13.エロゲーみたいな王国に来た政治家(わたくし)はどうすりゃいいんだよ!?
グルーパー
職業ストライカー/スカベンジャー → ユニーク職業 ステーツマン
レベル24
筋力と体力にスキルポイントを均等に振り分けており生粋のパワーファイター。
スキル
格闘適正Ⅱ :近接攻撃のダメージを上昇
もの拾い :拾ったアイテムが多くなる
エレクション :ステータスの上昇限界を拡張
私は楽観主義者:筋力上昇
喜んで紅茶を飲む:毒耐性向上
こんな紹介でどうよ? あとモラセス小便は済ませておけよ?
byグルーパー
「へえ、晩餐会ねえ」
グルーパーは陽気におちょくるようにパーティー会場で呟く。
「マナー大丈夫か?」
「よかったなバレット、立食形式ならせ俺たちなんてだーれも気にしない。せいぜい変な目で見られるくらいさ」
「それはそれでどうなんだ」
「逆に言えば、おとなしく話し合わせておだててりゃいいってことさ、アホがいたら捕まえてカモにしちまえばいい」
「高く売りつけて安く仕入れるか」
「その通り!」
グルーパーは悪い顔で言う。
「じゃあ俺は情報を集めてくる」
「おうよ、さて俺は……」
グルーパーは欠伸をしながら、テーブルからワイングラスをひとつとる。
「よかった、いらしたのですね」
豪華な頭飾りが印象的な女性がグルーパーの前に現れる。
「これはこれは、第一王女ヨヨ様ではありませんか」
グルーパーはうわべだけの体裁を整える。
「えっと、たしかグルーパーさんでよろしかったですか?」
「仰る通りです」
「よかった。昼間はありがとうございました」
「礼には及びません」
「えっと、ところで私をお助けくださったあの銃使いはどこへ?」
「この会場のどこかにいると思いますが、お呼びいたしますか?」
「あ、結構です。自分で見つけますので」
「畏まりました」
「ところでグルーパーさんはこの国に立ち寄った経緯は?」
「ええっと、捜し物です」
「捜し物?」
「私の友人が病気で、それを治すためには七つのアイテムが必要なのです」
「アイテムですか?」
「ええ、そのうちの一つに『月白のマグメル』というものがありまして」
月白のマグメルと言う言葉を聞いた瞬間、第一王女ヨヨは顔を凍り付かせた。
ビンゴ! とグルーパーは心の中でガッツポーズをした。
「さぁ、存じ上げませんね」
「そうですか……困りました。たしかにフライト王国にあると聞いたのですが……さてどうしたものでしょう」
「こちらでも何か分かりましたらお知らせいたします」
嘘つけこの阿婆擦れがと内心で毒突きながらグルーパーはにっこりと笑った。
第一王女ヨヨの背中を見送ると静かに息を吐いた。
「第一王女……おっぱいでけえ……抜けるぜまじで」
そう呟きながら、バレットを探す。
緑色のハット帽を探して、直ぐに見つける。
「おーい、バレッ――ッ!」
バレットは床に落ちている手袋を拾い上げる。それをグルーパーは割り込むようにかすめ取る。
「おい、グルーパー、どうした?」
「チッ、ファッキンだ」
直ぐに男が大声を上げた。
「決闘がここに成立された!」
騒然とする会場、高らかに笑う声にグルーパーは聞き覚えがあった。
「手袋を拾ったお前!」
第一王子リオンは悪辣な笑みを浮かべながら、グルーパーに歩み寄った。
「はい?」
「我の手袋を拾ったな、それは決闘の意を示すということ知らぬと言うまいな?」
「申し訳ありません、無知であるためそのようなこと存じておりませんでした」
「黙れ、我に意義申したてするな、身分の違いを弁えよ」
うるせえ、このイキリクソ第一王子が、テメエの脳みそイカレポンチかぁ? とグルーパーは内心で吐き捨てながら、上っ面に穏やかな表情を貼り付ける。
「構えよ」
「しかし……」
「構えよと申しておる」
グルーパーは周りを見渡す。
「グルーパー……」
「バレット、下がっていろ」
「わかった、すまない」
グルーパーは首を横に振って、リオンを見定める。
「ほう、その反抗的な目つき、気に入らん!」
結論から言えば、グルーパーは負けるしかなかった。
グルーパーは拳を突き出し、リオンの頬をギリギリ掠めないで虚空に打つ。
リオンはそれを自分が避けたと思い、にやり顔でグルーパーの足を剣で切りつけた。
「がああああ!」
思った以上に痛かった。
「どうした立て」
「ご容赦ください、私の無知をお許しください!」
懇願して這いつくばるように頭を下げてリオンにすり寄る。
グルーパーの後頭部を足で踏みつけながらリオンは満足げに言う。
「ふははは、滑稽である!」
取り巻きの貴族たちはリオンに同調するようにグルーパーを嘲笑った。
「自ら決闘を受けておいて、この様とは実に滑稽! きっとお前の仲間も粗末なのだろうな!」
グルーパーは手を握りしめ、はらわたが煮えくり返る思いだったが今は必至に耐えた。
「お許しください! お許しください!」
ひとしきりグルーパーを罵倒、嘲笑したところでリオンは飽きたのか会場を後にした。
それから城内にある医務室でグルーパーは治療を受けるため衛兵に運ばれていった。
「いやぁ、死ねば良い」
「すまん、グルーパー」
「バレットが謝ることじゃない、それに今夜はここに泊めてもらえるんだ。十分価値はある」
グルーパーはそそくさとスカベンジャーの衣装に着替えると黒い手袋を装備する。
「じゃあ、ちょっと夜這いに行ってくる」
「おい、普通に犯罪じゃねえか」
「まぁ、ジョークはさておき、便所にでも行ってくる」
グルーパーはけだるけに言うと、扉を前に押した。
「んああ、そうだ、俺がどこに行ったか聞かれたら……そうだな、ケツ穴からクソが止まらねえとでも言っておいてくれ、一晩は垂れ流してるってな」
「おいやっぱおめえ!」
バレットの制止を無視してグルーパーは第一王女がいる部屋まで向った。
無論、王女の寝室は衛兵が二十四時間体制で厳重に警備されていた。グルーパーはその真下に位置する窓から体を乗り出すとレンガとレンガの隙間に指を差し込み肩甲骨を力ませる。
懸垂の要領で城壁を上ると王女の部屋の窓を叩く。
王女は窓を開けるとグルーパーを部屋に招き入れた。
「へっへっへ、夜這いに来たぜぇ」
グルーパーは差し出された椅子に腰掛けると冗談気味に言う。
「言動の割りに……ご丁寧に椅子に座っておられること」
「まぁ、夜這いはあわよくば一発できたら良い程度に思っていたが、本題はそこじゃ無い」
グルーパーは思ってもいないことを言いながら、第一王女ヨヨの寝間着姿を見据える。
亜麻色の髪に翡翠の様な目、そして頭部には大きな獣の耳があった。
「どうして獣人がこんなところにいるのかと思っておられるでしょうね」
「ああ、その絡繰りを聞きたくてな」
「……それを聞いてあなたは私をどうする?」
「どうもしない、いや、ちょっとまて、どうにかして欲しい感じ?」
肩を竦ませながら冗談気味に言う。
「……それで秘密がばらされずに済むならやむを得ません」
「いや、別に誰にも言わねえよ、月白のマグメルさえ手に入れば」
「その月白のマグメルが――あっ」
「はっはっは、ねえねえねえねえねえねえ続き続き続きは?」
「う、うるさい!」
「おっとあんまり大声を出すんじゃありません、姦通容疑でブタ箱行きなんてごめんさ、どうせいくならベッドがいいな」
「下品よ」
「上品さ」
「元奴隷の私より知性が無いのかしら?」
「この上なく下品で上品」
「酷い、言葉の冒涜」
「違いない、さて、俺たちは冒険者、それは知ってるな?」
「ええ、知っているわ」
「ふーん…………いつぐらいから気づいていた?」
「いや、パレードあたりから」
「え、うそ……まじ……うそぉ……」
椅子から崩れるようにグルーパーは体を液体のようにさせた。
「いや、むしろよくばれないと思いましたね」
「いやぁ、王女さんだからてっきり無知無知の無知だとおもってたからね」
「私は少し上手でした」
「じゃあ無為に戻るか」
グルーパーは先ほどまでの緩みきった表情を捨てると、目を据える。
今までの話を全部捨て去って言葉をストレートに放つ。
「さて王女さん、そっちはどうやったら月白のマグメルをこちらに寄越してくれる?」
「要求は二つ、私が王位を継承すること、第一王子リオンを殺害すること」
「ふむ、なるほど、第三王女はどうする?」
「可能であれば殺害でも構いません。ここの王族に未練はないので」
ヨヨは冷酷な表情で言う。氷の膜でも顔に付けているのかと思うほど冷たく、鋭く、水晶のように美しい。
「第三王女はどんなやつなんだ?」
「城の地下で眠っているとだけ聞きました。詳しいことはわかりません」
「そうか、じゃあ、最後に一番気になっていたんだがいいか?」
「何でしょうか?」
「なんであんたに王位継承権が?」
「……それは」
ヨヨは口をつぐんだ。
「それは?」
「月白のマグメルは人間の記憶を操作する力があるのです」
「今、見せて貰っても良いか?」
小さく頷いて懐からグラジオラスの花飾りを取り出す。怪しがりながらグルーパーはそれを受け取ると、アイテムの性質を調べる。
月白のマグメル、NPCの記憶を捏造することができる、ただし記憶に綻びが生じると効果がなくなり記憶が蘇ることがある。
これによりグルーパーの疑問はすっきりとさせることができた。なぜ第一王女ヨヨだけが獣人なのか、なぜ第一王女ヨヨは王位継承権があるのか、全て合点いった。
「ありがとう、これは返すよ」
「……なぜ返したのですか?」
「え、今の持ち主は君だから?」
「このまま奪って、立ち去ることもできたはずです」
「それは――――」
グルーパーは一息置いてから言葉を繋げる。
「それはwin-winじゃない」
「……そうですか、変人ですね」
「そりゃどうも」
月白のマグメルを受け取ると彼女は席を立ち、ベッドの下から背の低いワイングラスと高価なボトルに入ったブランデーを取り出した。
「今はこれしかないけど、どう?」
「是非もない」
ワイングラスを受け取ると彼女は嬉しげにブランデーを注いだ。
グルーパーはグラスを置いて、ヨヨからボトルを受け取ると今度はヨヨのグラスにグルーパーがブランデーを注ぐ。
「乾杯」
「乾杯」
ブランデーは芳醇な葡萄の香りを放ちながらも熟成されたまろやかなアルコールの味がグルーパーの心を鷲掴みにした。
隣でヨヨは上品さのかけらも無く、注がれたブランデーを一気に流し込んでいた。
「いい飲みっぷりだけど大丈夫?」
「よかたぁ、弱み握ってくるような人じゃ無かったぁ」
緊張の糸が解れたのかヨヨは泣きながら安堵していた。
それからグルーパーはヨヨと杯を交わしながら、雑談を交わした。どこの食い物が美味いとか、あの野菜が嫌いだとか、この音楽は好きだとか、この国の内情について取り留めもなく話した。それがヨヨの孤独を救ったとは知らずに。
そしてグルーパーは目を覚ました。
頭痛がする、喉が渇いて仕方が無かった。いわゆる二日酔いである。
見知らぬ天井、晴れ渡る朝日、隣では裸で眠る第一王女ヨヨ、枕元のテーブルには水が置いてあり、グルーパーがグラスに水を注いで一気に飲み干した。
生き返るような気分だった。まだ酒気は抜けきっておらず、頭がほわほわとしていた。
そして、我に返る。
見知らぬ天井、晴れ渡る朝日、隣では――
隣では裸でグルーパーに抱かれるように眠っているフライト王国第一王女のヨヨ。
血の気が引くとはまさにこのことである。
恐る恐る、掛け布団を下にずらし、証拠を確認する。
「あーうん、バッチリだわ」
思わず声が出るほどグルーパーは狼狽していた。
「ん……うんん?」
ヨヨは目をこすりながら起き上がると、艶めかしく扇情的な一糸纏わぬ姿に思わずグルーパーも固唾を飲むがそれ以上に状況が状況である。
普段IQが3程度のグルーパーの知性がゲームにおける今生の窮地からIQが100程度まで回復した。
「お・は・よ・う」
説明不要、メスの顔である。
「まってくれ、俺は――」
「聞いていますよ、所帯を持たないんですよね」
そう言いながらヨヨはグルーパーに体をこすりつけた。さながらマーキングである。彼女の狐耳相まって余計にそう見えた。
「そんなに俺上手だった?」
「ええ、すごく、激しく、こんなにされたのは初めて」
彼女は頬を赤らめ、ねだるように言った。
そしてグルーパーはギフトスキル『肉体言語』を取得した。
効果は相手の弱点に攻撃が当たりやすくなるというスキルであった。
「他意しかねえよ……」
グルーパーのみだらなせいかつ