12.首尾上々
私、グルーパー。こっちは夜のお供の対魔妊オ★ホ
byモラセス
「ほいほい聞こえるかぁ?」
グルーパーがマイクに声を掛ける。
第一王女ヨヨがパレードを予定している通り面した建物の屋上にグルーパーとメロカルはいた。
「全員良好」
双眼鏡で周囲を確認しながらメロカルは伝える。
「即席ラジオなんとかなって良かった」
「あれ原理どうなってんだ?」
「鉱石ラジオで検索すりゃ出てきますよ。さて、そろそろ王女さんが通りますよ」
通りがざわつき始めると豪華な馬車の上にさらに豪華な頭飾りが印象的な見目麗しい女性が佇んでいた。
「うわぁ、派手」
「そうですね……なんだろう……」
「どうしたグルーパー、なんか引っかかるのか?」
「いや……気のせいでしょう」
グルーパーはマイクを近づけると目の色を変える。
「バレット、距離は五十メートルもない、外してくれるなよ? ハードロック万が一に備えておけ、問題なければヤクチュウが死んでいるか確認しろ。生きてれば殺せ。ヴォトカは周囲の警戒人混みに紛れで気取られるなよ。シガレットは陽動を頼む」
「全員問題なしだってさ」
「オーケー、じゃあそろそろ」
グルーパーが深く息を吸う。それから一拍置いてから口を開く。
「GO!」
合図と共に薬漬けの男がナイフを持って半ば狂乱しながら王女の馬車に突撃する。近衛兵が取り押さえようと男を見る。
その瞬間シガレットが火炎瓶を馬車に向って投げ込みパニックに陥らせる。近衛兵たちの練度が浅いのかそれとも今まで前例がないことに驚いたのか動揺で動けなくなり場所はたちまち火の手が上り始める。
バレットはバディである猛禽類型のロボット、エアロに捕まり燃え上がる馬車に飛び込む。
それからスリングに手を掛け慣れた手つきでライフルを構えると撃鉄を落としヤクチュウの心臓をぶち抜く。
それから馬車の上にいた第一王女ヨヨをバレットが抱えると地面に下ろし難を逃れた。
「良し!」
「バレット以外全員撤退!」
「行くのか?」
「片付けお願いします」
マイクを無線機の上に置くとグルーパーは飛び降りる。
「バレット一体何をしている!」
グルーパーはステーツマンの装いに切り替えると威厳ある声で堂々と馬車の方へ歩み寄る。
「勝手な行動申し訳ありません、ナイフを持った男がパレードを邪魔していたもので」
バレットを呼び寄せると二人は王女の前で即座に膝を付く。
「パレードの邪魔をしてしまい大変申し訳ございません、此度のバレットの不始末、責任の所在は全て私にあります」
「……いいえ、彼の者は私の命を救おうとしました。あの焼けた馬車を見れば何者かが私の命を狙ったのは間違い無いでしょう」
「しかし、恐れながら第一王女、この者は土足で馬車に踏み入り、武器を衆人環視に晒し恐怖を与えたのも事実であります」
「些末なことです。むしろ、命の恩人です。是非あなた方を城に迎え、礼を返したい。今晩にでもいかがでしょうか」
「御意のままに。僭越ながら今晩馳せ参じさせて頂きます」
グルーパーとバレットはそのままヨヨを見送ると宿に戻った。
既に全員集合しており、暢気に談笑していた。
「お疲れ様です」
「お、お帰り、首尾は?」
「僥倖僥倖、早速、今晩城で晩餐会だそうです……準備が良すぎる気もしますがまぁいいでしょう」
「おー、やったな、計画通りじゃねえか」
「んで、城で情報収集なんですが手分けしたいので役割分担を決めちゃいましょう」
「おい、グルーパー」
シガレットはグルーパーに問う。
「ここにいる面子でまともに飯が食える奴が何人いると思う?」
「oh……」
「それを踏まえた上で、お前ともう一人が限界だろう、命を救ったのはバレットだ置いていく訳にもいかねえだろ?」
「俺とバレットだけかぁ」
「あとよろしく」
「仕方ない、時間もないし準備しよう、作法についてはいどうしながら説明する」
「わかった、準備する」
四十秒でバレットとグルーパーは準備を整えると城に向った。
作者はTENGA未使用