたプリントを渡され、お見舞いに行く事になった。

…理由はどうあれ、彼女の家に行くので、心構えはしっかりしておこう。







「あっ、霞ー?俺。」


とりあえず電話。


「あれ?善、くん?」


コホッコホッと咳の音がした。


「プリントとか持ってきたから、届けに行くわ。」


「あ、じ、じゃあ…部屋まで来てくれると、うれしいな…。う、動くとちょっと、ね。」


おいマジか。それは本気か、おい。女の子の部屋に上がれるのは、仲良しな友達か彼氏くらいだろ。




あっ、俺彼氏だった。




「と、とりあえず向かってるから、待っててな。」


うん、待ってるね、と聞こえた後に電話を切る俺。


うん、平常心だ。冷静に、クレバーになるんだ俺。










そして霞の家の前。

いろんな葛藤をしながらたどり着いた。……よし。


ピンポーン。


「お邪魔しますよー。」




………




誰もいないのね。はいはい。




二階に続く階段を上り、彼女の部屋らしき所の扉の前に立つ。

…俺は大丈夫だ。俺は強い。……よし。




コンコン




「霞?善だけど…。」


「あ…どうぞ。」




ガチャッ




扉を開けると、

ふわっと霞の香りがする。

……ちょっとクラッときてしまった…


ベッドで上半身だけ起こして、…今日は風邪の所為だろう、顔が赤く弱々しい雰囲気を出している。


めっっっっっちゃ抱きしめてあげたい衝動に駆られるが、我慢しよう。




「…具合は、どうだ?」


近づきながら聞く。


「良くなってきたよ。ちょっとまだ熱いけど……」


コホッ、と一度咳き込み、俺に目を合わせる霞。



フゥー………




心の中で呼吸を整えた後、


「…今日は寝ときな。また明日から、お前とゆっくりしたいからさ。」


いろんな事を我慢し、彼女をゆっくり横に倒す。偉いぞ俺の自制心。




「善君…あのさ、」


部屋から出ようとしてた足を止め振り返る。


「私が寝るまで、そ、側に居てほしいんだけど、……ダメ、かな…」




「………う、ん…。」


いちいち人が、彼氏が断れない要求をしてくる霞。反則だ、イエローカードだ。後一枚貰ったら………どーなるんだろう?




ベッドの隣の床に座り、霞の手を握ってあげた。……この前のお返しって事で。


目を閉じ、安心した表情になる霞。


「善く…ん…」


囁くように、優しい声がする


「…ん?」


俺はスッと手を伸ばし、髪を撫でた


「…だい…から…って…い…?」


……正直に言うと、よく聞き取れなかったが、


答えは案外自然と出ている。


ただ、霞を安心させたかったから


スッ、と手を伸ばし、前髪をかき分けて、おでこにピトッと手を当てる。


「……いいよ。風邪治ったら…また一緒に遊ぼ。」


そのまま、ツーッ、と頬に、移動させる。


一瞬ホッとしたような表情になり、微かに頷いた。


……それ以上の反応は返ってこない。しかばねのよう、違った、眠ったようだ。


「……じゃな」


小さい声で言い、手を優しく離して、部屋を出て行った。




霞の新しい一面を見た。




寂しがりやで、甘えん坊で、…ちょっと大胆?なのかもしれない。












霞と付き合ってから現在三週間目。お互いに色々な所がわかってきた、と思う。三週間も経ってあれだけど、付き合って良かったなー本当に。




今日は霞が、俺の部屋に来る。




「善君の部屋に行きたい……かも。」




三日前に、ふと言った一言から、来る事になった。

ちょっと大胆な発言だと思った。が、大丈夫だ、その性格は二週間前に見切った。

……が、緊張が止まらない。

やっぱり全然見切れてなかった。







学校も普通に終わり、いつも通り霞を待ち、いつも通り一緒に帰り道を歩く。

いつもと違うのは向かう場所。俺ん家。




手をつなぐのにもいまだに耐性ができていない俺には辛いものがあるよ本当に。段々当たり前のように手をつなぐようになってきた霞。相変わらず顔は赤いけど。

……この子は案外大物なのかもしれない…。















「あーっと…適当にくつろいでねー。」


「う、うん。」


なんだかんだで、家に着く。そして俺の部屋に、霞がいる。…意識しないほうが難しいぞ…。


「ゲームもあるし、本…つっても漫画だけど、色々あるから、好きにしていいよ。」


そういうと霞はキョロキョロとしはじめる。仕草が小動物みたいだ。




「……っ、ふぁ…」




「善君、眠い?」




欠伸が出てしまった。

昨日の夜緊張したし、学校でも悶々してたからあまり眠れなかったんだよなー。


「あー…ごめんな霞。暇なワケじゃないんだけど…めっちゃ眠い。」


まー眠気ざましにゲームでもしよう。桃太郎電○があるぞ。桃○。

と、続けると




「善君、……ね、寝よっか?」


一緒に……と小さい呟きが聞こえた。






へ?






いやいや、ちょっと待って、なんて言ったこの子は?

少しだけ覚醒した頭で考えを巡らせる。


寝る………そーいう事やあーいう事…?いや、単純に隣で一緒に寝ようってだけだろうな、うん。………うん。うん?




「か、霞…?」


「な、何?」






「えーっと…フツツカモノデスガ…」


「ち、違うよぉ、この前の、お、お礼が出来たらなぁ……って思って…」


もじもじしながら言う霞。


「そ、そっか。そーだよな。」


あくまで平静を保とうとする俺。

……だよね、いやまあいいんだけど…ちょっと残ね、


……もう考えるのを止めよう。







「っしょ、っと…」


自分のベッドに横になる。ズブズブと体が沈んでいく感じをいつもは一人で堪能しているが、




ギシィ




今は一人じゃない。




ピトッ…


っと背中に手が張り付く感じがする。


……ヤバいです。俺今青春しています。




普段ならドがつく程緊張して、ドキドキして、眠れないんだろーが、…今の睡魔は珍しく強い。思考がどんどん、回らなくなる…。


「善…くん。」


静かに俺を呼ぶ声。


「大好…だか…」


霞の声もどんどん遠くなる。


「…って…い?」


なんかちょっと前に聞いた台詞を、また聞いた気がした。


「……あー……好きに……しな……」


どーにか返事をする。


「…うん…」


静かだけど、嬉しそうなのがわかる声がした、気がする。




深いまどろみに、俺は堕ちていった…
















「…ん、んぁー、っと。」なんとなく目が覚めた。特に理由はない。

なんとなく、だ。


「んー…」


壁に掛かってある時計に、目をチラッと向ける。

17時30分


けっこう寝たつもりだったが、一時間も経っていなかった。




ん、と手を頭に伸ばしながら体を起こす。

が、




起きない。起きれない。そして手も動かせないし、足も動かない。




あれ?なんで?




「あ…善君…起きた?」


「あら?あれ?」


霞の存在を今思い出した。……ダメな彼氏でごめんなさい。


「あれ?手が…足も、?」


ロープか何かは知らんが、縛られてベッドに固定されている。

両手と両足が、だ。

上から見ると、人、の字に見えるであろう体制。


「善君…ドキドキする。」


「か、霞?なんで?俺はこうなって…?」


ドキドキの意味がよくわからないが、聞いてみた。


「不安だったから…二回確認してみたら、二回ともいいよって…善君が…。」


「な、何が?な、なんて?」












「大好きだから、縛っていい?って。」













霞は隠れドSだった。










確認。

服は、着てる。制服だ。俺も霞も。下、履いてる。俺も霞も。

……ちょっと残ね、

いや違う違う。




「善君、私、」


「ちょっと待って、いやかなり待って、霞。」


近づいてくる霞を止める俺。そしてちゃんとピタッ、と止まる霞。

……なんかいろいろまずい気がしてしょうがないが、聞きたい事はたくさんある。


「あのー、…なんで?」


「善君と、クラスメートの人達のやりとりを見た時から、…こうしたいなって…。」




俺はクラスでは、けっこういじられてたりする。

みんなが楽しそうだし、俺もみんなにツッコミを入れるのは、なんだかんだで楽しい。

いやしかし、


「いじられてる善君を見たら…ドキドキして、それで…」


説明を終えて、またゆっくりと歩みを進める霞。


待って、いや、ちょっと!?


「ストップ、ストップ!よーし、落ち着け霞。落ち着くんだ霞。」


多分今世界一落ち着いていない俺が言う。


「落ち着いてるよ…善君。」


ほんのり顔を赤く染め、いつもより息が微妙〜に荒くなってる霞。


か、可愛すぎる…。これは、ヤバい。なのに、なんで、






ドSなんだよぉぉぉ………






ヒタ…ヒタ…


と、ベッドに、俺に近づいてくる霞。

もはやホラーなんじゃないかこれは。と思うくらいおっかない。






……ギシ……ギュッ……






人の字で仰向けになっている俺に体を重ね、しがみついてくる霞。




何故だ?なんでなんだ?

自分の彼女が、自分に覆い被さってきているのに、恐怖心の方が強い気がするのはなんでなんだ?




……プチ……プチ……




俺のワイシャツの第2ボタンまで開けた霞。

ちなみにワイシャツの下はタンクトップだ。が、今別にどうでもいい。




「…善君…」


ふわっと、俺の肩に頭を置く霞。

ま、まずい、なんかいろいろまずい。






ふぅっ、と鎖骨の辺りに吐息がかかり、そして−−−













カプ












「っ!?」


噛まれた。鎖骨の辺りを。

…決して痛くはない。全く、だ。


さらに、













カプ、カプ…






連続で噛まれる。身動きは、全くとれない。
















カプ…カプ…カプ…カプ…カプ…カプ…カプ…カプ……………
















あああぁぁぁぁ………
















散っ々、好きなだけ噛んだ後、霞は俺を解放して帰っていった。

……まだ鎖骨と首筋のあたりに余韻が…


もう、なんか考えるのやめよ…


ぐったりした俺は、そう結論をくだし、また眠りについた……。



















その夜




「「「善君、続き…しよ。」」」















   霞霞霞霞霞

   霞霞霞霞霞

   霞霞俺霞霞

   霞霞霞霞霞

   霞霞霞霞霞
















「うわあぁぁぁぁ!!?」




跳ね起きた。




なんか、すっげー画だった。















いつも通り、朝になり、学校に向かう。……こういう日に限って、




「善君、おはよ。」




朝一で出会ってしまう。


気持ち、血色が良さそうな霞。


「おはよ、霞。」


それでも俺は自然でいる。

…やっぱり心配そうな顔は見たくないし。






手をつないで登校する。もはや当たり前だ。




「善君、今度は…もっと別のとこを噛みた、」


「はいストップ!それ以上はダメ!」


ピシッと言っておく。なんか、思い出すとトラウマになりそうだ。




「うー…」


なんか不機嫌そうになる霞。

なんかキャラが変わってないか?




はぁー……






「霞。」


俺が呼びかけると、


「…え?」


振り向く。そして





















唇をしてやったり。




「………」


ぽー、っとしている霞。




「昨日のお返しだ。」


ほら、行こう。

と手を引っ張って歩きだす俺。何も言わずについてくる霞。















霞の本性が実際どうであれ、霞は霞だろ。

俺の彼女である事は……変わらない。ちょっと今後が怖いけど、好きなままだ。
















Fin

ノリで書き上げたちょっと実話シリーズ第6弾。楽しんでいただければ幸いです。…霞っちのモデルは作者の昔の………です。あの時作者は本気で死にそうな気持ちでした。思い出すと泣きそうですが、書いてみると面白かったです。長々としましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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