39.アッシュとルーク
NPC情報:アラクネ
トワイライト連邦に済む凄腕蟲魔術師、蟲魔術は割と強いのだが不人気のため強いという風潮はない。
一人孤独に魔術の研究に勤しんでいたらワケのわからない村が勝手にアラクネを敵認定して色々と手を焼いていた。そんな時にグルーパーを助けて、いかがわしい関係となった。
なお、アラクネの魔女は種族を指しているため厳密には人間でなく亜人に分類される。とは言え人間と交配は可能。
フローレンスのところに尻尾を巻くように転がり込むと辛うじて生きている男を担ぎ込んだ。
グルーパーとモラセスはフローレンスの書斎で待機するように言いつけられ、ソファーに腰掛ける。
直ぐに治療が始まり小一時間もしないうちにフローレンスが戻ってきた。
「助かった?」
グルーパーはビールを煽りながら聞く。
「元々軽傷です。頭部は切ると想像以上に血が出るので初めて見る人は狼狽えるものです」
「あ、そりゃ良かった」
「で、詳しい状況説明をお願いします」
「俺とモラセスで周囲を散策していたら、集会所の中から物音がして入ったら、黒いコートを着た双子が町人を襲っていた。襲われていたのは二人、どちらも男で一人は、駆けつけた時には死んでいた。それから何やかんやあって一人を救助して逃げてきた」
「黒いコートの双子……」
フローレンスは本棚から帳簿を取り出す。
「それは?」
「来客管理リストです。えっと確か……ありました。その双子はエルダー合衆国を拠点とする双子のプレイヤー、アッシュとルークですね」
「アビスかぁ」
「アビスだぁ」
「アビス……?」
「すまん、続けてくれ」
「この二人はトワイライト連邦と扶桑皇国に要注意チェックされている所謂、札付きですね。ゲーム内時間で1年ほど前に一度ここに訪れています」
「1年前って言うとちょうど奇病が流行り始めた頃じゃね?」
モラセスが呟く。
「ええ、そうですね、札付きとは言えお二人には直ぐに国外へ出て行ってもらい、申し訳ないことをしました」
「…………なぁ、フローレンスさん」
「はい、何でしょうかグルーパーさん?」
「この奇病、あの双子が犯人じゃないか?」
「……そうやって人を疑うのはどうかと思います」
「そっかぁ……そうだよなぁ……ちなみにサニーのアイテムが盗まれたのは?」
「1年前ですね」
「アッシュとルークがここに来たのは?」
「……1年前ですね」
「奇病が流行り始めたのは?」
「…………1年前ですね」
フローレンスは苦虫を噛み潰したような表情をする。
「バチクソ怪しいじゃねえか! しかもその双子出戻ってんだぞ!」
「いや、確かにそうですが、ぶ、物的証拠がっがっが」
「フローレンスがバグった! モラセス何とかしろ」
「手に負えねえな!」
「盲点……私は外科医なのにこれでは下下位です」
「お、落ち着けフローレンスさん! 外科医は探偵業じゃない! 人を信じる職業だからね? ね!?」
「そ、そうだ、グルーパーの言うとおりだ!」
「あ、あ、そ、そっそそうだ。軽傷の人の話を聞きに行きましょう!」
グルーパーが提案すると三人は救助した男性がいる病室に向った。
「おっす入るよ――ッ!?」
意気揚々と病室のドアを開けると修道女と救助された男性が端的に言えば献身的な姿で良い感じに看病していた。
「お邪魔しました」
「あのー! 助けて下さった方ですよね?」
男性が声を発する。明朗な声音から本当に体に異常が無いのをグルーパーは感じ取った。
「人違いかもな」
冗談気味にグルーパーは軽口を言うが、男は首を横に振った。
「僕はシャンスと言います」
「シャンスか、俺はグルーパー、こっちはモラセスだ。災難だったな」
シャンスと握手をするとグルーパーはにっこりと笑った。
「そうでもないです。ナタリアとこうして出会えたので」
そういうとシャンスはシスターを見つめた。
「実は婚約者なんです」
「そりゃあめでてえな。式の時は呼んでくれちょっと包んで持って行く」
グルーパーはそう言うと横でモラセスを見る。モラセスも同じようににっこりと笑っていた。
「さて、お二人のおアツイ話も山々だが、シャンスを襲った二人組を教えてくれ」
「二人? 三人いたはずですよ?」
「三人? どういうことだ?」
モラセスは怪訝な表情をした。
「俺ら来る前にもう一人いたと言うことか」
「ええ、黒いローブに身を包んでいたのでよく分かりませんでしたが、声が男でした。何を言っていたのか分かりませんが、確かこう言ってました“これが紫黒の極楽の力か”と」
それを聞いた瞬間、グルーパーとモラセスは顔を合わせた。その後二人は息を合わせるかのように頷く。そしてグルーパー口を動かし始める。
「それは本当か?」
「ええ、ハッキリと聞きました」
「そっか、シャンスありがとうな、さてじゃあ、今日は飲むか!」
グルーパーは酒を懐から取り出すと、病室の一角で酒盛りを始めた。
「主治医の前で酒盛りとは良い度胸ですね」
フローレンスはニッコリと微笑んでいた。




