第2話 驚く
中へ入ると、十畳ほどの広さ。
冷房も効いており。
奥の窓から日が差し込んでいる。
二人がけのソファー、そしてその前に膝下ぐらいの長机。
右を見れば大きめのクローゼットがある。
左には隣の部屋につづく扉。開いている扉からは台所が見える。
「ちょっと待っててくれ」
「あ、はい」
クローゼットを開き、なにかを探す西村さん。
「なにしてるんですか? 西村さん」
「……敬語じゃなくていいよ。あと、ボクの事は夏希って呼んでくれ」
「いいんですか?」
「あぁ、同じ一年だろう?」
「へー」
「へーって……」
すこし、呆れられた。
クラスではぼっちの俺。
嫌われているわけではない。
ただ、馴染めてないだけで。
「まぁいいけど……あったあった」
クローゼットからなにかを取り出した夏希。
「なにそれ?」
「制服だ」
制服?
よくよく見れば、彼女が今着ているのと同じものだ。
「はい」
「え」
それを手渡された。
夏希が着ているものより、少し大きめに見える。
「これどうすんの?」
「着てくれるかい?」
なに言ってんだこの子。
「なんで着なきゃ……」
「単位」
「うっ」
その一言で、すこし怯む。
今の状況において単位という言葉は、とてつもない強制力を含んでいるように感じた。
……いや待て。
夏希にそんな権力、ないのでは?
よし、ここはうまいこと言いくるめてやろう。
「あのさ、夏希」
「ボクのパパ、この学校の理事長なんだ」
俺が抗議することを予期していたかのように、間髪入れず夏希が。
「え」
「ボクには甘いからね。ボクが言うだけで……」
権力で潰された。
これはどうしようもない。
理事長はたしか……この学校で一番偉い人だ。
というかそんぐらいしか知らない。
夏希はその娘、なのか……?
「さ、着ようか?」
「なんでそうなる……着ないぞ。恥ずかしいし、似合わないし」
男が、こんな恰好をしていいわけがない。
「可愛いところもあるんだね。でも安心したまえ。《《男》》が男の着替えを見るだけだ」
おまえの前で着替えるのが恥ずかしいわけじゃな……。
……え。
「今、なんて言った?」
「……? 可愛いところもあるんだねって」
「ちがうちがう。その後」
気のせいじゃなければ衝撃的なことを聞いたぞ。
「安心したまえ……男が男の着替えを見るだけだー……って」
首をかしげながら、思い出すように言う夏希。
男が、男……の?
まさか……。
「男……なの?」
確かめるように聞く。
それに夏希はさも当然のように。
「ボク、男だよ?」
よければ感想ブクマとか。
作者は飛んで跳ねて喜びます。




