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49.沈黙の国へ

飲酒運転楽しいです。

道路交通法は守ろう。

 

 

 

「はぁー、疲れた」

 

 シガレットは煙草に火を付ける。

 

「お疲れ様です」

 

 ゆったりとしたドレスに肩甲骨の辺りからは白い翼が生えている。

 

「どちらさん?」

「え、酷くない?」

「え???????」

「バンシーだよ!」

「知らん、少なくとも俺が知ってるバンシーは筆箱くらいのサイズだが?」

「進化したの! 今はバイヴカハよ!」

「……いつ進化した?」

「さっきの戦闘だよ、強化サポートしてやったじゃん!」

「えぇ……」

「まぁ、いいさおめでとう。じゃあ沈黙の国に向う」

 

 シガレットは車のボンネットから尻を持ち上げると両足で地面を蹴った。

 

 紫煙に混ざって黒煙と炎が燻る。ボロボロで回復アイテムも底が尽きたシガレットは気怠そうに歩く。

 四台の車をスクラップにし、三十人の追っ手をぶちのめしたシガレットは沈黙の国に向った。

「一台車残しときゃ良かった……」

 シガレットぼやく。

 

 

 ズルズルと体を引きずるが、道路の真ん中で膝を付く。

「あー、クソ……」

 右膝を見るといつ被弾したのか皆目見当も付かないが一発もらっていたようだ。

 出血から考えると間もなく死亡扱いになるのは体感で理解できた。

「シガレット、ちょっと! 沈黙の国に行くんでしょ!」

「無理」

 シガレットは上半身だけを起こすと、煙草を取り出す。

 ぐったりとしたまま火を付けると大きく息を吸う。

 それから尻のポケットに入れておいたスキットルを取り出す。キャップを開けて口に運ぶがウィスキーの残り香だけが口腔に広がる。よくよく見ればスキットルには風穴が空いており中身は全て漏れ出していた。

 ゴミを放り投げると、紫煙を吐き出す。

 

 意識が遠のく。

 

 ゲームオーバーまで数分だ。

 

 

 遠くからエンジン音が聞こえる。

 

 

「バン……バイヴカハ、この音は?」

「トラックだね」

「味方じゃ無い奴らか?」

「うーん、敵じゃ無い方ね」

「他人じゃ無いやつらか?」

「他人じゃ無い奴らね」

「そうか……助かったか」

 

 トラックが停まると、獣人の女がシガレットを回収し、再び走り出した。

 

 シガレットの意識はここで途切れる。

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