17.弾丸論破ァ!
シガレット
職業 アウトロー/メカトロニクス
レベル25
射撃攻撃を主体として攻撃範囲を広げるスキルを重点的に取得した構成。
スキル
射撃適性Ⅱ:射撃攻撃時の威力と範囲を拡張
投擲適性Ⅱ:投擲武器の威力と範囲を拡張
武器作成Ⅱ:武器作成時にボーナスが付与
美味い煙草が吸いたいだけだ
byシガレット
「さて、やっぱり呼ばれました、裁判のお時間ですよ!」
グルーパーは嬉々として言う。
「はぁーほんまクソ、国王と女王殺したくらいでなんで呼ばれにゃならんのだ」
モラセスはため息をついて笑えないジョークを言う。
「さて、とここまではまぁ、予定通り、あとは予定通りに行くことのみ」
「予定?」
「あ、メロカルさんは知らなかったか、ヨヨ王女に記憶を改変して頂いたので今頃リオンが謀反の容疑でほぼほぼ容疑が固まっている頃でしょう!」
まるで花見にでも行く気分で七人は裁判が行われている城へ向った。
しかし、それはあまりにも甘い打算であった。
「グルーパー、貴様が王族殺しの重要参考人として招集した」
貴族の重鎮たちが雁首揃えてテーブルに座っている。一番奥にいる老人の男が裁判官として仕切っていた。
「はい」
「ではまず、貴様が国王と女王二名を殺害したことは知っているな?」
「ええ、ここに呼ばれる際、その事実を受け取りました」
「昨日、国王と女王が貴様と話しをしたという事実がある。それは真であるか?」
グルーパーを含めた七名を一瞬だけ焦りの表情を見せた。直ぐにヨヨの方へ視線を向けると彼女は首を横に振った。
「昨日ですか?」
「貴様ら七名を見たという女がいる」
グルーパーは一点、失念していたことがあった。それはフローレンスである。彼女はプレイヤーであり月白のマグメルの効果を受けない性質がある。
「誰でしょうか?」
「フローレンス、国王と女王の病の主治医である」
「その彼女はどこに?」
「ここにいます」
貴族たちに混じってフローレンスが手を上げた。
「はい、国王と女王に昨日、会ったことを認めます」
「であるか、貴様らが会った後、直ぐに国王と女王の容態が急変、そのまま死去した。つまり貴様らは暗殺の容疑がある!」
リオンは椅子を蹴り上げるように立つと大声で怒りを響かせた。
「さて、我々の接触と死の間にどのような因果関係あるのでしょうか」
「その説明は私からよろしいでしょうか?」
フローレンスがカルテを見ながら発言を申し出た。
「発言を許可する」
「ありがとうございます。両陛下の死についてですが、不審な点がいくつか見られます。まず第一、片手が壊死しており明らかに劇物を用いていることがわかります。そしてその手はグルーパーさんが握手した手と一致しております」
「それ見たことか、やはりお前が!」
リオンが眉間に皺を寄せて叫ぶ。
「えっと、つまり、私が殺した。ということでしょうか?」
「可能性は高いです」
「ふむ、なるほど、それは良いのですが、私には動機がありません」
「動機より、現場の状態、実行できる人物でターゲット絞るのが賢明でしょう」
フローレンスは理路整然と言葉を繋ぐ、どれも説得力のある言葉をチョイスしているためグルーパーも慎重に舌を回す。
「そして、更に言いたいのですが、あの状況ならフローレンスさんも同じ事ができたのでは?」
「そうですね、潔白を証明するのは難しいですが、私は正当な報酬を受け取った上に正式な手続きを踏まえてからこの国に入った医者です。どこの馬の骨とも知らない男たちより信頼はあると思います」
「確かにその通りです。しかし、私はそのえっと毒でしたっけ?」
「劇物です」
「その劇物とやらを扱えるだけの知識と技術が無い」
「本当に?」
「ええ、特に技術、見せても良いですが最近、ボイラーをなんとかこさえる事が出来た程度のものです」
「弾薬は作れるのに?」
「弾薬、またはその材料になる物の調達は全てバレットが一任しております」
バレットは首を縦に振る。
「そうですか」
「はい、少なくとも私がやる動機も技術もあるわけがない!」
そう言いながらグルーパーは六人の方へ手を差し出して大げさにジェスチャーした。
「確かに、そちらの言い分は最もですが――」
「それに、私はリオン第一王子に毒を飲まされました! それも昨日、血を吐いて壊死した肉が口から飛び出し、激痛に苛まれた。仲間がいなかったら今頃どうなっていたか!」
グルーパーは大声でゆっくりと言う。
貴族たちはざわつき始めるが裁判官がその場を制した。
「第一王子、それは真ですか?」
「それの何が問題というのか?」
フローレンスは目を見開いた。
「グルーパーさん、先ほど肉がどうとか言っておりましたね?」
「ええ、肉が壊死して吐き出した」
「症状が両陛下と酷似しております」
グルーパーはその言葉を聞いた瞬間、烈火の如く舌を動かし始める。
「王子リオンは、私に毒を飲ませて人体実験を行い、十分効果があることを確認した上で両陛下の手に毒を塗布した。その濡れ衣を着せるために我々を両陛下に接触できるように裏で手を引いた。全てはこの国の権力が欲しかったからに違いない、動機、状況、実行できる余裕、技術全て出そろっております!」
「何だとこの下郎が!」
「今すぐ、この男の部屋でも何でも改めるべきだ、きっと同じ物が見つかるに違いない! 裁判官殿、一刻、いや半刻で結構、部屋を調査するべきと意見を申し上げさせていただきます。もしもこれが却下されるのであれば、ここにいる全ての人間がグルで我々を陥れようとしている可能性がある、私は誓って潔白であると証明する」
この後、誰が何というと半ばヒステリック気味にグルーパーは叫び倒すとヴォトカ、モラセス、フローレンス、第一王女ヨヨ、そして貴族の五名がリオンの部屋を改めることとなった。
結果として、言えばモラセスが劇物を見つけ出すことになった。
これにより、リオンが黒である証明がされることとなった。
それが真実であるかどうかは別として。
身柄を解放されたグルーパーたちはぐったりとしながら拠点の宿に戻った。
「追っ手は?」
「大丈夫、ロボもそう言ってる」
静かにヴォトカは答えた。
「何とか罪を擦り付けられた……」
そう言うとグルーパーはワインのコルクを口で引っこ抜く。
七人は安堵の息を漏らすのも束の間、ノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
「どうも、グルーパーさん」
フローレンスが静かな表情で部屋に入る。
「フローレンスさん、先ほどはどうも」
「ええ、そちらも上手いこと出来たようで、私ももっと論破力が必要でした」
「……さて、何のことかは存じません」
「今更結構ですよ、私は両陛下を死なせた女であることは変わりません。本来であれば首を落とされていたところでした」
「左様でしょうね」
「どの道、両陛下は私が来た頃には既に遅かったです。はっきり言ってしまえば体の良い人柱であったのは事実です」
「結論は?」
「今度、生き残っていたら結構ですので、お茶でもどうでしょうか?」
「喜んで!」
フローレンスはそれを聞いて静かに笑って手を振った。
「あと、相手の女性は選んだ方が良いですよ」
フローレンスは静かに釘を刺した。
「おっとこれは……」
「では私は物見遊山しておりますね」
彼女は、そう言って去って行った。
それから直ぐに、リオンが挙兵した。
直ぐ側で戦火の嵐が七匹に牙を剥き始めた。
やっと小説で人を殺せる