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52.妖精王、継承

 

 

「テイマーか――」

 

 ロボに押し倒されたランスロットは静かなトーンのまま分析をする。

 

「主ぃ! この男めっちゃすごいパワーっす! 負けるっす!」

 

「五秒だ」

 

 ヴォトカはライフルを装備すると素早く弾を装填してランスロットの頭蓋に銃弾をねじ込む。

 

「ッ――!!」

 

 ランスロットは有り余る膂力でロボを押し上げるとライフルから飛び出した弾丸を素早く剣で切り落とした。

 

「ハァ?」

「腐ってもエルダー合衆国の幹部プレイヤーなんでな」

「チッ」

「随分な態度だな、そっちはどこの所属だ?」

「フリーさ。ただの旅人プレイヤーだ」

「それにしては随分と金を持っているようだ。倉庫にトレーラー、その銃も扶桑皇国製だろ?」

略奪品(PK品)かも?」

「旅人がPKねえ。それではただの――」

 

 

「――お尋ね者だ」

 

 

「かもしれないな」

「さて、言葉遊びはここまでは白い森のヴォトカ」

「うーわ、知ってんなら最初から言えよ」

「この程度の問答でそこが知れる程度だったようだな」

「そうだぞ。俺たちは自由気まま勝手に好きなことをしたいときにしているだけだ」

「そういう者が秩序を乱す」

「王様の妃NTRした上に逆賊扱いされて領土に引きこもった騎士の名前した奴だけには言われたくないね」

「きさっま!!」

 

「それにどうせお前、ティターニアを捕まえに来たんだろ?」

「それがアーサーの命令だからな」

「ならどの道戦う選択肢しかないわけだ。それがオベロンの頼みだから」

「オベロン……くく……ふははは!」

「悪役って感じの笑いだな」

 

「オベロンは我々が殺した。どうやって頼まれたと言うんだ。妄想じゃないのか?」

 

 ランスロットは小馬鹿にするように言い放った。

 

「妄想……」

「そうだ妄想だ。お前が来る前にオベロンは死んでいるのだからな」

 

 ヴォトカはライフル構えると躊躇わずランスロットを撃ち抜いた。フルプレートアーマーに風穴が空かなかったが、答えとしては充分だった。

 

「妄想でいい。そもそも妖精は人を惑わしてなんぼだろ。騙し、惑わし、悪戯し、たまに知恵を貸す。それ以上何でも無いだろう」

「なっ……」

 

「それとランスロットを名乗るなら妖精の本質をしっかり知っておけバァーカ、ソシャゲをやりこんだだけじゃあ底が知れる。たまにはキッチリとネットサーフィンしておくんだな」

 

 ヴォトカは笑った。それはそれは悪辣な顔で嗤った。

 

「なんだと……」

 

「知らねえのか、ランスロットってのは裏切りの騎士の印象があるが、妖精に育てられた男だ。そんな男が妖精狩りなんて、親不孝だな」

 

 

 無知を指摘し嘲笑うヴォトカはロボの攻撃態勢を整わせる。

 

「貴様殺されたいらしいな」

「言ったろ。妖精とは元来、騙し、惑わし、悪戯し、たまに知恵を貸すってな。俺はその被害者であり共犯者さ」

 

 

 

「その通り!!」

 

 

 

 ガラスで出来た鈴のような音が周囲に響き渡った。

 

 気付くとヴォトカの背中に抱きつく形でオベロンが笑っていた。

 

「オベロン……生きていたのか」

「君に殺されたよランスロット」

「では何故!」

「ずーーーっと探していたんだ。魂だけが彷徨っていた。僕の大事な大事な大事な大事な大事な大事な妻の事を任せられる者を探していたんだ」

「……まさか」

「僕に三度酒を分け、僕に三度、語ってくれたこの子に任せることにしたんだ」

 

「え? 何? え?」

 

 ヴォトカが困惑したまま話は進む。

 

 

「ヴォトカ、君にあげる」

 

「え? あ、はい」

 

「受け取って」

 

 

『ファウストのネックレスを入手しました』

 

 

『新たな職業を継承しました』

 

『ようこそ、妖精の守護者』

 

『襲名確認、オベロン』

 

 

「うわっ、何このぶっ壊れジョブ!?!?!?」

 

『スキル:妖精魔法 妖精魔法が使えるようになる』

『スキル:妖精適性Ⅴ 妖精魔法に使用するMPを5分の1にする』

『スキル:妖精王の法典 妖精魔法の消費するMPが25以下の場合MPを消費しない』

『スキル:妖精王の号令 妖精王に忠誠を誓うエネミーを召喚する』

『スキル:妖精王の庇護 魔法被ダメージを無効化、物理被ダメージが三倍になる』

『スキル:妖精王の誘惑 全てのエネミーをテイムすることができる』

『スキル:妖精王の従者 バディの性能を極大上昇させ、進化させる』

『スキル:妖精王の英知 MP上限を十倍にする』

『スキル:妖精王の悪戯 鑑定魔法の対象時、鑑定結果を狂わせる』

『スキル:フェアリーテイル 効果無し。面白い話を見せておくれよ。オベロンより』

 

 

「姿がオベロンに!」

 

「んあ! ロボは――」

 

 

 黒く肥大化した体躯、狼と山を見間違えるほどであり、大きな口からは生暖かい吐息がランスロットとヴォトカに吹きつけた。

 

「なんすかこれ! すっげ!! 主がちっちゃくなってる! 妖精みたい!」

「いやロボ、お前がめっちゃデカくなった」

 

「何だと! この姿は――」

 

 ヴォトカはステータス画面でロボの状態を確認する。

 

「うわぁ……筋力だけで俺のステータスの合計超えてるわ」

 

「主ぃ! やっちゃって良いっすか?」

 

「いや、ここは俺が直々にやる。というか色々試したい」

 

 ファウストのネックレスが輝くと妖精魔法が発動する。

 

「えーっと……召喚?」

 

 魔方陣が地面に展開されると黒い影が飛び出す。

 

 

「オベロン様……ふむ、これは二代目といったところでしょうか?」

「わっ、ええ、はい」

「初めまして。契約に従い召喚に馳せ参じました――ブルーレッドライトアンドダークネススターダストギャラクシーファイアウォールアイズドラグーンです」

「ちょっとまって混ざってる混ざってる。色々まずいって!」

「人からはネームギガントチュッチュと呼ばれています。以後お見知りおきを」

「え、あ、はい。取りあえず色々まずいので……フェアリードラグーンに改名してください」

「承服しました」

「じゃあ、いっけーフェアリードラグーン、ランスロットに攻撃だ!」

 

 

「滅びのバースト――」

「やめろおおおおおお!!!!!!!!!!!」

 

「ぐああああああああ」


 ランスロットを撃退することに成功した。

 戦闘が終了したためフェアリードラグーンは消えた。

 

 

 

「いやこのジョブマジで強過ぎん?」

 

 この後、知ることになるがぶっ壊れジョブである。

 

 

「その声はオベロン?」

 

 森の奥から現われたそれは妖精女王と言うには相応しい出で立ちだった。

 

「ティターニアですか?」

「はい」

「二代目オベロンです」

 

 ヴォトカは首飾りを見せる。それを見てティターニアには寂しい表情を見せた。

 

「そうですか、あなたが次のオベロンなのですね」

「はい。ヴォトカと申します」

「わかりました。では二代目、私があなたの支えになりましょう」

 

 

 そう言うとティターニアはファウストのネックレスの中に吸い込まれていった。

 

『ティターニアを召喚できるようになりました』

 

 

 

「えぇ……何……おかしくない? この後絶対やな事起こるよね?」

 


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